
通信規格を選定するとき、私は毎回のように悩みます。
「EtherNet/IPでいいのか」「CC-Link IEでいくべきか」「PROFINETのほうが将来性はあるのか」。設備の通信規格を検討する場面になると、「どれを選べばいいのだろう」と考え込んでしまいます。
実際、私自身、採用していた通信ユニットが生産終了となり、設備更新時に苦労した経験があります。「あのとき別の規格を選んでいれば…」と思ったこともありました。
それ以上に気になるのが、「この規格は10年後も残っているだろうか」ということです。
そんなことを考えているうちに、ふと疑問が湧きました。
「そもそも、なぜFA業界にはこれほど多くの通信規格があるのだろう。」
気になって少し調べてみると、その理由は意外にも時代背景にあるようでした。
PLCが普及し始めた1980〜90年代は、現在のようにさまざまなメーカーの機器を接続することは少なく、一台の設備が独立して動作することが一般的でした。そのため、通信を共通化する必要性は高くなく、各メーカーが自社製品を最適に制御できる通信方式を開発していったそうです。その結果、PLCだけでなく、サーボアンプやインバータ、タッチパネルなども同じメーカーでそろえるケースが増え、結果として現在でいう「囲い込み」のような効果も生まれたのではないかと思います。
さらに工場では、通信速度よりも「決められた時間に確実に届くこと」が求められます。ノイズや振動など、オフィスとは比べものにならないほど厳しい環境で使われることもあり、それぞれのメーカーが工夫を重ねた結果、1980〜90年代には40種類以上もの通信規格が存在したともいわれています。
背景を知ると、「これだけ規格が多いのも仕方がないのか」と少し納得できました。
一方で、現場の立場からすると悩みは残ります。
一度採用した通信規格は簡単には変更できません。PLCだけではなく、サーボアンプやインバータ、タッチパネル、リモートI/O、さらには上位システムまで影響が及ぶため、通信規格を変更するには多くの工数とコストがかかります。
「もっと新しい規格へ移行したい」と思っても、既設設備との互換性や更新費用を考えると、そのまま使い続けるという判断になることも少なくありません。
最近はEthernetベースの通信が主流となり、以前と比べるとオープン化が進んできたと感じています。メーカー間の接続性も向上し、以前より自由に機器を組み合わせられるようになりました。
その中でも期待しているのが、OPC UAのようなオープンな通信技術です。現在は、PLC同士のリアルタイム制御というよりも、PLCからSCADAやMES、クラウドなどの上位システムへ設備データを受け渡すための共通インターフェースとして普及が進んでいます。
これだけ多くの通信規格がある一方で、ようやくメーカーの垣根を越える動きも出てきました。将来的には、リアルタイム通信にも対応する「OPC UA FX」の普及によって、PLC同士の通信にも活用が広がる可能性があります。そうなれば、「どの通信規格を選ぶか」で今ほど悩まなくなる日が来るのかもしれません。
【著者プロフィール】
シマタケ

共働きの子育て会社員。工場で15年間働く電気エンジニア。現在は某製造メーカーの生産技術担当。エネルギー管理士、第3種電気主任技術者、第2種電気工事士
機械保全技能士電機系2級、工事担任者(現DD第1種)、2級ボイラー技士、消防設備士(乙6、7)、危険物取扱者(乙4)など多数の国家資格を取得。心理学を勉強中でメンタルケア心理士、行動心理士も取得。
「電気エンジニアのツボ」でブログとYoutubeで情報を発信中







