FA制御機器流通 堅調さ持続 リーマンショック前の水準に

FA制御機器流通は、昨年秋からの上昇基調を、消費税増税後も維持してきていたが、ちょうど約1年を経過したこともあり、8月以降は安定した推移に変化を見せている。

制御機器、電子部品によって山谷が多少ずれている面があるものの、2008年のリーマンショック前の水準に戻ることは、ほぼ確実なところまで回復してきている。

為替が円安に振れたことで、輸出環境には大きな追い風になって売り上げ増加につながったが、内需もインフラ関連、PV(太陽光発電)関連、スマートフォン・タブレットPC関連、自動車関連などの需要が牽引して、輸出とほぼ同じような堅調さを維持している。

■健全な在庫状態で推移
日本電気制御機器工業会(NECA)の制御商社在庫循環図によると、制御機器の在庫は昨年6月を境に在庫調整から在庫積み増し局面に入り、7月以降、急速に流通在庫は減少。今年に入り1月以降も在庫を積み増したが、消費税増税の前倒し需要も加わり、在庫が減少した状態を維持してきている。現在も在庫を積み増す傾向にあるものの、在庫はさほど増えておらず、健全な在庫状態で推移していると言える。

■電材商品の動き活発
国内ではPV関連が大きく牽引しており、省エネ対応でのLEDの普及、電力消費状況の見える化周辺機器なども堅調で、2桁近い伸びを確保している。

これに加え、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催決定や、東北の震災復興需要などで、社会全体のインフラ整備投資も今後大きく増加が見込まれていることもあり、電材系の商社では予想以上に売り上げが伸長している。

人手不足やあらたな市場開拓として、ロボット販売にも注力しようという動きも強まっている。

■欧米市場へアプローチ
輸出も、円安もあり追い風と言えるが、海外の現地生産が進んだことで、地産地消が定着しており、予想よりは伸びが低い。欧米の景気回復もあり、ターゲット市場は中国を中心としたアジアだけでなく、欧米市場へのアプローチを強める商社も目立ってきた。

先行きに多少の不安感を抱えながらも、地域、業種、ソリューションなどを点検しながら、各社商社の特徴、力量に応じた取り組みで、売り上げを落とさない取り組み進めようとしている。

■関東地区 東京オリンピック関連投資に期待
関東地区の流通は、今年7月頃までは、消費税増税の影響を大きく受けることもなく、前年同期比10%前後の売り上げ増を確保している商社が多い。8月以降も電材関係は堅調拡大を維持しているが、電子部品、制御機器では前年同期の売り上げが良かったこともあり、伸び率が鈍化しているところがあり、多少警戒感が出ている。市場をけん引してきたPV(太陽光発電)の先行き不透明感が影響しているが、それは一部で、大半は2020年の東京オリンピック・パラリンピック関連の投資に期待を寄せている。オリンピック関連施設の建設に加え、1964年の東京オリンピックから50年を経過し、この頃建設したインフラ設備をリニューアルする動きが加速している。工場も新設は大きく見込めないが、設備のリニューアル投資は確実に見込め、国内の需要増につなげようとしている。

ただ、国内市場は過去のような大きな成長が見込めないだけに、流通商社にとってはさらなる工夫が求められる。インターネットの普及でネット通販が制御機器や電子部品にも浸透しつつある。流通商社にとっては、ある意味で競合が増えたことになり、売り上げに影響を与えることになる。ネット通販への評価はそれぞれの立場で分かれるが、ユーザーの利便性に対し商社がどう対抗できるかが鍵となる。商品の選定提案や、アッセンブリなど、ネット通販にはできない付加価値がひとつの対抗策となる。しかし、小口対応や調達ルートなどからネット通販と共存を図ろうとする動きもある。

日本一の電気街である秋葉原では、28の商社が共催で11月7日に「アキバエレショー」の開催を予定している。メーカー77社が出展し、秋葉原の店頭販売額が減少している中で、電子・電機部品を一堂に展示することで、秋葉原の供給力をアピールし、秋葉原地区の底上げをはかろうとしている。

また、秋葉原では共同物流に向けたテスト的な取り組みも行われている。秋葉原地区では商社間取引が多いことから、ヤマト運輸と連携し、外神田地区の希望商社がそれぞれの配送商品を1カ所に持ち寄ることで、ピッキング作業や伝票枚数などを減らし、配送コスト削減や環境負荷の減少などを図れるかを試験している。その成果はこれからであるが、在庫をうまく動かすことで、メーカー、商社を巻き込んだ新たな流通構造につながる可能性も期待されている。

一方で、海外メーカーも日本市場へのアプローチを強めてきており、流通商社もその一端を担うことを期待されている。海外製品に的を絞った通信販売やカタログを制作している商社もあり、ユーザーへの選択肢を増やす取り組みとして注目される。

海外の販売拠点を増やす商社も増えているが、商品販売よりは、エンジニアリングや顧客サポートを狙いとする傾向が強い。商社の有する技術力と商品調達力が、商品というつながりからアドバイザー的な存在として期待されている。

■中部地区 市場創出へグローバル化推進 高付加価値品を提案
中部地区の経済動向は、日本銀行名古屋支店によると、基調としては回復を続けており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も、幾分ばらつきを伴いつつ全体として和らいできているとしている。

中核の自動車産業は、トヨタ自動車の国内販売が4月の消費税増税に伴う駆け込み需要の反動で減少したが、好調な北米市場と欧州市場の販売増で補完している。

こうした販売動向と好調な企業業績を受け、設備投資は期初より堅調に推移。セラミック、電気・電子・半導体、工作機械関連企業においても、景気の持ち直しを受け、需要は改善傾向にあり、総じて設備投資は前年比増加するものと見込まれる。

主要プロジェクトとしては、リニア中央新幹線、新東名高速道路などの交通インフラのほか、名古屋駅前再開発として、高さ200メートル前後の超高層ビル「大名古屋ビルヂング」「JRゲートタワー」「JPタワー名古屋」の3棟が2016年頃までに完成する予定で、オフィスや商業施設など、約60万平方メートルものスペースが生まれ、経済活性化につながりそうだ。

こうした背景のなか、中部地区のFA制御流通商社では、顧客のニーズの把
握、問題解決に取り組みながら、付加価値の高い製品、新事業関連の新製品を顧客に提案、システム化された多彩な製品を供給、グローバル体制の強化も続けている。

顧客の海外進出に連携して、海外での事業展開に注力するのは必須で、海外でのSEの育成、協力メーカーの発掘、国内からの支援体制構築、海外におけるエンジニアリング体制の強化や、現地調達企業の発掘、パートナー企業との提携、海外の新商材輸入など様々な施策で海外事業を強化している。

現在は円安傾向にあり、海外から部品を調達していた商社にとっては、厳しい状況にある。また、価格の安い韓国などアジア製の部品を制御、配電盤などに採用していた商社もあったが、やはり国内製品と比べると品質に不安が残り、あまり浸透しなかったようだ。

国内市場は成熟期にあることから、新規アイテムの発掘、新ビジネスの構築なども不可欠だ。蓄電池、燃料電池など環境に配慮する部材関連、ハイブリッド車関連の商材などが対象となる。原発再稼働反対の機運が高まる中で、PV(太陽光発電)はもちろん、欧州などで普及しているバイオマス発電、小川を利用した小水力発電関連のシステムも需要が見込まれる。

米価の下落が続く中、稲作以外のアグリビジネスも成長が見込まれており、中部地区は土地に余裕があることから注目されている。農地に太陽光パネルを設置し、下部の畑では日照量が少なくても育つ蓮根などを育てたり、太陽光で暖まった温水を温室で循環させたりするシステムなどが考えられている。

ネット販売が様々な商品で行われる中で、FA流通業界でもネット販売に力を入れるところも増えつつある。最新のメカトロニクス情報をいち早く提供するインターネット版の新製品ニュースを発信したり、ネット上で新品から中古品までの各種FA機器、メカトロ部品などを販売するWEBショップを展開するところもある。

国内のFA市場の成熟化が進む中で、商社も様々な戦略課題に取り組み、地道な提案営業活動、グローバル化などを進めることで、市場創出に取り組もうとしている。

■関西地区 メーカー機能や技術面充実
関西地区のFA制御流通は、全体的に横ばいで推移している。昨年秋頃から上昇傾向を示してきたが、今年春頃から上昇傾向が鈍り、横ばいで推移しているところが多い。京阪神で見ると、大阪は設備投資に大きな案件がない状況が続いているが、京都は半導体関係、神戸は造船関係などが堅調で、停滞気味の大阪分をカバーしている。

近畿経済産業局が発表した今年10月の近畿の経済動向は、今年8月を指標にした場合、全体的に改善の動きがみられるものの、一部が足踏み状態となっている。生産が横ばい傾向で推移する一方、輸出は金額ベースで引き続き前年を上回り好調に推移している。設備投資は、製造業、非製造業とも再び上昇傾向を示しており、個人消費も品目別にバラツキがあるものの回復傾向を示している。さらに、雇用も緩やかに改善している。

こうした中でFA制御・電子部品商社は、製品取り扱い範囲の広い商社が、市場の増加部分を的確にフォローし、売上・利益のアップにつなげている。中でも、FA市場の動向に大きな影響を与える半導体分野は、昨年からの上昇傾向を持続しており、安定分野となっている。自動車関連も、広島に本社を置くマツダが好調なことから、関西地区の商社にも好影響を与えている。

PV(太陽光発電)関連は、FA制御・電子部品業界でもここ数年大きな成長を見せてきたが、9月に九州、北海道、東北、四国の電力各社が、再生可能エネルギー発電設備の接続申し込みに対する回答をしばらく保留する旨を公表するなどPV周辺の雲行きが変化している。地熱や風力発電の電力買い取り問題も絡み、今後の動きが注目される。

一方、ソフトウェア開発など、専門商社としての技術を発揮している商社は、商談が活発化し、フル活動となっている。最近は、専門商社も単にモノを売るだけでなく、メーカー機能や技術面を充実・深耕させ、相乗効果を発揮するケースが増えている。さらに、プラン作成から開発・生産(外注を含む)・納品・メンテナンス・アフターサービスまで、ワンストップ・ソリューションを提供する商社も目立ってきており、多様化が進んでいる。

関西地区のFA業界は、4月の消費税増税や、円安進行など為替の影響がほとんど見られなかったが、関東や中部地区に比べると、伸び率は低調と言える。

今後、業界が成長する要因として、各商社とも政権の安定と、各種経済対策による持続的な回復を挙げている。特に、政権が安定すれば設備投資増につながると期待する声は大きい。大阪にカジノの誘致構想も出ているが、こうしたビッグ・プロジェクトを期待する声も強い。

為替の円安傾向で、製造業の国内回帰が進むことや、インフラ投資の増加も見込めるなど、先行きの比較的明るいテーマが多いだけに、市場をウオッチした取り組みが求められる。

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