令和の販売員心得 黒川想介 (163)興味・関心の対象を広げ 「情報収集力」の基本養う
FA販売員は、FAマーケットの最前線で活動をしている。だからマーケット状況をよく知る位置にいる。
そうした販売員に「営業活動の状況はどうだ?何か変わった事はないか?」と聞くと、その回答は「景気が良い/悪い/まぁまぁです」等の売り上げに関することが多い。また「顧客が忙しい/仕事が減った」という大雑把な情報も出てくる。
回答がぼんやりしているのは質問が大まかなせいかもしれないのでもう少し現場寄りの質問、例えば「人手不足の折、製造ではどんな対策を考えているのか」「デジタル化を促進している製造現場ではどんな方法でやっているのか」「カーボンニュートラルの具体的な動きはあるのか?やっているとしたら何をどうしているのか?」などを聞いてみると、明確な答えができる販売員は非常に少ない。マーケットの動きに対して具体的な回答ができなくても、自分の主要な顧客の動きを知らなくてどうするんだと言いたくもなる。
販売員なら誰でも「情報」がいかに重要かであるかを知っている。その情報力には「情報提供力」と「情報収集力」がある。
平成期を過ごしてきた販売員は「情報提供力」に重きを置いている。平成期は、機能や使用の違うシリーズ商品が格段に増えていた時期である。だからそれらの制御商品をよく知るため、展示会やメーカー研修会に積極的に参加した。確かに、顧客から出てくる案件情報を入手し、それに合う商品情報を提供すればその商談は決着する。しかし日常の営業活動でやる新商品戦略のPRで商談が発生して決着する例はほとんど聞いたことがない。
商品情報の提供だけで商談が発生した時期は制御商品の勃興期であり、顧客も知らない商品情報を迎え入れたのが昭和期である。この時期に製造現場の自動化を顧客と一緒になって経験した販売員は、現場にある機械、機器、治具などを目の当たりにした。つまり製造現場の具体的な情報を体験的に入手していたから、他の工場の製造現場にも自信を持って商品情報の提供ができたのだ。情報提供を受ける見込み客は真剣に聞いて質問をし、販売員は見込み客の利になるように回答した。
これを時代のせいにすべきではない。元来営業は情報を持って商いをする。情報提供して商談に持ち込むためには提供する情報が必要なのだ。それが商品で通用しないなら、まず顧客情報を集めるところから始めることになる。
令和期は、平成期の製造現場が量的に増えことはなく、質的変化や質的向上することになる。だから新たなマーケットも出現する。新たなマーケットを見つけるには、情報収集の基本動作が身に付いていないと簡単ではない。基本動作は日々の営業活動で実践して身に付くものである。
基本動作のその①は「顧客観察」である。前回は、昭和前期の営業が名刺に頼って、見込み客と話を引き伸ばしていたことについて述べた。現在の名刺交換は、見込み客がよほど珍しい名前だったらそれに触れるだろうが、そうでなければすぐに名刺から目を離す。名刺には緊張感を解く話題のテーマや知りたい情報がある。そういう目で観察する癖をつければ、観察する力が自然と身に付く。 顧客に1歩入れば、いろいろな物事が自然と目についてくるようになる。目についた物事の中には質問したくなることも増えてくる。
情報収集の基本その②は「顧客にもっともっと興味・関心を持つこと」である。顧客第一や顧客視点を掲げながらも、FA販売員は新商品や案件テーマに第一の関心を示す。しかし令和期には、発想を変えてみなければ目に入ってこない顧客の新しい動きがある。こうした動きが見えるようになるには、販売員が経験してきた興味・関心の対象を広げる必要がある。作業やユーティリティ設備、各種の在庫設備以外の物の存在などに関心を広げることが肝要だ。