新たな装置や仕組みを付加し、機能を大幅向上 中小製造業の実行するMINI Industry 4.0

1 2016年、歴史的な「潮目の変化」が製造業を襲う
新年明けましておめでとうございます。

昨年2015年は、製造業界にとって「変化予兆の年」であった。昨年6月から突然始まった中国経済変調の影響は、かつてBRICSと騒がれた新興国を直撃し、新興国依存の市場戦略にブレーキがかかった。また、安い労働力を求めた「チャイナ・プラスワン」は影を潜め、日本回帰にかじを切る企業も増えている。プラザ合意以降30年に亘り、日本の製造業を支えてきた(安い労働力を求めた)「製造戦略=海外シフト」の神通力も力を失ってしまった。

中小製造業の足元では、戦後から続いてきた潮目に変化が起きている。その変化は「大手系列、ピラミッド崩壊」である。中小製造業にとって発展を支えてくれた「大手依存」「系列依存」の時代が終わる。大手依存体質が染み付いた中小製造業には「経営の変革」が余儀なくされ、これからは発注元の発掘と確保が、企業存続を左右する重要な経営課題となってくるだろう。また、大手企業自身にも、オープン化への対応圧力が襲いかかっている。インターネットの台頭を背景に、歴史上経験したことのない(オープン化を前提とする)製造対応の洗礼を受けようとしている。インダストリー4.0が好例である。

われわれは今、概念を根底から覆す「パラダイムシフト」の渦中にいる。2016年は歴史的な「潮目の変化」が製造業を直撃し、製造業にとって新たな歴史の起点となるだろう。新しい製造業には「インターネット」という新しい舞台が用意され、新たにIoT(Internet of Things、モノのインターネット)という役者が主役に躍り出ることに、疑いの余地はない。

2 インターネット活用による「製造業革命の時代」が始まった
昨年2015年の製造改革に関する話題は、IoT一色であった。ドイツ提唱の「インダストリー4.0」の波も全世界に伝搬し、日本でもインダストリー4.0は、「現代の黒船」として捉えられ各界で注目の的となっている。

米国GE提唱の「インダストリアル・インターネット」も全貌を現した。航空業界を筆頭に、輸送サービス業界、電力・エネルギー業界、医療業界など多岐に亘る社会構造全体のインターネット活用のイノベーションが提唱されている。

米国では、「インダストリアル・インターネット」を活用した「新たなビジネス創出」をもくろんでおり、これを革命と定義し“第3の波”と呼んでいる。かつて100年以上前に、敷設された商用電源が産業社会の根幹となり、新商品を開発する巨大企業が誕生し、長い期間に亘り「電気」を使う商品によるイノベーションで社会は激変した。今日再び、工場や家庭に敷設された「インターネット」をベースに同じことが起きようとしている。

インターネットを活用し、IoTというコンセプトのもとで、センサー技術や人工知能技術など、新技術を背景として「インダストリー4.0」や「インダストリアル・インターネット」が実現する。これは、製造業界での革命であり、この流れの変化は誰にも止めることはできない。

3 中小製造業経営者への警鐘
残念ながら、日本の中小製造業では「インダストリー4.0」への関心や認識度も依然低く、従来の延長線上での経営に終始する企業も少なくない。しかし確実に訪れるこの革命を意識し、時代の変化に対応しないかぎり、中小製造業が未来永劫(えいごう)、発展を続けることは至難の業である。

今の概念に固守し変化への対応を避けていたら、どんなに優れた企業でも、近い将来に破壊的抹殺の対象にされてしまう。中小製造業経営者が、破壊的抹殺を逃れるためには、インターネットの持つ破壊的イノベーションの力を味方にし、インダストリー4.0実現を具体的な経営方針に掲げ、経営者自らが先頭に立って推進する以外に方策はない。

4 勝ち組の要因。“インダストリー4.0がもたらす中小製造業経営メリット”
戦後70年間の中小製造業の競争は、QCD(品質・コスト・納期)の戦いであった。

今日の勝ち組となった中小製造業を分析すると、たゆまぬQCD追求の結果が認識できる。常に最新鋭機を導入し、社員教育を徹底し、デジタル化や5Sを実現し、自動化投資を実施してきた企業が勝ち組の要因であり、経営者自らがチャレンジ精神を持ってQCD追求を推進・継続した企業が、勝ち組となっている。

QCDは今後も重要な差別化要素であり、QCD追求は製造業の宿命である。機械メーカや装置メーカは、今後もQCDのための新商品を開発し市場に投入する。そのソリューションを導入し、中小製造業のさらなるQCDの追求が続いていくのは必至である。

しかし、QCD追求だけで未来永劫、発展を続けられるであろうか?
中小製造業に襲いかかる経営課題は、「受注の不安定」と「熟練工不足」である。この課題克服のために、インターネットを活用した製造業イノベーションが有効であり、インダストリー4.0実現における経営メリットの神髄でもある。

5 次世代工場。“つながる工場”…デジタル商人(あきんど)
インターネット活用による次世代工場は「つながる工場」を実現し、強い営業体質を持つ企業に変身することができる。

「つながる工場」に関しては、最近注目度も高く、さまざまな解説がなされているが、日本の中小製造業にとって「つながる工場」実現は、企業存続のための重要テーマである。

中小製造業が「つながる相手」は、発注元や取引先であり、SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)もクラウドを経由し、デジタル的に「つながる」仕組みの実現によって、(ペーパーレスによる)大きな経営メリットが生み出される。

6 次世代工場。“考える工場”…ドラえもん
「考える工場」は、インダストリー4.0の提唱するコンセプトの一つであるが、中小製造業にとって少子高齢化に対応するもう一つの大きな経営メリットとなる。インダストリー4.0に関する見識者のなかで、「少子高齢化」や「熟練工の技術伝承」を論じることは少ないが、インターネット活用の次世代工場では、この課題解決の特効薬が用意されている。この特効薬は、クラウド上に存在する“人工知能”の活用である。熟練工と人工知能の共同作業が実現し、ノウハウを将来に継承する唯一の特効薬である。

7 中小製造業に福音。「実行するMINI Industry 4.0」
MINI Industry4.0とは、中小製造業が具体的にインダストリー4.0を実現するための仕組みであり、実行するMINI Industry4.0(Most Intelligent & New Initiative for Industry 4.0)と呼ばれる。

中小製造業のための実行するMINI Industry4.0に必要な概念は、「レトロ」である。「レトロ(Retro)」とは、Retrospective(回顧)の略語であり、懐古趣味と一般社会では使用されているが、製造業での概念は、稼働中の機械やソフトに新たな装置や仕組みを付加し、機能を大幅向上することを言う。機械や生産管理など現在活用中のシステムをそのまま使用し、インターネット活用の最新技術を使って、インダストリー4.0を実現することが、実行するMINI Industry4.0の神髄である。

■「実行するMINI Industry 4.0」 5つのステップ

8 第1ステップ“情報の一元管理”
中小製造業にとって「情報の一元管理」の構築が、実現の起点となる。

中小製造業では、さまざまな単独システムが稼働しているのが一般的である。生産管理システム(ERP)、2D/3D CADシステム、CAMシステムや図面のスキャナデータ、動画や静止画など、多くの単独システムが稼働し、個別管理となっている。中小製造業がまずはじめに意識しなければならないのは、現在稼働中のシステムを入れ替えることなく、個別管理となっている情報を社有情報として「情報の一元管理」を構築することである。

MINI Industry4.0では、alfaDOCKと称するサーバーシステムが提供され、NoSQLなど最新データベースの活用で、すべての情報とデータの一元管理が実現し、クラウドサーバーとのシンクロが安全に活用できる。

9 第2ステップ “情報の活用…つながる工場”
一元管理された情報を、自社工場のみならず外部(発注元・取引先)で活用することが、第2ステップである。

ペーパーレスははるか昔から志向されてきたキーワードであるが、クラウドを通して外部とつながる環境が整っているインターネットの舞台では、ペーパーレス化の実現が必須であり、紙は罪悪となる。中小製造業では、図面、作業指示書、発注書、検査結果など多くの紙が工場の作業現場にプリントアウトされ重宝に使われているが、紙を電子データに切り替えることが中小製造業の重要イノベーションである。

ペーパーレス化された工場では、現場はすべてデジタル表示に切り替えられ、各工程別の端末や、作業者別のモバイル端末が登場する。また、クラウド経由で「つながる工場」が実現し、発注元や取引先との電子データ交換が可能となる。MINI Industry4.0では、「情報の一元管理」と同時にすべての情報は、alfaDOCKのサーバー内で3D-pdf、2D-pdfなどに自動変換され、ペーパーレス環境が提供される。

10 第3ステップ“情報のひも付け…インテグレーション”
第3ステップは、一元管理されている膨大な情報やデータから、必要情報を呼び出し、異なる情報をひも付け(インテグレーション)し、適切なフォーマットで出力することである。

alfaDOCK内の強力検索機能とカスタマイズされたテンプレートが提供される。かつては、膨大な労力と費用をかけたインテグレーションが瞬時に行うことができる。大きなイノベーションの実現である。

11 第4ステップ “3D-CAD活用のすすめ”
3D-CADの徹底推進は、中小製造業において未来の勝ち組への登竜門となる。自動車業界などの大企業では、3次元設計は当然であるにもかかわらず、中小製造業では3次元化が非常に遅れている。

MINI Industry4.0の第4ステップは、3D-CAD活用への挑戦である。3D-CADと情報一元管理の親和性の高さを最大限利用することも重要な要素であり、ここにクラウド技術を融合することで「つながる工場」の基本が完成する。また3次元は作業指示書などの支援情報として極めて有効であることは十分検証されている。

日本の中小製造業が本気で3次元設計と情報一元管理に取り組むことで、企業の未来が開けてくる。この取り組みは、今日までの“賃加工主体の下請け製造”から、設計要素を取り込んだ“エンジニアリング主体工場”への脱皮をも意味する。

12 第5ステップ“CPS(Cyber Physical System)”
インダストリー4.0の神髄は、シミュレーションとネットワークである。ドイツが提唱するインダストリー4.0は日本の中小製造業で成功する可能性が高い。製造ノウハウなど現場のアナログ力は世界に秀でており、これらの優位性が今後の競争力の源泉になることは疑いの余地はない。この優位性を強力な武器とし、MINI Industry4.0を実行することによって、日本は世界に先駆けスマート工場の実現を手中にできる。MINI Industry4.0の第5ステップは、“CPS(Cyber Physical System)”による「シミュレーション工場」の実現である。

高木俊郎(たかぎ・としお)
株式会社アルファTKG社長。1953年長野市生まれ。2014年3月までアマダ専務取締役。電気通信大学時代からアジアを中心に海外を訪問して見聞を広め、77年にアマダ入社後も海外販売本部長や欧米の海外子会社の社長を務めながら、グローバルな観点から日本および世界の製造業を見てきた。

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