
機械装置や制御盤を中心とした電気設計CADとして世界中で使われているEPLAN。しかしその実態は、設計部門でもととなる設計データを作り、それを製造や保全部門でも活用し、制御盤のライフサイクル全体の効率化を実現するDXプラットフォームである。実際、EPLANユーザーでは、設計・製造連携を実現している企業が多数存在し、日本国内でも出始めている。
そんなEPLANだが、日本法人では日本展開の土台を作った井形 哲三 氏が勇退し、新たな代表取締役として、現場の技術者あがりで、グローバル企業での経験も豊富な星野 泰宏 氏が就任した。EPLAN日本展開ののさらなる発展に向けて、星野氏はどのように舵を取っていくのか、話を聞いた。

実戦の現場で磨かれたエンジニアとしての原点
――これまでの経歴を教えてください
大学時代は電気工学を専攻し、新卒ではキッチンやトイレなど水回り関連の住宅設備メーカーに入社し、そこで5年間、生産技術として現場のさまざまな設備に携わりました。自ら製造機械の設計や制御盤の組み立てを行い、ロボットを導入して溶接や研磨のプログラムを組むなど、現場で必要な技術を一通り経験させてもらいました。新たな生産ラインの立ち上げや自動倉庫の導入など色々やりました。
――もともとは生産技術で現場で自動化をバリバリやっていたんですね
メカから空圧、油圧、電気まで自由に幅広く実践させてもらいました。
その後、20代後半にドイツの大手FAメーカーに移り、そこでは主に技術コンサルティングや現場でのトラブル解決を行う、いわば「機械のお医者さん」のような役割を担っていました。
日本のお客様が購入した輸入機械には、当時勤めていたドイツメーカーの制御機器が多く採用され、組み込まれています。機械にトラブルが発生した際、お客様や輸入商社では原因が分からないケースが多々あり、そうなると問い合わせがきて、そこから現場へ出向き、電気図面を確認しながら原因を特定するという仕事をやっていました。工作機械メーカーでのNC装置の立ち上げ(コミッショニング)やパラメータ設定、PROFIBUSの通信設定など、幅広く対応していました。
特に思い出深いのは、北海道の山間部でのボーリングマシン(掘削機)の故障対応です。動かなくなった巨大な機械を調べ尽くして基板の故障にたどり着き、なんとかドイツからパーツを取り寄せて修理したのですが、地熱で気温50℃にもなる穴の中の過酷な環境で、しかも山中で何日間も仕事ができなくなってしまっている作業員の方々に囲まれての復旧作業は、極限の環境と尋常でないプレッシャーで、とても忘れられない思い出です。
その後、ドイツメーカーでは3年間、本社にも赴任し、欧州にいる日系メーカーの活動をサポートする業務も経験しました。いま振り返ると、若い頃は国内外を飛び回りながら、現場と向き合う毎日でした。
――ずいぶん濃いキャリアを歩まれてきたのですね。
ドイツのFAメーカーの後、ドイツのロボットメーカーに移り、日本法人のトップとして日本市場への本格展開を担当しました。しかし日本のロボット市場は圧倒的に強いプレイヤーがいますし、リーマンショックも重なったことでとても苦労しました。しかし日本メーカーがやらなかったニッチな分野に特化することで一定の成果を出すことはできたと思います。
その後、世界的なベアリングメーカーの工作機械部門のディレクター、ロボットハンドやチャック、基板切断機等を手掛けるドイツメーカーの日本法人の代表を務めた後、今回、縁あってEPLANに入社しました。
インダストリー4.0、製造変革を支えるプラットフォーム
――EPLANについて、入社前のイメージはどうでしたか?
ドイツメーカーに勤めていた際、電気図面では必ず「EPLAN」という名称を目にしていて、ドイツの有名な電気設計CADメーカーという認識でした。
しかし、採用の過程でEPLANドイツ本社と対話を進める中で、その印象は大きく変わりました。EPLANは長年、単なる電気設計CADではなく、設計から製造に至るプロセス全体を繋ぐプラットフォームとしての戦略を進めてきており、さらに、10年近く前から将来のツールとしてAIの活用に取り組んでいることを知りました。
かつてドイツメーカーの日本法人の代表を務めていた際、国や経産省などからドイツのIndustrie4.0(インダストリー4.0)の勉強会の講師として呼ばれたりしたのですが、その時の勉強会で産業の将来像として紹介していたインダストリー4.0の構想をEPLANは今も継続して進化させていて、まさにインダストリー4.0を実現・体現している企業だと実感したのです。
長年考え抜かれたサービスを提供している点に強い将来性を感じ、私自身の新たなチャレンジと日本の製造業に貢献するため、入社を決断しました。
――実際に着任されてみて、手応えはいかがですか。
想像していた以上に、日本の製造業において設計と製造の連携やデジタル化への取り組みが急速に求められていると感じています。
人手不足やグローバル化への対応、社外での生産体制の構築など、お客様側が「来年、再来年には対応しなければ本当にまずい」という強い危機感を持ち始めています。現場のエンジニアや生産技術者の高い専門性を活かしつつ、弊社のシステムを使ってどのように新しい業務改革をお手伝いできるか、非常に大きなやりがいを感じています。
効率化のための機能はすべて実装済み 設計・製造連携を推進
――一般的なCADツールと比較した際、EPLANの強みはどのあたりなのでしょうか
一般的なCADの描画ツールであれば図面を描くだけで十分かもしれませんが、今後の製造業において市場で勝ち残るためには、設計データの活用と製造連携が不可欠です。EPLANは、はじめからそれを想定したつくりになっていて、すでに機能が備わっていることが強みだと思います。
ドイツメーカーの製品によくある特徴として、最初からスタンダードな機能の中に必要な要素が網羅されている点が挙げられます。EPLANでも同様で、ソフト自体に必要な機能が備わっているため、お客様ごとに高額なカスタマイズ開発を繰り返し追加する必要がありません。弊社の技術者によるコンサルティングやトレーニングを通じて、現状の環境に合わせた最適な使い方を提案でき、将来的にも対応できることが大きな特長です。
――具体的に、特に日本の現場で広めていきたい機能や取り組みはありますか。
電気設計図面から制御盤の3Dレイアウトを作成し、さらに作業指示へ繋げる製造支援機能「Eplan Smart Production(Eplan スマートプロダクション)」は、もっと広めていきたいです。
これからの制御盤の製造現場では、外部の作業員やパート・アルバイトの方が組み立て作業に携わる機会が増えていくと考えられます。デジタル画面上で一つひとつ細かく正確な指示が出る仕組みを構築することで、作業間違いを減らし、安全性と生産性を確保することができます。
また、電気設計者だけでなくメカ(機械)設計者とのシームレスな連携も重要だと考えています。機械と電気の壁を取り払い、双方にとって工数削減やミス防止につながるプロセス構築を提案していきたいと考えています。
ターゲットの明確化と日本のものづくりへの貢献
――今後の戦略について
やりたいことや考えていることは沢山ありますが、まずは当社の活動領域とシェアを確実に広げていくための体制作りと戦略策定を進めます。そのためにはターゲットの明確化が必要です。
現在は、マシンオートメーションやオートモーティブといった領域をコアとして分析を進めています。自分たちのシステムがどのような分野で最大の強みを発揮できるのかを明確にし、チーム全体に浸透させて重点的に訴求していこうと思います。
――最後に日本の製造業へ向けたメッセージをお願いします
私はキャリアを通じて、一貫して日本のものづくりの現場にこだわって活動してきました。「EPLANがあったからこそ現場の改革ができ、成果を上げることができた」とお客様から評価していただけるような企業を目指していきます。
私たちがまだ把握しきれていない領域であっても、製造プロセスの改革や課題を抱えているお客様は日本全国に数多くいらっしゃるはずです。どのようなお困りごとやご相談でも結構ですので、ぜひ気軽にお声がけいただき、一緒にお役に立てればと考えています。







