
世界中に幅広くビジネスを展開するYOKOGAWAグループの中で、日本市場を担当する
横河ソリューションサービス。新たなプラントや工場に対する設備投資が盛んで成長著しい
海外市場に対して、成熟市場の日本は既設のプラントの更新や改造が主で、効率化や自動
化、省力化への投資が拡大中。また、AIによるプラントの自律運転、自律制御の実用化も進
んでいる。
そうした中で、横河ソリューションサービスは日本のプラントをどう変革し、未来へ導こ
うとしているのか。日本市場の最新状況と同社の直近の事業展開について、横河ソリューシ
ョンサービス 代表取締役社長にして横河電機 執行役 日本・韓国統括代表でもある木村
郁雄氏に話を聞いた。
半導体材料など化学メーカー向けビジネスが堅調
―初めに2025年度から今期第1四半期の状況を振り返っていかがですか?
数字面で見ると、前期からこの四半期にかけて 堅調に伸びている状況です。業界別に見ると、鉄鋼向け投資は他の業種と比べてやや控えめな印象を受けますが、石油、化学、電力、ガスなどは、中東情勢や中国景気の動向といった不透明感がありながらも、決定された計画はほぼ予定通り実行されています。
ただ一時的には市場が縮小する可能性はあるものの、各種の効率化や人手不足に対応するための省力化・自動化への投資は確実に増えていくと見ており、中長期的には新たな需要創出と成長機会につながると考えています。しかし、残るプラントにおける各種の効率化や、慢性的な人手不足に対応するための省力化・自動化投資は確実に増えていくと見ており、そこはポジティブに捉えて取り組んでいます。
――半導体やAIに関連する領域はいかがでしょう?
当社の場合、半導体製造装置メーカーへの機器供給といった直接的な取引もありますが、それ以上に、半導体に使用される材料分野が非常によく動いています。化学メーカー各社が国内に新プラントを建設したり、既存工場の増産に向けて増強投資を行ったりする動きが活発で、これは半導体材料に限らず、バッテリー・電池関連の新材料などでも同様の傾向が見られます。幸いにも当社は化学メーカーの顧客が多く、既存のインストールベース(導入実績)が大きいため、こうした増強・新設の投資を確実に取り込めており、業績の堅調な推移につながっています。
顧客のDX実現に向け「L3」MESの提案を強化
――設備投資が旺盛ななか、御社としてどのような取り組みをされているのでしょうか
プラントや工場は、フィールド層の「L1」、DCS(分散形制御システム)やPLCなど制御層の「L2」、SCADAやMES(製造実行システム)など現場の情報システム層の「L3」、ERPなど情報系システム層の「L4」の階層状になっています。
当社が最も得意としているのは制御層である「L2」の領域で、現在、多くのプラントで既存のDCSの更新時期が重なっていることもあり、L2領域は非常に順調に伸びています。一方で、現在当社として最も力を入れ始めているのが「L3」に相当するMESの領域です。昨年度、L3領域の強化に向けて製販一体の組織である「製造実行システム本部」を立ち上げ、提案を強化しています。

――L3の提案を強化している理由は?
現状、当社の売上高は、得意としている制御系のL2領域の比重が高くなっています。これをL1のフィールド機器はもちろん、情報系であるL3、さらにはERPなどの「L4」へと拡大することで、L1からL4までの全階層でお客さまの課題を解決できるようになります。L4の基幹システム(ERP)領域に関しては、当社は以前からMicrosoftのERPソリューションである「Microsoft Dynamics 365」を取り扱っており、国内でもトップクラスのインテグレーターとしてここ数年非常に大きく数字を伸ばしています。
当社はもともとL2とL4に強く、お客さまがDXを進める中でL1からL4までのシステム・データ連携の要望が高まっているからこそ、その間を結ぶL3領域の強化が必要なのです。
営業・推進体制の再編と代理店との強力なパートナーシップ
――L1やL2の現場に近い領域での取り組みについては?
従来、伝送器やセンサ類、分析計といったL1のプロダクト品の販売推進機能は、グローバルを統括する横河電機側にありました。昨年、その日本国内向けの販売推進機能を、日本市場を担当する当社の中に移管し、「エリア営業本部」の下に「プロダクト推進部」・「システム推進部(L2対応)」という形で配置しました。これにより当社の営業と推進部隊が、全国の代理店と一緒にお客様へアプローチできる体制へと刷新しました。
――代理店ネットワークとの連携も大きな強みですね。
日本全国にあるパワフルな代理店との長年にわたる信頼関係は、当社のビジネスにおける最大の強みであり、武器です。数多くの代理店と密接に連携し、今回の体制変更についても非常に高い評価をいただいています。国内市場において代理店と強力なパートナーシップを組み、伴走していく体制を今後も丁寧に進めていきます。
DCS更新を機にOTセキュリティの強化推進
――最近はプラント・工場のネットワーク化に伴いセキュリティの重要性が高まっています。
ITのセキュリティ対策はもちろんですが、当社が強く訴求しているのは「OT(制御系)セキュリティ」です。近年、工場の経営層やトップの方々の関心は非常に高まっており、単なる関心にとどまらず「対策を講じなければならない」という強い危機感に変化しています。
当社では、エンドポイントセキュリティ(現場端末の保護)、ネットワーク制御(脅威の侵入と拡散を抑制)、常時監視+マネージドサービス(侵入検知・運用支援)の3つの要素それぞれのソリューションと、それらをパッケージ化した「セキュリティパッケージ」を提案しています。
ITベンダーのセキュリティアプローチとは異なり、当社は制御システムベンダーとして「現場の運転状況やプロセスを深く理解した上で、いかに生産を止めずに安全を確保するか」という視点から提案できる点が強みです。DCSの更新はOTセキュリティを一緒に強化する絶好のタイミングでもあり、現在、特にDCS更新とOTセキュリティをセットにした提案を強力に推進しています。

――その他の注力している商材など
アセットマネジメント(設備資産管理)とアセットパフォーマンスマネジメント(APM)の領域にも力を入れています。設備の異常予兆検知や診断、計画保全のためのコンサルティング、解析ツール、状態監視サービスなどを体系化して提供しています。また、再生可能エネルギー分野でも陸上・洋上風力発電などの電力監視システムで確実に実績を重ねています。
DCS「CENTUM」50周年 AIによるプラント自律運転の実現へ
――今AIが盛り上がっていますが、御社でのAIの活用状況は?
昨年、DCS「CENTUM」が50周年を迎え、その際に今後の開発コンセプトとして「AIを活用したプラントの自律制御の実現」を掲げました。現在、CENTUMにAIによる自律運転機能を標準としてバンドルした製品の準備を進めており、年度内には市場へ投入できる見込みです。
既にENEOSマテリアルさまのプラントにおいて、ケミカル製造設備の自律運転に採用され、3年間の実績があります。もちろんAIを入れればすぐに自律運転ができるわけではなく、検証作業や運用ポリシーの策定など丁寧なプロセスが必要ですが、確実に現場の自動化・自律化を進めています。

―フィジカルAIが注目されていますが、御社のAI活用について教えてください。例えば、先の自律化工場も、DCS(L2)が制御の頭脳となり、その上にMES(L3)やERP(L4)が連携し、人間が従来行ってきた複雑な調整作業をシステムが代替して工場の安全運転と高度化を両立させています。工場が自律的に機能する姿は、見方を変えると、大きなフィジカルAIですね。
確かにフィジカルAIに近いと言えるかもしれません(笑)。
AIという面では、社内業務の効率化という点でも「ゼロエンジ(エンジニアリング工数ゼロ)」構想を掲げ、AIの活用を進めています。人手不足が加速し仕事量が増加する中で、PLCやDCSのソフトウェア検証、品質管理、引き継ぎ作業などをAIによって漏れなく、スピーディーかつ確実に自動化・支援する仕組みの構築を進めています。
プラントの安定稼働と自律操業を実現する「Trusted Partner」に
――今後に向けて
当社の軸足が制御システム(L2)にあることは間違いありませんが、目指すべき方向は「単なる制御システムのベンダー」から、お客様の「Trusted Partner(信頼されるパートナー)」となることです。そのために、L3やL4といった情報系ビジネスをL2に匹敵する柱へと育て上げ、お客様のシステム全体をL1からL4まで一貫してカバーできる体制を目指します。
あわせて重要視しているのが、導入後のOPEX(運用・保守・サービス)領域におけるビジネスの拡充です。多くのお客様で人手不足や熟練者の引退が進む中、導入していただいた設備資産をいかに長期間、高い品質で運用し続けていただくかが共通の課題となっています。
当社には、24時間365日体制で世界中をカバーする「グローバルレスポンスセンター」に加え、日本全国に広がる当社および代理店のサービス拠点が整備されています。この強力な現地対応力と高度なリモート監視体制を両立させ、お客様の資産価値を最大限に高めるサポートを提供していきます。







