
リタールの盤用クーラー「Blue e+」は、業界初のハイブリッド冷却方式による高い省エネ効果が特長の同社の主力製品だ。このほど全機種でノンフロン化を完了し、輸出向け機械を中心に懸念されている欧州Fガス規制の強化に対応。さらに、極めて深刻と言われる工場やプラント等での保全業務の人手不足に対し、点検・メンテナンスの手間を減らした工夫を盛り込み、「保全に優しい」盤用クーラーとして現場から好評だ。
そんな盤用クーラー「Blue e+」について、同社プロダクトマネジメントグループ プロダクトマネージャーの何 夢菲 (ヘ メンフェイ)氏に聞いた。
EUでのFガス規制厳格化を前にノンフロン需要が活況
――最近、話題になっている「Fガス(フッ素系ガス)規制」とはどんなもので、制御盤にはどんな影響があるのでしょう?
Fガス規制は、 2006年にEUで施行された、地球温暖化係数(GWP)の高いガス、特にフッ素系ガスの使用を段階的に削減するためのEUの規制で、2050年にフッ素系ガスの使用の全面廃止を目指しています。盤用クーラーをはじめ、冷凍機やチラーなど、冷媒を使う機器も対象となっています。
2024年の改正により、2027年1月1日以降はGWP150未満の製品以外、EU諸国では販売できなくなるというルールへと厳格化されました。日本ではかなり前からノンフロン化が進んでいて当たり前のような感覚ですが、欧州はじめ世界はそこまで進んでいなかったのです。

2027年1月を目前に控えた今、機械や装置メーカー、盤メーカーは対応に追われている状況で、日本でもEU向けに装置を販売している工作機械や装置メーカーなどから、Fガス規制に対応し、かつ各種の国際規格にも適合した盤用クーラーに対する需要が急激に高まっています。
そのため当社でも、主力である盤用クーラー「Blue e+」全機種の冷媒をノンフロンに切り替え、従来の機能や省エネ性能はそのまま保持しながら、Fガス規制に対応しました。


――全機種ノンフロン化に対するユーザーの反応はいかがですか?
以前の「Blue e」シリーズでも一部の機種でノンフロン対応機がありましたが、あくまで特定のラインナップのみでした。性能も最新のBlue e+に比べて低く、お客様からは「早く最新のBlue e+シリーズをノンフロン化して欲しい」という声はずっといただいていました。今回、汎用機はもちろん、ステンレス仕様や耐振動、耐腐食ガス仕様、屋外用といった特殊仕様のものも含めたすべての機種でノンフロン化を達成し、多くの反響をいただいています。
ハイブリッド冷却とフィルタレス構造、ノンドレン機能を搭載
――改めてBlue e+シリーズの特長を教えてください
Blue e+シリーズの最大の特長は「省エネ性能」です。従来のインバータ制御によるコンプレッサ冷却に加え、ヒートパイプ冷却回路を搭載したハイブリッド冷却方式を業界で初めて採用し、周囲の温度が盤内温度より高い時はコンプレッサ冷却でクーラーとして、周囲の温度が盤内温度より低い時は、ヒートパイプが空冷式熱交換器として機能し、従来品から最大75%の省エネを実現しています。インバータによるPID制御で内部の温度を一定に保つことができ、内部機器の保護と長寿命化にも有効です。
また「フィルタレス構造」と、全機種標準としてついている「ノンドレン機能」も特長的です。
通常、盤用クーラーには内部に埃などが入ってこないようにフィルターマットを取り付けますが、Blue e+シリーズはフィルターレスでフィルターマットがいらない構造となっています。
内部の凝縮器には熱交換用に薄いフィンがたくさんあり、そのフィン表面に特殊な疎水性コーティングを加工し、埃や油分が付着しにくくなっています。そのため通常環境であればフィルターマットを使う必要がなく、定期的なフィルタ交換がいりません。定期メンテナンスの時にブロワーで埃を吹き飛ばせばそれで掃除が完了し、メンテナンスの手間を大幅に減らすことができます。
ノンドレン機能は、内部にドレン水蒸発器(ヒーター)を搭載し、冷やす過程で発生したドレン水(結露水)を集めてヒーターで蒸発させ、空間の外部循環排気口から外へ排出する仕組みです。
通常の盤用クーラーだとドレン水を回収容器に溜めている場合は定期的に処理しなければなりませんし、ホースで排水している場合も管理やメンテナンスの手間が発生しますが、Blue e+シリーズではそれが不要になります。またドレン水に含まれる不純物によってホースが詰まるような面倒なトラブルも避けられます。
深刻化する保全人材の不足への解決策 保全に優しい盤用クーラー
――近年、保全部門の人手不足は深刻だと言われています。その点、Blue e+シリーズのメンテナンスの軽さは魅力的ですね。
まさにその通りです。
経営層やエネルギー管理を担当する方には、省エネ性能やCO2削減といった切り口が響くのですが、実際の現場で機械を動かしたりメンテナンスをする担当の方には「ドレン処理が不要になること」「フィルタレスで掃除が楽になること」の方が喜ばれます。
最近はどの工場でも保全担当の人数が減っており、人手不足が深刻化しています。盤の状態を見るだけならIoTで遠隔から監視をすれば良いですが、フィルタ交換をしたり、ドレン水を捨てに行ったりする作業は、人間が現地に行かなければできません。そうした手間がないのは、Blue e+シリーズの大きな強みとなっています。
また、最近は人型ロボットが登場し、保全業務も人型ロボットにやらせれば良いということを言う人もいますが、人型ロボットが現場を巡回するようになるのは、かなり先の話か、あるいは人型ロボットが破格の値段で導入できるようにならない限りはあり得ません。
エネルギー問題や脱炭素も大切ですが、今の現場はとにかく「日々の運転コストや保守の手間をいかに減らすか」という目先の現実論に直結するソリューションを求めています。現場のトラブルや余計な点検作業を減らせることの方が保全の方にとっては大きなメリットになり、人手が足りない現場ほど、このBlue e+シリーズの「メンテの手間がかからない」という価値が生きてきます。
周囲温度は最高60℃まで対応 高温環境に最適
――このほかBlue e+シリーズの強みやユニークな点は?
Blue e+シリーズは、標準で周囲温度最高60℃まで対応しています(※天井取り付けなど一部機種は55℃)。一般的な盤用クーラーですと55℃までのものが多いのですが、60℃まで耐えられる点が強みです。
食品工場でボイラーを焚いている場所や鍋で熱湯をグラグラ煮立たせている現場、あるいは熱処理を行うプロセス系の工場、さらには屋外近くの高温多湿な環境など、高温環境はたくさんあります。最近では、半導体材料や化学メーカーなどのプロセス系投資が非常に活発で、巨大な装置の周辺や敷地内で高温環境に晒される盤が多く存在します。そうした「熱気が凄まじく、かつ人手がいなくて頻繁に保全に行けない」プロセス現場には、大容量・高耐熱・メンテ軽減のBlue e+シリーズはとても適しています。
また近年は物流倉庫でも猛暑による室内温度の上昇が問題視されており、内部の電子機器の劣化を防ぐために温度管理を徹底する動きが出ています。そうした多様なニーズにも幅広く対応できます。
また、冷却能力が大型の2500W以上、さらには4000W、最大で5500Wといった大容量モデルまで標準で揃えているのも当社ならではの特長です。複数個の盤を繋いだ大型連結盤や、大型の工作機械、さらには最近需要が増えているESS(産業用蓄電池システム)など、大量の発熱を伴う設備に使われています。
――そのほかの機能では?
Blue e+シリーズは、スマートフォンやタブレットと連携できるNFC機能を搭載し、専用アプリを使うと、外部からスマホやタブレットをかざすだけでエラーの有無や設定状況の確認・変更が可能です。近年は現場で作業手順の入力や点検のためにタブレットを持ち歩く保全スタイルが増えていますので、そこに弊社のアプリを追加で入れていただくことで、より現場での確認作業がスムーズになります。
世界中で安心して使えるグローバルサポート体制
――今後に向けて
弊社は盤用クーラーをグローバルで展開しており、世界各国に子会社やサービス拠点、パートナーネットワークがあります。国際規格にも幅広く対応していますので、日本の装置メーカー様が海外へ機械を輸出される際も、現地のサービス拠点で安心してサポートを受けることができます。
日本のお客様からは「早く全機種でノンフロン対応の省エネクーラーを出してほしい」という強いご要望をいただいていましたが、欧州のFガス規制の本格化に伴い、ようやく自信を持ってお届けできる全機種ノンフロンの「Blue e+」を用意することができました。省エネ性能、現場の保全負荷軽減、そして海外規制対応とグローバルサポート。この3つの柱で、お客様の製造現場や製品の競争力向上に貢献していきたいと思っています。 https://blog.rittal.jp/nf_cooling_units





