【提言】オレンジ世代のサラリーマン 国際社会・IoT社会の「ゆでガエル」〜日本の製造業再起動に向けて(39)

第4次産業革命による急激な産業構造変化が起きている。海外、特にアジアで急速発展する中堅・中小製造業での変化を目の当たりにすると、日本の将来に強い危惧を覚えるのは筆者だけではないはずである。

日本では、40歳代ー50歳代の働き盛りの人々を『オレンジ世代』と呼ぶ事がある。『オレンジ世代』の明確な定義はないが、一説によるとスマホが台頭する昔、夕方の通勤電車でオレンジ色の『夕刊フジ』を読んでいた若者の世代を総称するらしい。今や『オレンジ世代』は、各企業の幹部社員として屋台骨を支えている年代である。『オレンジ世代の活躍が、日本の明るい未来を切り開く』と言っても過言ではない。今回は、オレンジ世代に焦点を当て、特に製造業における課題と対策を論じていきたい。

先に結論から述べると、オレンジ世代は戦後日本社会が経験したことがない、重大な問題を抱えている。中国やアジア各国の製造業進出や、第4次産業革命が進行で『風雲急を告げる』状況の日本の製造業にとって、『IoT化は待ったなし』であり、オレンジ世代の強力な指導力が必須である。しかし残念なことに、この使命に立ち向かうオレンジ世代の力強さはあまり感じない。特に大企業に働くオレンジ世代のサラリーマンは、国際社会・IoT社会を激しく生き抜くエネルギーが徐々に消滅しつつある。

半面、アジア各国の40歳代ー50歳代の幹部社員は非常に優秀でエネルギッシュな人材が多い。日本のオレンジ世代と比較し象徴的な違いの一つに、英語によるコミュニケーション力の違いが指摘できる。アジアの大企業で、英語の不自由な幹部社員はほとんど見当たらない。台湾やタイなど比較的英語力の低い国でも、アジア大企業の幹部社員が欧米人と対等に会話し、エネルギッシュに情報交換しながら、インダストリー4.0やIoTの国際潮流を理解し、先頭に立って推進する姿を多く目にするが、日本のオレンジ世代は英語が不得意。英語試験の成績優秀者もコミュニケーションはとっても不得意。企業内に閉じこもり、内向思想で鎖国状態そのもの。押し寄せるイノベーションを知らない『ゆでガエル』の一因となっている。

また、人生ステージに関する共通概念-すなわち、①大学まで「教育を受ける」ステージ②会社に入社し「仕事をする」ステージ③定年になり「引退する」ステージ、といった『皆と同じ決められたステージを歩むことがサラリーマンの人生である』と皆が信じ切っているが、これが既に通用しなくなっている事に気が付かず、オレンジ世代のサラリーマンもこの概念に洗脳されたままである。「教育を受ける」「仕事をする」「引退する」といった人生ステージは、『就職を目的に大学に進学し、引退を目的に仕事をする』という価値観を醸造し、『労働対価は権利、年金も権利』という生産性のない概念が一般化するので、国際競争からは脱落し、IoT社会の人生設計には通用しなくなる。オレンジ世代のサラリーマンが受けている洗脳を解かねばならない。

平均寿命が100歳時代を迎えようとしている今日、新たな人生ステージの設計と実行が必要であるが、残念なことに、洗脳により『引退と年金生活を待ち望む50歳代の若きサラリーマン』が増殖しているのが現実である。オレンジ世代は、経験豊富な貴重な人材であるにもかかわらず、引退を待ちわび、何もせず無気力のまま労働報酬を得ようとするオレンジ世代サラリーマンも多く存在する。国際競争力を失っていく日本企業の悲観的実態であるし、引退後がバラ色でないことを知っているオレンジ世代サラリーマン自身の悲劇でもある。

オレンジ世代のもう一つの課題は、「学び」「自己研鑽」の欠如である。海外では、自己研鑽には大変熱心である。欧米社会で定着した『リカレント教育』とは、キャリアアップのために生涯に渡って就労しながら教育を受けていく事であるが、日本では教育は人生の最初のステージのみ。『勉強は学生時代の事さ…』と、すっかり自己研鑽を忘れ、学びを忘れたオレンジ世代が、国際社会やIoT社会を生き延びることはできないのは当然である。

世界の構造がIoTで激変する今日、日本の製造業が国際的競争力を持ち、明るい未来を開くための『オレンジ世代』役割は非常に大きく、オレンジ世代の活躍に依存しなければならない。

では、オレンジ世代が活躍し、輝かしい日本製造業の未来を創り出す戦略は何か? オレンジ世代はどう変わり、何を担えば良いのか?…ここに一つの答えがある。

その一つは、『兼業のすすめ』である。サラリーマンとしての仕事を持ちつつ、定年のない兼業を同時に行うことである。社内規約や法的解釈も優位な方向に変更され、この環境が整いつつあるが、今からやらないと間に合わない。業種の違う中小企業のIoT化を推進する仕事などを積極的に探し、週一定時間以上のもう一つの仕事を同時にこなすことで、学びと自己研鑽が生まれる。猛烈社員に一変するが、これが引退のない明るい未来の構築条件である。

2つ目は、ボトムアップIoTの橋渡しを担うことである。ボトムアップIoTとは、インダストリー4.0のように上流から破壊的に革命を起こそうとする『トップダウンIoT』ではなく、製造現場の現状・ノウハウをベースにIoT化を推進する考えであり、日本に最もマッチした仕組みである。

日本には古参技能者による製造ノウハウの宝庫というべき財産がある。オレンジ世代は、『古き60歳代以上のアナログ世代』と『若き30歳代以下のデジタル世代』の中間世代であり、『アナログとデジタルの融合世代』がオレンジ世代と言っても過言ではない。

オレンジ世代は、ボトムアップIoTを実践する最良の環境にいる。

私のよく知っているオレンジ世代の一人は、大企業で30年以上働いてきたが夢も未来もない。彼は今、家の近くの中小製造業に請われボトムアップIoTの推進を担っている。中小製造業の業績は急成長。彼も引退のない生涯のやりがいを得た。

これが日本の中小製造業再起動の切り札の一つであると思う。

 

◆高木俊郎(たかぎ・としお)
株式会社アルファTKG社長。1953年長野市生まれ。2014年3月までアマダ専務取締役。電気通信大学時代からアジアを中心に海外を訪問して見聞を広め、77年にアマダ入社後も海外販売本部長や欧米の海外子会社の社長を務めながら、グローバルな観点から日本および世界の製造業を見てきた。

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