令和の販売員心得 黒川想介 (147)社会は常に変わろうとする必要な情報見つける能力を

電気制御商品を扱う工業会で、通称「NECA」の名称が「日本電気制御機器工業会」から「日本電気制御技術工業会」に変わった。その狙いは、制御機器単体で顧客に貢献するだけでなく、制御技術で顧客の持続的成長の推進力となり、社会に貢献すると言うものである。したがってNECAの活動の範囲は広がっていくことになる。制御商品を主力とするFA販売店営業も、今後はどのように活動を広げていくのかが問われることになるだろう。
FA販売店営業は、取り扱いメーカーの影響を強く受けて、これまではメーカーと同じ歩調をとって成長してきた。NECAが活動を広げる背景には、制御技術に絡む情報技術の進展や社会の変革があり、製造業の現場でも、デジタル化の加速やますますソフトが重要なファクターになっていくことへの対応である。
日本電気制御機器時代のFAメーカーは、戦略的に同じ方向へ向かって活動を進めてきた。つまり製造機械や機器の制御部をターゲットにして発展し、平成期には一部情報を制御する機器の分野にまで進出している。
令和に入る頃には、無人工場を想定して、人の作業に代わるロボットや生産を効率的に管理するITソリューションへと進んでいる。このようなロボットやシステム需要は、制御コンポーネントと言うよりは、制御技術がふんだんに使われている1つのFA製品である。制御機器から制御技術に名称変更した1つの理由になっている。
しかし名称変更はあくまでも活動範囲を広げることにあるようだから、FAマーケットの捉え方によっては各メーカーの商品構成に変化が出てくるだろう。
これまで述べてきたように、FAマーケットを1つのものとして捉えることはできなくなっている。NECAは2030年を見据えて、ビジョン実現に向けた具体的な取り組み方針を発表している。①People(人材開発・獲得)、②Productivity(生産性向上)、③Perspective(視点変換)、④Partnership(共創)の4つを具体的な重点項目にして活動範囲を広げることになっている。
FA販売店営業は、これまで主として制御機器を製造業の製造現場に販売してきた。FA販売店営業は、これらの項目を参考にして活動を広げることにしても、制御技術を磨いて顧客に貢献するわけではない。商人は技術ではなく、情報で勝負するのであるから、制御技術が活用できるマーケットを探すことである。
社会は常に変わろうとしている。社会の変化には、制御技術が必要な製品やサービスソフトが増えるだろう。したがって①Peopleである人材開発は、販売店営業にとっては、案件待ちの営業から氷山の下で活動している開発設計者と知り合いになる営業をするためのスキル開発が課題となるだろう。あるいはソフト付きの制御商品を売るスキル開発なども必要になるだろう。②Productivityである生産性向上に関しては、販売店営業は製造現場の最前線にいるのであるから、多品種少量精算で苦労する製造管理の実態情報を入手する機会は多い。これまでの営業は、生産技術を通して案件と言う形で情報を入手した。しかしFA販売店営業は形になっていないソフト付き制御コンポーネントを現場で見つけることが重要になる。そのような情報入手営業を活発化する必要がある。③Perspectiveは視点転換である。社会の変化、技術の変化によって製造現場の環境は変わる。そうすれば制御技術が入り込むマーケットが変わる。それを見つける情報感性がFA販売店営業には必要になる。④Partnershipパートナーシップは、販売店営業の強みは情報に接する最高の位置にいることだ。この強みの活かし方は、かつて省力化の店と共同して現場対応したように、営業を持たない小規模ベンダーの営業の役割をすることもその一つである。

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