今後のロボット開発と国際競争力 ~福島原発震災2011・日本はロボット大国?(SDP3)~③

写真9は、ドイツで公的資金が投入されて2005年に終了したASSISTORプロジェクトで、人とロボットの協働のために4通りの試作機を製作し、実験を実施した。EUでは、公的資金が投入されるプロジェクトは、まずプロジェクトロゴが作られ、インターネットでそのプロジェクトの概要、進行状況、ワークショップ等の実施内容及び講演集等が公開され関係者は情報共有が出来ている。
3.日本のロボット開発と今後

経済産業省関係では1983年から1990年にかけて、極限作業用ロボットのプロジェクトに国家予算が約200億円投じられ、うち原子力発電所用にその3分の1程度が使用され、複数の試作機が製作された。写真10は、当時開発されたRESQロボットを示す。JCOの臨界事故を踏まえて実機の開発も行われた。1991―2000年には、マイクロマシン技術開発プロジェクトに250億円が投入された。写真11は、耐放射線能力を向上させた原子力施設事故時対応対環境型ロボットRaBOTである。1998―2002年には、50億円の予算で人間強調・共存型ロボットプロジェクトが実施された。2005年には愛知万博でサービスロボットが披露され、2006年にロボット政策研究会報告書がまとめられた。

文部科学省の関係では、阪神淡路大震災の教訓を踏まえ2002―2007年、都市災害用のレスキューロボットが15億円の予算で実施された。
福島原発事故に当初、日本製ロボットは導入されなかったが準備はされた。技術的には対応可能であるのに、なぜ今回使用されなかったかが問題である。原発同様に、経済産業省の所轄である。
●関係者の話では、原発用ロボットが開発されたものの、日本の原発では重大事故は起こらないとのことからプロジェクト終了と共に、実機は使途不明となり、活用されなかった。日本の「安全神話」が、技術開発の芽をつんでしまったとも解釈できる。
●結果、そこに投入された税金は無駄遣いであった。更に、無人機については、例えば日本でもYAMAHAが写真13のように複数の機種を開発している。当社は無人ヘリコプターを軍事用として輸出したとして、告発された。アメリカの場合は制限なしに、かつ軍事目的を出発点として、最新の科学及び技術の知見が投入され、かつそれを民生利用により産業界が経済活動を促進する図式が成り立っているが、日本の場合、前述の理由により輸出については制限がかかり、国内の場合でも、適応現場が皆無となりビジネスとしては殆ど成立しない。

●日本の場合、以前東芝機械のココム違反事件等に見られるように輸出貿易管理令により、戦略物資に該当するものは輸出できない。

ロボット開発に関連する行政として、経済産業省はロボット開発全般、総務省はコミュニケーションロボット及び消防ロボット、文部科学省はレスキューロボット、農林水産業は農業用ロボット、厚生労働省は介護・福祉ロボットと複数省庁が関連しており、縦割り省庁の弊害とロボット予算の細分化はいなめない。アメリカ国防省によるロボット開発の一元化とは様相が異なる。(つづく)

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