オートメーション新聞N0.403を発行!24年度のFA・制御機器市場まとめや主要各社の24年度決算など掲載中

令和の販売員心得 黒川想介 (135)内向きから外向き情報へ 未来の「顧客」はすぐ隣に

FA営業が売り上げを上げるには、顧客深耕、競合商品の切り替え、新商品拡販等の活動をテーマ化して進捗管理をする施策が一般的に普及している。しかしこれまで述べてきたように、これらの活動だけでは持続的成長は望めない。だから営業にとって一番重要な活動である新規顧客の開拓活動に重心を移さなくてはならない。
しかもFAマーケットにおいて増やさなくてはならない新規客とは、従来とは一味違う新マーケット上にあるということだ。新しいマーケットといっても、これまで活動してきたFAマーケットと全く別物と言うわけではない。すぐ近くにあるのだが見ようとしないと意外に気づかない。その理由は、販売員の情報入手が「内向き」だからである。
内向き情報とは、入手しやすい人からの情報である。例えば、取り扱いメーカー営業からの情報であったり、気軽に訪問して談笑ができる顧客からの情報のことである。これらの情報が内向きと言われる情報である事は、ほとんどの販売員は気づいていない。
中堅の販売員に「売り上げが持続的成長トレンド上にない時、あなたはどのような手を打つか」と聞いてみた。十人が十人の回答は「情報を広く集めて対策を練る」と言うようなものであった。さすがに中堅販売員は情報の重要さがわかっている。
しかし実際には、それらの情報こそが内向き情報なのだ。つまり情報の入手しやすい相手は、販売員の事情がわかっているので、営業が欲している情報を開示する。結果、集められる大半の情報は販売員の売り上げの機会に関するものになる。そうして集められる情報が内向き情報であれば、その強化策は従来からやっている営業施策の上にあれやこれやと追加するものとなる。
売り上げが持続的に成長していないと感じるのは、現状で飯の種になっているマーケットが今までとは違いつつあるからである。だからこそ内向き情報とは対極にある「外向き情報」の入手に挑戦しなければならないのだ。
1つ目の外向き情報は、気軽に会えない人からの情報である。例えば、普段会えない開発技術者や、制御部品や機器を直接購入していないが間接的に影響力のある製造管理者や工場業務に携わる人たちである。
仮に、これらの人に訪問できても商機のためにの情報を探ろうとすれば、相手は尋問を受けているような気分になる。情報を入手できるようになるには、信頼の一片を得られなければ無理だ。だから1つ目の外向き情報入手は、新規客から信頼を得るためのアプローチの問題なのだ。簡単そうに見えるが多くの経験をしてないと難しい。
2つ目の外向き情報入手は、以前述べたように「顧客の一次店である」という自覚を持って顧客情報を入手することである。メーカーの一次店になるには、メーカーのイロハを学ぶことであり、メーカーの側に立って営業活動をすることである。顧客の一次店として自覚を持つこととは、顧客のイロハを学ぶことであり、そして「顧客の立場に立って」営業活動をすることである。
販売員は「顧客のために」営業活動するものだと自覚しているし、情報入手もその一環であると言うが、「顧客のために」と思って情報入手するのと、「顧客の立場に立って」情報入手するのは別物だ。販売員は、顧客の真意を図るのが難しいから経験に基づいた仮説に頼って「顧客のために」と考える。だから我田引水的な情報提供になるし、都合の良い情報入手をする。しかし販売員が顧客の一次店であると言う自覚を持って顧客の立場に立とうとすれば、まずは販売員が顧客に関して持っている仮説が正しいかどうかの検証質問から会話を進めるであろう。そしてその真意を汲み取ろうとする。
その真剣さが相手に伝われば、コミュニケーションは活発になり、お互いの理解は深まる。然すれば真の情報に出会うことができるようになるだろう。