令和の販売員心得 黒川想介 (158)

電気制御の知識や制御商品の技術的一面に明るいといっても、FA販売員はいっぱしの「商人」である。
FA販売店営業にはセールスエンジニア的販売員をよしとする傾向がある。セールスエンジニアは、同じ方向や領域にあるマーケットでルートを広げていくには最強かもしれないが、方向の異なるマーケットのルートを開拓するには適さない。新たなマーケットのルート開拓に乗り出すには「商人」としての偏差値が高くなければならない。商人は、技術と向き合うエンジニアとは違い、人と向き合う「対人関係業」である。したがって販売員が商人偏差値を上げるには、人間である自分を磨くことが必要となる。
自分を磨く心得の1つ目は「向上心を持ち続けること」である。これは具体的な行動もなく、座右の銘として頭の隅に置いておくだけでは何にもならない。
販売員の営業活動を見ていると、1ヵ月の活動予定表を自らの意思で作れている販売員はほとんど見られない。研修や会議、進行中の商談や納期打ち合わせ等の受け身的な予定が手帳の月間予定表に書かれているが、営業本来の積極的な売り上げ活動に費やす日々を月間予定表に記載して行動している様子はない。
向上心は日々の活動に裏付けされてなければならない。だから販売員が「向上心を持つ」ということは、明確な目標の下に計画を立て、それを遂行することである。計画を実行していく過程で、計画を変更しなければならない仕事が発生することもある。計画の変更によって目標をどのようにクリアすべきかを悩みことを通じて、「仕事の調整力」や目標に匹敵する「代替案の作成力」が身に付いてくる。
それに、計画を達成した時に味わう高揚感は、計画に対する「遂行力」を育む。だから、「向上心を持つ」ということは何か特別の勉強しなければならないと大げさに考えることはなく、本気の目標を持ち、それを達成するための計画を立て、計画に沿って行動する。そして達成したときの高揚感をバネにする。これを繰り返すことが向上心を育むことになるのだ。
心得の2つ目は、販売員として「豊かな心を育むこと」である。販売員は見込み客にアプローチする時、値踏みされることは多々ある。しかしそれは話の内容だけで判断されるのではない。販売員の表面に現れる様々な情報で判断される。
誰でも最初のアプローチは緊張する。緊張すれば無意識に出るのが本人の人柄である。いくら取り繕っても見えてしまうのが人柄であり、この人柄こそが、心の豊かさの表れなのだ。緊張してなくても人は相手を判断するのに3分とかからないと言われているが、まさにその評価が人柄であり、心の豊かさの発露なのだ。
最初のアプローチで相手の思惑から外れてしまうことがあっても、次回も会ってもらえるチャンスを作ることができるのは人柄のおかげである。次に会うまでのの間に体制を立て直すことができる。人柄は新たなルートを開拓するにはなくてはならないものなのだ。
豊かな心を育むには、美的、知的、道徳的な教養を収めることなどのように、難しく考えるのではなく、営業活動をする中で販売員として豊かな心を育てることである。それは顧客から学び続ける「探究心」「好奇心」を持つことなのだ。顧客を知れば、尊敬もし、感動も顧客の心の立場に立てる。それが心の豊かさとして現れるのである。
心得の3つ目は、制御商品を扱う以上は「精緻なる論理をないがしろにしないこと」である。セールスエンジニアから商人としての販売員へ軸足を移すといっても、販売する商品の性質上、電気の基礎や制御技術の基礎知識は身に付け、メーカー研修や顧客からの案件を通じて、しっかり基礎を理解することが大事。難しい領域まで入らずとも、顧客に相槌を打てることが必要なのである。そのためにも電気の基礎知識や制御の基本知識はなくてはならない。

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