不連続戦線に異状なし 黒川想介(24)

産業界に部品やコンポ商品を販売する営業戦線は、時代によって本質的に変化してきた。草創期では「顧客の人脈や個人の身上を知らないで物なんか売れるか〓」の時代を経て「商品の技術的側面を知らないで物なんか売れるか〓」となり、「顧客のことを知らなくて物なんか売れるか〓」の次に「競合他社のことを知らなくて物なんか売れるか〓」という流れで経過してきた。このことは、その時代に何が一番大事だったかということを言い得ている。

現在の営業では顧客の満足を得るために、ご提案・アプリケーション熟知・システム提案・課題解決など、さまざまなことをやっているが、本質的に言うと「競合に勝たなくて物なんか売れるか〓」という営業戦線の様相が見える。アレクサンダー大王の戦い以来、勝利の条件は明確な戦略に基づき相手を見て戦術を立て、布陣を決め、あとは戦闘力を頼みにして戦うことであった。

営業戦線も草創期以来、売上げ達成という勝利を目指して活動してきた。各社ともそれぞれの戦略があって活動をしてきたのであろうが、業界全体の根底にあったのは前述したように「何々をしなくて物なんか売れるか〓」という無意識の時代認識で活動してきたのだ。

草創期では、販売員とは世間でよく言う押し売りのイメージがついていて印象の悪かった時代であった。そのため人脈を頼って売っていたし、購入者の感情をくすぐって売上げを挙げていた。そのため人脈や身上調査に焦点を当てなければならない時代環境だった。その後、時代が進み日本経済は成長期の真っ只中に入ってくると次々と製品が生まれ、製造も次々と新しい整備を導入した。販売員は押し売り的存在ではなくなり、むしろ顧客にとって有用となった。販売員は顧客に有用と思われて売上げを挙げたいため、自分たちの商品のことをよく勉強しなければならなかった。それで「商品の技術的側面を知らないで云々」という空気が流れていたのだ。

製造工程で一番多くの自動機を使って生産しているのは日本であるという評価が新聞紙上を飾っていた頃には、主だった部品やコンポ商品は出そろっていた。拡大する市場から部品やコンポ商品の注文が舞い込み、営業戦線の現場は余裕を持つことができる。それでも営業は常に拡大を目指す習性がある。そのような局面に立っても、もっと売りたいと思うものである。

この時代に商品は出そろったが、もっと売るために商品・コンポ商品の使われ方を知って、他の顧客にその使われ方を横展開する活動が広まっていった。その時代には「顧客のことを知らなくて物なんか売れるか〓」という戦略的感覚が営業戦線に流れていたのである。

部品やコンポ商品のアプリケーションを顧客に広げていく過程で競合他社の動きが目につくようになった。競合他社の商品力や顧客に対する対応力が気になり出した。競合他社と比較し、弱点は補強し、強みはさらに伸ばそうという時代に入っていった。

その頃には日本の経済力は最盛期を迎え、製造業の海外進出の時代に入った。部品やコンポ商品の輸出の比率は高まり、国内のGDPが足踏み状態に入ると競合相手との競争が一段と激しくなった。

国内市場は広がらないため当然のことであるが、顧客が採用している部品やコンポ商品を自社の扱うものに切り替えてもらおうとする活動に血道をあげるようになった。

今や「競合に勝たなくては云々」という時代は最終段階に入っている。その証拠に、各社とも競合叩き内容のキャンペーン三昧に明け暮れているからだ。次の時代の空気はどんな流れになるのだろう。もうすでに「何々をしなくて物なんか売れるか〓」の何々を明確にして活動に入っている企業が出てきている。
(次回は7月15日付掲載)

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