儲かるメーカー改善の急所101項【急所86】QCDの意義と限界 QCDを越えて、お客様のことばかりやってみよ。

時代の変化がとても速いので、私にとってはほんの少し前の話であっても、それを若い方の前でするととても驚かれることが増えています。

例えば、私が子供のころ、自動車の宣伝では「最高速度が120㎞/時になりました!」といったスピード性能が売り物であった時があります。電気では、それは便利だ!ということで我が家がいち早く買った扇風機は、自動で止まるタイマーという今では当たり前の機能が追加されたというモノでした。あるいはもっと最近ですが、携帯電話の宣伝で「ビルの陰でもよく聞こえる」と受信性能を前面に押し出していた機種があったことを覚えています。当時はアナログ電波でした。どれも機能の高さや新しさをアピールしています。その時はまだまだ基本的な性能に改善余地がたくさんあったのです。

そして日本の製造業がモノづくりで世界をリードしていた時は、まさにこの基本的な性能である機能品質のすごさや納期の短さや価格の安さによってマーケットからの支持を得ていたと思います。
QCD(品質・コスト・納期)はモノづくりのキーワードとして掲げられて、日本の製造業の実力向上に大きく貢献してきました。しかし改めて考えてみると、これらは基本的に製造ありきの視点であり、大量生産を前提としたプロダクトアウトの時代の考え方であるといえないでしょうか。
いつの時代であっても品質、コスト、納期は重要な要素です。しかし欲しいと思われていないモノや必要のないモノにお客様は品質など求めないでしょう。そもそも売れなければ納期も関係がありません。

今の時代、自分でモノを買う時は、QCDはあって当たり前の前提となっていて、それとは全く違う視点や感情で購入を考えていると思います。
現在のマーケットイン時代、そしてこれからのユーザーイン時代のモノづくりを行うには、むしろQCDを忘れるくらいに、お客様のことばかりをやってみるのもいいのではないでしょうか。

■著者プロフィール

【略歴】柿内幸夫 1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授。著書「カイゼン4.0-スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など。

一般社団法人日本カイゼンプロジェクト

改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
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