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【年頭に寄せて】経済産業省「サプライチェーン 一層強化」藤木俊光 製造産業局長

経済産業省 藤木俊光 製造産業局長

 

はじめに

明けましておめでとうございます。令和3年の年頭に当たり、一言御挨拶申し上げます。

まず、新型コロナウイルス感染症でこれまでにお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げるとともに、健康面や生活面などで影響を受けておられる方々に、心からお見舞い申し上げます。また、産業界の皆様からは、医療・生活物資の増産など、様々な形で御協力をいただき、改めて感謝申し上げます。

この感染症の拡大という未曾有の危機を乗り越えるため、私たちは生活様式のみならず、産業構造や社会システムを転換させていかなければなりません。ウィズコロナ・ポストコロナの時代に向け、我が国製造業においては、特に、①「グリーン社会」への転換、②「デジタル化」、③サプライチェーンの再構築をはじめとする「レジリエンス」の強化について重点的に取り組んでいく必要があります。

 

2050カーボンニュートラルの実現

まず昨年、わが国は「2050カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言致しました。

これを実現するためには、エネルギー分野だけでなく、鉄鋼、化学などの産業分野も、革新的なイノベーションを推進し、製造プロセス等を大きく転換させていくことがカギとなります。これを支援するため、昨年は、第3次補正予算案において、重点分野における技術開発・社会実装に向けた取組を10年間に渡り支援する2兆円基金の創設を決定しました。

環境対応は、もはや経済成長の制約ではなく、新たなビジネスチャンスにつながる成長戦略そのものです。昨年末にお示ししたグリーン成長戦略と、分野ごとの「実行計画」に基づき、産業界の皆様とともに、経済と環境の好循環を実現してまいります。

 

デジタル社会の実現

また、デジタル社会の急激な進展への対応も不可欠です。非接触や非対面といった「新たな日常」の実現や、ポストコロナ時代における我が国製造業の国際競争力強化に向けて、この潮流に乗り遅れぬようアクションを起こしていく必要があります。

例えば、自動車産業においては「CASE」と呼ばれる大変革を迎えており、対応を加速していかなければなりません。様々なプレイヤーが、インターネットを通じた情報と車の接続、自動走行、シェアリングサービス、電動化などを進めるグローバル競争の中で、我が国の自動車産業が競争力を確保することが重要です。また、MaaSの推進により、少子高齢化といった課題にも対応し、地域・高齢者を含めた移動の自由を確保するためのモビリティサービスの実現にも取り組む必要があります。このため、引き続き、関係省庁とも協力しながら、全国各地の自治体で実証実験を行うなど、地域の交通の課題をMaaSで解決する取組を進めてまいります。

ロボットやドローンを取り巻く環境も大きく変化しています。これまでは、主に工場の生産性向上のためにロボットが導入されてきましたが、コロナ禍を背景とした自動化・省人化・遠隔化のニーズの高まりから、工場のみならず、小売業や物流分野等でのロボットの導入が重要になっています。これを進めるためには、ユーザー側がロボットを導入しやすい環境、いわゆる「ロボットフレンドリー」な環境を構築することが必要です。また、ドローンは、人手不足の課題を抱えるインフラ点検や離島物流、災害への対応などで、急速に利活用が進んでいます。これをさらに後押しすべく、地域と連携した実証を進めるとともに、セキュリティの確保された安全安心なドローンの普及を進めてまいります。さらに、「空飛ぶクルマ」についても、2023年の事業開始、2025年の大阪関西万博での活用を目標に、制度整備や社会実装を進めてまいります。

さらに、個々の製造現場においても、デジタル化の重要性はますます高まっています。新型コロナウイルス感染症だけでなく、世界各地での地政学的リスクや自然災害等、サプライチェーン寸断を引き起こす不確実性が高まる中、こうした不測の事態に柔軟・迅速に対応するダイナミック・ケイパビリティ(企業変革力)の強化が喫緊の課題です。近い将来、製造業においても5G等の無線通信技術の本格活用が見込まれる中、生産ラインの柔軟性を高めることで、仮に不測の事態が生じた際にも製品の増産や代替生産等を可能とすべく、研究開発をはじめとした取組を進めてまいります。

 

サプライチェーンの強靱化

また、今回のコロナ禍では、生産拠点の集中度が高い製品や、国民が健康な生活を行う上で重要な製品などのサプライチェーンの脆弱性が顕在化しました。

これを踏まえ、サプライチェーン強靭化のため、令和2年度1次補正及び予備費において国内投資促進事業費補助金を約3000億円措置し、既に約200件の取組の支援を決定しております。これに加えて、第3次補正予算案では、約2000億円の追加措置を閣議決定致しました。これにより、サプライチェーンの一層の強靭化を進めてまいります。

さらに、米中対立を背景とした、米国による輸出管理強化の動きや、昨年12月1日に施行された中国の輸出管理法も注視しなければなりません。自社のサプライチェーン上のリスクを把握するなど、海外市場におけるビジネスが阻害されることのないよう万全の備えをお願いいたします。仮にサプライチェーンが不当に分断されるようなことがあれば、経済産業省が前面に立って産業界の皆様をサポートしてまいります。

 

下請等取引適正化

また、サプライチェーン全体での取引適正化や、取引条件の改善も重要な課題です。2016年9月に発表した「未来志向型の取引慣行に向けて」に従い、昨年は、型管理問題や働き方改革に伴うしわ寄せ防止などの取組を精力的に進めてまいりました。具体的には、2月に「素形材産業取引適正化委員会」を設置し、「素形材産業取引ガイドライン」の改正案や普及のための対応策などについて議論を行いました。

また、5月には「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」において、取引先との新たな連携や望ましい取引習慣を遵守することを宣言する「パートナーシップ構築宣言」の仕組みを導入し、大企業と中小企業の共存共栄の関係を構築することで合意しました。産業界の皆様には、引き続き「パートナーシップ構築宣言」を作成・公表していただけるよう、改めて御協力のほどお願い申し上げます。

 

福島

福島の復興は経済産業省の最重要課題です。昨年9月には「福島イノベーション・コースト構想」の中核となる福島ロボットテストフィールドの開所式が執り行われました。福島ロボットテストフィールドは、ドローンの飛行試験や災害ロボットの実証実験を行える場としてニーズが高く、全施設が供用開始されてから研究棟には福島県内外から20の企業・大学等が入居され、既に260件の実証試験が行われております。福島ロボットテストフィールドが立地する地域は、ロボット産業との関わりが深い、機械加工産業が盛んな地域として知られており、福島ロボットテストフィールドが地域の新たな雇用や地元企業の取引拡大を生み出し、新たな産業を育む拠点となることを期待しています。

 

通商

また、昨年、わが国は8年間の交渉を終え、RCEPに署名しました。これにより、世界全体のGDP及び貿易総額の約3割を占める巨大な自由貿易圏が成立することとなります。また、日英EPAにも署名し、英国のEU離脱後、日EU・EPAに代わるものとして、日英間のビジネスの継続性が確保されました。これからも自由貿易の旗手として、自由で公正なルールに基づく国際経済体制を主導する役割を果たしてまいります。

 

おわりに

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、我が国経済は戦後最大の落ち込みを記録し、「新たな日常」への模索が続くなど、我々は多くの課題に直面しています。こうした中、今年は延長された東京オリンピック・パラリンピックが予定されています。人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして、また東日本大震災から復興しつつある姿を世界に発信する場としてこれが開催できるよう、私自身も皆様とともに全力を尽くしてまいります。

最後に、産業界の皆様の益々の御発展と、本年が素晴らしい年となることを祈念して、年頭の御挨拶とさせていただきます。

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