【トップインタビュー】キヤノン イメージコミュニケーション事業本部 枝窪弘雄副事業本部長に聞く

キヤノンは、言わずと知れたイメージング分野のトップメーカー。業務用では放送機器やプロ用カメラ、レンズ等を展開しているが、このほどFA市場でも事業の強化に乗り出した。イメージコミュニケーション事業本部枝窪弘雄副事業本部長に話を聞いた。

 

FA事業強化乗り出す 画像データ活用を提案

—— 今回発表したFAの取り組みについて教えてください。

データ活用の重要性が叫ばれているが、行われているのは数値データを使ったものがほとんど。画像データは容量が大きく、ネットワークを阻害する可能性があると嫌われ、活用がまだ十分に進んでいない。しかしエッジに近い部分で画像処理をし、その結果だけを基幹システムにフィードバックする仕組みができれば、画像をもっと活用できると考えた。

これをFAの専門家であるシーメンスに相談したところ賛同いただき、協業して画像を活用したFA用システムソリューションを作っていこうということになった。協業の第一弾として、シーメンスの産業用PCに当社のソフトウエアを組み込んで3月より順次販売を開始している。

 

—— 御社の強み、特徴はどのあたりでしょうか?

今回発表したFA事業を所管するイメージコミュニケーション事業本部は、レンズ交換式カメラなどBtoC製品と、放送・映像制作向けのプロ用機材などBtoB製品を展開している。レンズからセンサー、画像プロセッサー、ソフトウエア技術にいたるまで一貫した画像処理の技術を持ち、これをFAに投入する。見逃されがちだが、画像処理においてレンズは非常に重要で、当社はそこの技術も持っている。

さらに、これらの製品の製造は大分キヤノンなど自社工場で行っている。自社工場内では自動化が進められており、こうした知見とノウハウを生かせるのも強みだ。実際に今回の製品も社内で使って有効だった仕組みを、ノウハウを含めて外販できるように再構築したものになっている。

当社が重視しているのは、他社との差別化と導入・使用時における簡単さだ。後発組なので、他社にはない価値を提供していかなければならない。

例えば、当社はネットワークカメラの技術をFAに持ち込み、従来とは異なるソリューションを提供していく。

通常、工場内の産業用カメラは単焦点で、1カ所に対して1台を設置するのが一般的だが、当社はそこにパン・チルト・ズーム(PTZ)機能を持ち、広範囲をカバーできるネットワークカメラを採用した。通常であれば複数台のカメラが必要なところを1台のネットワークカメラで広い視野をカバーし、さらに特定エリアの撮影も15カ所まで登録可能だ。

これにより機器の導入コストはもちろん、設置や設定、運用の手間も低減できる。従来の産業用カメラは設置場所を厳密に決める必要があり、被写体ごとにカメラや照明のセッティングが必要だが、ネットワークカメラなら天井や壁面に取り付け、PTZ、AF/AE(自動露出)機能でカメラを固定したまま被写体に合わせたピントと明るさで撮影ができる。また複数のカメラを集中管理でき、配線の手間が少なく、初期設定や変更も簡単になっている。

 

—— 具体的なソリューションを教えてください。

「Monitoring Edition」は異常監視・録画ソフトウエアで、事前に設定した複数箇所をスケジュール通りにネットワークカメラが自動録画し、トラブル検知時にはドライブレコーダのように前後だけ切り出せる。人の巡回を代替でき、トラブルの未然防止にもつながる。またトラブル前後のデータをすぐに取り出すことができるため、復旧までのダウンタイムを大幅に短縮する。

「Vision Edition」は、ネットワークカメラでモノの有無や色判別、バーコード読み取りができるようにし、目視作業を自動化できるソフトウエア。例えばアナログメーターの針が閾値を超えたり、機械トラブルで積層信号灯が赤信号になったり、資材が所定の位置になかったりすると、それを検知して管理者に通知する機能を持つ。またバーコード読み取りでは、人による読み取り作業をネットワークカメラで自動化できる。

また近年関心が集まる協働ロボットの活用についても、デンソーウェーブの小型協働ロボット「COBOTTA」と、AF/AE(自動露出)機能を持った当社の産業用カメラ「N10-W02」を組み合わせることで、ロボットに目の機能を追加し、ピック&プレイス作業を簡単に自動化できるソリューションも提供している。ティーチングやハンドの設定もフローチャートを組み合わせるだけで済み、難しいプログラムを組まなくても使い始めることができる。

 

—— 今後に向けて。

3月に「Vision Edition」の販売を開始し、「Monitoring Edition」は4月下旬から発売した。まずはセミナー等で理解を深めながら、テスト導入などでじっくり広めていきたい。

FA分野では画像によってもっと便利になる部分はたくさんある。これまで培ってきたイメージング技術を生かし、FAに貢献していきたい。

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