令和の販売員心得 黒川想介 (100)

日本の製造業のものづくりはお家芸と言われてきた。現在でも、ものづくりは堅調であり、世界的にも優位のレベルにある。製造業が機械を使った手作り生産からFA生産に移行し始めて以来FA系の販売店はずーっと製造業と付き合って繁栄してきた。したがってFA営業には歴史がある。製造工場のFA化が始まった当初の頃には販売員が営業で訪問した相手先の人は機械技術者が製造の管理者だった。自動化をすすめる営業といっても当初は機械をリミットスイッチでストップ・スタートさせる程度の事だった。機械課のある中堅工場の場合は機械の担当者を訪問して電気で機械を制御してはどうかというような営業を仕掛けた。中小工場の場合は財布を握っている製造管理者を訪問し、機械作業の効率は自動化がいいなどと言って口説いた。時は進み現場に自動機械が入ってきた。自動機を効率よく動かして生産するために生産技術課ができた。工場の製造部門は生産力・コスト低減品質安定のため自動化を推進し、そこから出る課題を生産技術に依頼した。生産技術はその課題にチャレンジしてFA技術を向上させた。チャレンジの過程で生産技術課は販売員からFA機器情報を積極的に入手した。商品開発の話も出た。こうして工場が自動化を進めていた時期は生産技術とFA販売員は成長するためにお互いを必要していたのだ。平成に入ってくると工場内の生産工程の効率的なFA化はかなり進んだ。その一方では円高デフレの影響で国内の工場拡張や生産設備の新設・増設はかなり減少した。そのような背景があってFAの成長期には大人数を擁していた生産技術部門はその人数をかなり減少させていた。人数の縮小によって生産技術の仕事の様子は変った。積極的な省力化・自動化は少なくなって大半の中小工場では生産設備の改造や改善・リニューアルで手一杯になった。したがってFA販売員は生産技術が手掛かける設備の改善・改造・リニューアルから出る案件を追うようになった。それらの案件需要を取り込むために商品知識の広さ・深さ等の商品知識力が営業力と言われるようになった。以降そうした営業力が身についた販売員は生産技術との結びつきを強くして売上を上げてきた。平成末のあたりから国内の生産性は先進国間比較で低いレベルであることが指摘された。その頃から国内のGDPが上に向き出し、大手や中堅の工場は生産技術の外に生産革新部を創設する現場が見られるようになった。中小の工場でも生産技術の強化を唱える現場がふえている。こうした顧客の動きに対してFA営業は長い間、顧客から出る案件を追って解決するコンサルタント営業が染みついている。顧客になっている製造現場の技術者に商品をアピールしながら何か課題がないか、と聞き廻る営業からの脱出が必要になっている。前途の通り製造現場は生産効率の飛躍的向上を目論んで動き出しているのだ。従来からやっている改善・改造のレベルではないし、世間一般に取り沙汰されている現場のIoT化やロボットの運用と決めつけることでもない。各々の現場にはそれぞれの効率化がある。そこには見えてなかったマーケットがあるはずだ。その新マーケットのチャレンジはFA黎明期の営業と同じと考えればいい。先ずは訪問して営業を仕掛ける相手を間違わない事である。それは誰なのか、どの部門かは工場によってまちまちであるがFA営業が会う相手はまずは製造部である。生産技術からは伝わってこない課題を製造部は潜在的にもっている。FA商品自体に興味の薄い製造部にどうやって足を運ぶのかが新しい営業なのである。

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