【FAトップインタビュー】アドバンテック、2026年のエッジAI戦略 フィジカルAI、ソフトPLCの潮流に乗る産業用PCの雄

横見 光 氏
近年、ソフトウェアとAI技術の進化によって日本の製造現場、機械の制御において大きな変化が起きつつある。それが産業用PC(IPC)とソフトウェアPLCを使ったPCベースの制御の本格的な芽吹きだ。いままで制御といえばハードウェアPLC中心だったところから、半導体製造装置やロボットといった先進的な機械・装置でソフトウェアPLCの採用の動きが活発化している。そこへフィジカルAIのブームが重なり、装置自身またはエッジでAIを活用していこうという大きな潮流ができてきている。
産業用PCで世界トップシェアを獲得し、「エッジAI」を提唱・推進しているアドバンテック。現在の市場をどう捉え、どんな戦略で臨んでいくのか。同社のIIoT事業を牽引するインダストリアル IoT統括事業部 事業部長 横見 光 氏に話を聞いた。

日本でもついに動き出した「ソフトPLC」
――最近、国内ではソフトPLC(PCベース制御)への関心が急速に高まっています。この背景をどう分析されていますか。
トレンドとして日本でもようやく動き出したという手応えを感じています。日本でPLC
市場は3000億円程度と言われていますが、これからの5年間で10〜15%くらいはソフトPLCが占めるようになるだろうという人もいます。
ソフトPLCの関心が高まっている理由は大きく2つあると考えており、一つは、半導体製造装置業界の動向です。大手半導体製造装置メーカーが「ハードウェアとしてのPLCは使わない」という方針を打ち出し始めており、装置メーカー各社もこれら巨大ユーザーの要求に応えるため、従来のPLCからPCアーキテクチャへの移行を余儀なくされています。機器メーカーがPCベースのコントローラを強化しているのもこうした危機感の表れでしょう。
もう一つは、昨年11月の「国際ロボット展(iREX 2025)」の際、大手ロボットメーカーのブースで展示されていたように、ロボット制御にソフトPLCのデファクトスタンダードである「CODESYS」を使うということが公式に打ち出されたことです。これは非常に大きなインパクトでした。上位のフリートマネジメントからロボット単体の制御までを同じプラットフォームで動かす流れができ、こうなると「ハードウェアはどこのIPCが良いのか」という議論に必ず行き着きます。
――その受け皿として御社の強みが発揮されるわけですね。
その通りです。
日本市場では、長い間ずっとPLCに慣れていたこともあって、PCベースであると言っても形状や堅牢性、リアルタイム性でPLCと変わらないレベルを要求されます。
私たちは「AMAX」シリーズをはじめ、PLCのような外観を持つコンパクトなコントローラから、ハイエンドなBOX IPC、パネルPC、サーバ型、ボード型まで圧倒的なラインアップの産業用PCを取り揃えています。さらに、グローバルでCODESYS本社と直接契約を結んでおり、OSレベルでリアルタイム性を高めるチューニングを施した状態でハードウェアを提供できます。この「選べるハードウェアの幅」と「即戦力のソフトウェア環境」の両輪が、ほかのIPCメーカーにはない武器であり、当社にとって非常に良い風が吹いています。

販売網の再編 17社の「チャネルパートナー」
――提案や拡販を進めていくには販売店やパートナーとの関係性も重要です
以前は「ディーラー」「リセーラー」といった形で、100社以上の販売店様と緩やかにつながっていました。数こそ多いものの、各社の取り組みの度合いはそれぞれ濃淡があり、市場でパートナー同士が競合したり、どの代理店がどの分野に強いのかが不透明だったりといくつかの課題がありました。
そこで昨年、「チャネルパートナー」制度をつくり、当社と足並みを揃えて積極的に販売を進めていただける全国17社と契約を結び直しました。この制度では有力な販売店との連携を強化し、例えばある有力なチャネルパートナーは、PLC一本だったところから「IPCでの制御」という新しい武器を求めて、今まで以上に密に連携をとるようになりました。同様に、ハードPLCの資産を抱えつつも、変化する顧客ニーズに応えるために弊社を頼ってくるパートナーが増えてきており、大きな変化を感じています。今後は、さらに意識の高いパートナーへの教育やサポートを強化し、単なる物売りではない「ソリューション提案」ができる体制を整えていきます。
「フィジカルAI」と「エッジAI」現場でリアルタイムに判断
――御社は以前から「エッジAI」を提唱していますが、最近は「フィジカルAI」という言葉をよく聞きます。御社が考えるフィジカルAIとはどんなものか教えてください
難しい質問ですが、あくまで私なりの解釈で言うと、フィジカルAIとは「リアルタイム性を持ったエッジ側での意思決定」と言えます。ChatGPTのような生成AIは、Web上の膨大なデータを学習し、推論するものです。しかし、製造現場が求めているのは、今まさに目の前のセンサーから上がってきたデータをリアルタイムで収集し、即座に制御に反映させる仕組みです。
レイヤーゼロとも言われる現場の制御レイヤーは、急に動きが変わっても困るので固定的なアルゴリズムで動き、その一段上の推論レイヤー、さらにその上の学習レイヤーがオンサイトにある状態がアドバンテックの考える「エッジAI」の理想形です。製造現場では、わざわざクラウドにデータを投げて「明日、最適解を出します」では遅いのです。
――御社はエッジAIをどのように実現し、お客様に届けていくのでしょうか
「WEDA(WISE Edge Development Architecture)」というソリューションがあり、WEDAはIPCのハードウェアプラットフォームに加え、SCADAやデバイスマネジメント、コンテナ管理といったコアアプリケーションを提供しています。WEDAは喩えるなら、お客様自身が望むAIアプリケーションを作るための「下準備済みの食材と調味料のセット」のようなものです。IPCを購入してもイチからプログラムを書くのは大変ですが、私たちが提供するWEDAを使えば、短期間かつ低コストで希望のエッジAIシステムが構築できます。NVIDIAのGPUや、最新のNPU、CPUを搭載したハードウェアは世界中のどのメーカーでも作れますが、それを「誰でも使いこなせる」ようにできることが私たちの差別化戦略であり、すでにそれを提案できることが強みです。

メモリ高騰と供給不安への「力技」での対応
――市場環境に目を向けると、半導体やメモリの需給が再び逼迫してるようですが、影響はいかがでしょうか。
正直に言うと、非常に厳しい状況です。一部のメモリやSSDは、前年同期比で価格が数倍に跳ね上がっています。データセンター需要に引きずられ、産業機器向けの確保が難しくなっているのは事実です。
しかし私たちは「高くても買って、お客様に届ける」というスタンスで、「物がないから納期は未定です」と逃げるのではなく、世界中のネットワークを駆使してパーツを確保し、価格転嫁についても丁寧に説明しながら供給を止めない努力を続けています。今はまさに営業と調達の「力技」で乗り切っている最中ですが、これができるのも独立系IPCメーカーとしての強みかもしれません。
2026年、そしてその先へ:スキリングとグローバル連携
――2026年の取り組みとまとめをお願いします
2026年に最も重要なのは、人の「スキリング(教育)」です。IPCやエッジコンピューティングの進化スピードは、従来のPLCの世界とは桁違いに速く、当社の営業もアプリケーションエンジニアも、そしてパートナー様も、絶え間なく知識をアップデートしていく必要があり、そこに注力していきます。
またグローバルでの連携も強化し、今年の6月には台湾でコンピュータ関連の展示会「Computex」が開催されますが、そこに合わせて世界中からパートナーやお客様を招待するイベント「ワールドパートナーカンファレンス」を大々的に実施します。世界中の知見を日本のお客様にフィードバックし、エンベデッド(組み込み)からエッジAIまで、幅広い提案を行なっていきます。8月には東京でも、「Edge.AI Day Japan」を開催し、エッジAIに関するアドバンテックやパートナー企業の最新製品・ソリューション等をご紹介する予定です。
アドバンテックは、単なる産業用PCメーカーではありません。お客様のDXを加速させるための「パートナー」であり、国内のFAメーカーと競合するのではなく、彼らのエコシステムの中で私たちのハードウェアをうまく使ってもらう。そんな「共創」の形を、2026年にはさらに高いレベルで実現していこうと考えています。https://www.advantec-japan.co.jp/
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