
製造業を取りまく環境が激変する中、FA市場を支える販売代理店・商社のあり方もまた大きな転換期を迎え、各社それぞれの特長を生かした変革を進めている。
2023年に「菱電商事」から社名を変更し、三菱電機の販売代理店大手という枠組みを超え、技術商社としてワクワクを生み出す事業創出会社へと歩みを始めたRYODEN。FA事業の現在地とその取り組みについて、常務執行役員 FA・施設システム事業本部 事業本部長 八道(やじ)啓一 氏に話を聞いた。
2025年度の総括と2026年度の市場見通し
ーー2025年度のまとめと今期の進捗について聞かせてください
2025年度は、FA事業全体としてはグローバルな連携ネットワークの恩恵もあり、前年並みの増収を確保できました。ただ営業利益の面では一部先行投資等もあり立ち上がりが遅れた部分がありました。
今年度については、長引いていた在庫調整がおおむね完了し、中小のお客様を含め需要が回復基調にあり、特に生成AI・データセンター関連が非常に好調です。自動車業界は厳しい状況が続いており、工作機械業界は中国市場以外では依然として足踏み状態です。
中国市場については生成AIやデータセンター投資が背景にあり、底堅く好調を維持しています。
全体としては、濃淡はあるものの順調に回復してくると見ています。
問われる販売代理店の存在意義
ーーFA市場はこの数年の大きな混乱を経て、メーカーと販売代理店の関係性やあり方が変化してきたように感じます
これまではシェアを獲得するというメーカーと販売代理店による供給側主導のアプローチが機能してきました。しかしそのやり方は、お客様の生の声や本当のニーズを的確に把握し、メーカーの製品開発や販売戦略に反映するのが難しいという課題も内包していました。その結果、この数年の市場混乱の影響を最小限に切り抜け、継続的に伸ばしていけたのは直販体制のメーカーでした。
昔に比べて代理店制度という仕組みは価値が下がっています。メーカーが変革に取り組み、お客様の意識も変わっている今、それにただ流されるのか、それともその変化を活用しながら自分自身の力でビジネスを変え、違う価値を作り出していけるのか。まさに今、販売代理店にはそれが問われています。
社名変更をはじめ変革を強力に推進
ーー実際、販売代理店の活動は活発化している印象です
どれだけ私たち自身が変革に取り組んだとしても、お客様や外からの見え方はそう簡単には変わりません。そのためにも変わったことが目に見えて分かるようにし、自分たち自身でそれを外部に発信することが重要です。
当社も社名を「菱電商事」から「RYODEN」と変え、「RYODEN Tii!」という自社ブランドを立ち上げ、オリジナル製品を展開しています。その成果については、すべてがうまく行っているとは言えませんが、お客様から「RYODENは変わったよね」という言葉をいただくことが増えたのは確かです。
お客様からの問い合わせや商談内容も変わってきていて、以前は機器やコンポーネンツの話がほとんどでしたが、最近はお客様がやりたいことや考えていることを相談してもらえるようになり、そこから色々なニーズを発掘することもできるようになってきました。
価値創造に向けたパートナーシップと領域の拡大
ーー新たな価値創造に向けてどんな取り組みをしていますか?
今、パートナー企業と共にビジネスやシステムを作り上げていく「パートナープロダクト」の拡充に注力しています。
例えば、シンガポールの精密位置決めモーター等のメーカーであるAkribis(アクリビスシステムズ)の日本国内における総代理店権獲得や、北海道でFA事業のM&Aを実行し、同地区での代理店基盤(FA事業基盤)を拡充しました。北海道は一次産業や食品業界の自動化・省力化はもちろん、近年では半導体関連産業の集積、データセンターの進出、GXなど、今後成長が期待できる地域です。
当社はこれまで北海道で食品業界向けの画像ソリューションを活用した自動化ビジネスを展開して来ましたが新しく取り込んだリソースやパートナーシップを活かすことで、新たな市場を開拓できるチャンスだと捉えています。自動化の手が届いていなかった新しい領域へソリューションを届けられる体制が整いつつあります。
デバイス事業で培った「変化への適応力」がFAの強みに
ーーオリジナル製品・ソリューションも次々に展開していて、高い開発力と提供力が発揮されています
当社の場合、FAだけでなく半導体・電子部品などのデバイス事業も収益の大きな柱ですが、そこで養った経験と知見も役立っています。
デバイス事業の世界は、FAの世界よりも早くからメーカーの再編や技術の変化が起き、劇的に変わっていきました。そうした状況のなかでお客様のニーズを満たすためには、国内の主要メーカーはもちろん、海外の多様な半導体・デバイスメーカーの製品も扱わなければ提案が成り立ちません。海外メーカーの製品を扱うとなると、単に仕入れて売るだけでは通用せず、品質の担保、営業体制の構築、欧米やアジアといった文化の異なるメーカーとの交渉などが必要で、早くからノウハウを蓄積し仕組みを整備してきました。
それに対しFA事業は、特定の強力なメーカー製品を扱っていれば一定のシェアと安定した収益を得られる時代が長く続いたため、デバイス事業に比べると変化のスピードは緩やかでした。しかし今、FAにもその激変の波が来ています。そこでデバイス事業で培った「マルチベンダーへの対応力」や「海外材の品質を自社内でしっかり見極める仕組み・管理体制」という強みが生きてきて、他の一般的な商社にはない、我々の大きなアドバンテージになっています。
商社の枠を超えるワクワクの挑戦を
ーー専門人材の紹介やシェアリングを行う「ウィズプロ」などを見ていると、販売代理店の枠を超え、エンジニアリング会社、SIerとも違う独自のビジネスを展開しているように思えます
当社は、メーカーの製品の販売代理以外にも、自社で技術開発を行ってオリジナル製品を開発し、システムインテグレーション、エンジニアリングを行い、さらに専門人財の提案まで手掛け、従来の販売代理店・商社というイメージに捉われず、さまざまなサービスを展開しています。2023年に「RYODEN」という社名に変更したのも、自ら領域を広げて変革していくという強い意志の表れです。
現・中長期経営計画「ONE RYODEN Growth 2029 | 2034」においても、技術開発や人財育成、M&Aも含めた投資に大きな原資を投じています。これまでのFA販売代理店の常識では、大きな投資をして自らビジネスを作り出すという発想は少なかった。しかし、製造業のお客様が抱える人手不足、生産効率化という大きな「社会課題」を解決するためにはリスクを取ったチャレンジが必要で、これからもパーパスである「ワクワク」を体現するような挑戦を続けて行きます。
三菱製品をベースに独自性を付加。唯一無二の相談パートナーへ
ーー今後の抱負など
当社にとっては「三菱電機製品という強力な基盤をしっかりと伸ばしていくこと」が大前提としてあります。システムインテグレーションや自動化・生産効率化の提案をトータルで行う際、ベースとなるシステムには当然、信頼性が高い三菱電機のFA機器を採用し、お客様にとっても品質や保守の面で最大のメリットを提供します。
10年前、当社が「ソリューション」と言い始めた頃は、一部理解が得られなかったこともありましたが、今ではソリューションを開発・提供できる技術を持ち、現場で泥臭くシステムをまとめ上げて、付加価値をつけて売ってくれる存在として理解され、期待もしていただいています。メーカーとしても、現場でソリューションを展開できる代理店でなければ、本当の情報も取れず、FA市場の厳しい競争に勝てないということに気づいているからです。
引き続き、「新しい挑戦を起点としてビジネスの提案領域を広げ、結果として基盤事業である三菱電機製品の導入拡大にも大きく貢献する」という、シナジーのサイクルを回していきたいと思っています。
また中長期経営計画の2年目として、しっかりとソリューションプロバイダーとしての「個(異質化)」を作り込み、3年目以降に大きな成果へと繋げていきます。コンポーネントの強さと、エンジニアリングの自由度を掛け合わせ、お客様からファーストコールをいただき、また選んでいただける「唯一無二のパートナー」を目指して、これからも限界を決めず前進し続けて参ります。




