スポーツ、芸事、仕事等々において、最初に教わり、スランプ時に立ち戻り、ベテランになってから後輩に伝える教えは、「基本を身に付けること」の重要さである。基本は地味であるが故に、新人の頃にはテクニックの方に目がいってしまい、あまり熱心に教わろうとしないまま過ぎてしまう。
FA販売店営業では、新人教育として基本動作をさらりと教えられた後、実務としてのテクニックを教わり、すぐ販売戦略に組み込まれてきた経緯がある。入社10年位になると実務に精通し、メーカーとの折衝や顧客との付き合い方に慣れて、売り上げ目標に向かって商談テーマ活動等の営業活動に汗を流す。新人販売員は、先輩と同行訪問の折に顧客と先輩のやりとりを目の当たりにして心強く感じるものだ。
顧客やマーケットがそのまま成長していくようであれば実務中心の方が最短の育て方であるだろう。しかしこれまで繰り返し述べてきたように、販売店営業のマーケット事情は、連続するFA分野もあれば、不連続のFA分野も出てきている。
不連続のFAマーケット上にある見込み客を顧客にするための営業活動は、これまでの営業活動とは異なる。テクニックは上達しても変化への対応には弱い。だから中堅販売員でも不連続のFAマーケット上の見込み客を顧客にする事には難儀する。 基本動作と言うのは日常の活動で実践して身に付くものであり、机上の学習で何とかなるものではない。
ここ数回にわたって情報収集活動の基本動作を述べているが、日々実践をしてなければ意味がない。 「①観察」について、「②興味・関心」について、具体的な例を挙げて述べた。「③疑問」を挙げたのは、実務で得た経験が当たり前のことになってしまい、視野が狭くなっているからだ。販売員が当たり前と思っている物事の裏には、意外な情報が隠れているものだ。
具体的な例を挙げてみる。よくあるケースではあるが、製造現場でラインのリニューアルが決まって、生産技術から生産改善のためにPLCのI/O点数を増やしたいという案件が出た。それを聞いた販売員は、早速適切なPLCを紹介し打ち合わせを始める。しかし、この時増えたI/Oはデータを読み取るバーコードリーダーがあるならソフトが介在する したがってこれらは生産技術ではなく、裏では情報システムの技術が動いていることに気がつかない。PLCの技術的解決にのみとらわれて、いつものようにセンサーが増えている程度に思っているので、何の疑問も沸かないのだ。
もう一例を挙げると、大手工場の生産技術からFA販売店営業に工場内で展示会を開催してほしいという依頼があった。それを受けて販売店営業は、数社のFAメーカーに依頼して大々的に実施した。これもよくある光景であるだが、商談テーマが見つかれば良いという単純な思いでいっぱいになり、「なぜこの時期に展示会の依頼があるのか」という疑問がわかないのだ。「若手技術者の勉強のため」や、「まだ知らなかったFA商品があるかもしれない」と思って依頼してきたのだろうとも思い込んでいる。
実は後になってその生産技術に「なぜ展示会を依頼してきたのか」を聞いてみた結果、意外なことがわかった。その大手企業の工場では、生産技術は、技術面から生産ラインを見て仕事を進めてきた。技術力があると自負するものがあってのことのようだったが、ある時、製造部門が簡単な合理化治具を外部に依頼して作成し、それを現場で使用しているのを見かけた。確かに治具を作るのは生産技術がやる仕事ではないかもしれないが、その時に製造部門と生産技術が、かつてのように一体になっていないことに気づいたと言う。それで社内展示会を開催して、製造部門にもFA商材を見てもらい、省力化や省エネ技術に関してもっと造詣を深めてもらう。そしてお互いにやっていることをもっとよく知ることが目的だった。実際に製造部門がやりたい合理化のテーマは、予算の制約はあるものの、工場内ではやりたいことがたくさんあるんだと言うことに気づくだろう。
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