FA販売員は、見込み顧客を訪問して名刺交換を簡単に済ませた後、季節や仕事の状況のような「こなし」の話題で間を取る。こなしの話題が発展しなければ要件に移る。用件が終われば「今後ともよろしく」とか「また何かあったら声をかけてください」のような挨拶で締めくくる。もし用件があっての訪問でなければ、こなしの話題のあとに自社や注力している取り扱い商品をアピールする。これにも質問や良い反応がなければ、挨拶して終わる。
新人の頃からこのような営業活動を繰り返して、運が良ければ商品が売れ、細いながらも受注ルート顧客になる。そして、こうしてできた顧客に向け、良かれと思う商品で攻めていく。
平成中期頃までは、売り込みアピールをする商品を受け止めてくれる現場はそこそこあったので、上記のような営業は効果があった。しかし令和に入ってからはどうだろうか。実際に同様の営業をしている販売員に聞くと、特定の商品のことで見込み客から来て欲しいと依頼を受けるケースを除けば、販売員が最新の商品情報を紹介しても良い反応は返ってこないと言う。それでも新規の顧客や見込み客への訪問で何かしら特別な用件がなければ、商品で相手の関心を誘うしか打つ手がないとも言う。
そうした販売員たちに「重要だと思う営業力は何か」と問うと、大雑把に分けると「①かゆいところに手の届く営業」「②課題を解決する営業」「③人間関係構築する営業」の3通りの答えが出てくる。①は顧客サービスに関することであり、②は商品の技術的知識や幅広い商品知識のこと、③は顧客へのアプローチの重要性である。
これらの営業力は、営業の経験年数に応じてそれなりに身についてくる。しかし現状は、見込み客を攻略する際、商品の力で相手の関心を誘えていないので、多少は成功するが失敗の方が多い。だから販売員は見込み客の攻略が苦手になっている。
失敗の理由は、商品が悪いのではない。販売員が「見込み客のことを知らなすぎる」からだ。新人の頃から顧客ありき、売り上げありきで営業をしてきたため、売り上げや案件、または顧客に依頼される用事を通して、顧客のことが分かったつもりになっている。
ドラッグストアに並ぶ商品を作っているメーカーの生産技術や設備保全部門を顧客にしている販売員に対し「その顧客は人手がかかるラインだと思うが、どんな作業に多くの人手がかかっているのか」と質問をしてみると、その販売員は大体の想像で回答し、詳細はよく分からないと言う。これでは顧客のどこに潜在的な需要があるか分からない。
顧客を担当し、課題や案件の打ち合わせをし、用事をこなしてきた営業の真ん中には、常に商品があった。そのため顧客を見るのに商品を通して覗き見る癖がついてしまっているのである。顧客視点が大事だという営業活動をしていても、結局は商品を通して顧客を見る癖には勝てないのだ。やはり日常の営業の中で情報収集の基本動作を身に付けなければ新たな潜在需要の発達は難しい。
前回までに、基本動作の「①観察」に関して、特に名刺交換時の重要性について述べた。②の「興味・関心」についても、興味・関心を持つ対象を機械機器等の設備だけでなく、ヒトとモノに広げて、作業や管理を対象にすべきと述べた。
情報収集の基本動作の3つ目には「疑問を常に持つ」を挙げる。観察をしたり、興味・関心があれば、確認したり、疑問が浮かんだりして質問するだろう。質問は情報収集の糸口になる。ここであえて「疑問を持つ」を情報収集の基本動作に挙げるのは、販売員が当たり前と思っている物事には多くの情報が隠れているからである。なぜそんな注文が出たのか、なぜアポが取れたのかなども含め、単純なものからでいいから何でも疑問に思う癖をつけることが肝要である。
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