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2010年モノづくり白書「主要製造業の課題と展望」⑬金型・素形材製品産業独自技術力確立へIT活用

1、現状

金型は、部品製造工程において、鉄鋼やプラスチックなどの素材をプレスや射出成形などの方法により特定の形状に加工するために使用される基本的生産財であり、「マザーツール」と呼ばれている。

用途としては、自動車ボディ用、電気・電子部品用などの金属プレス用金型や電気・電子機器ボディ用などのプラスチック成形用金型が多く、金型産業は自動車産業、電気・電子産業、機械産業など我が国製造業の基盤となっている。

我が国の金型製造業は、自動車産業や電気・電子産業を始めとする川下産業の生産拠点の海外移転、東アジアにおける金型産業の台頭、川下産業の東アジア企業を活用したコスト削減への取り組みなどの要因により、出荷額が減少してきていた。その後、近年の自動車産業の好調さに加え、我が国金型産業の技術力、短納期への対応、品質等が再認識されたことにより、出荷額は回復基調となってきていたが、昨今の経済情勢の急速な悪化により、足下は前年を大幅に下回る受注減となっている。

素形材製品は、金属などの素材を熱や力で成形加工して製造されるものであり、製品としては銑鉄鋳物、可鍛鋳鉄、精密鋳造、ダイカスト、非鉄金属鋳物、鋳鍛鋼品、鍛工品、粉末冶金及び金属プレス製品である。素形材製品産業は自動車産業、産業機械産業、電気・電子産業などの組立産業に多種多様な機械部品などを供給しており、我が国製造業において重要な役割を担っている。

我が国の素形材製品産業の出荷額は、バブル期以降デフレ・国内景気低迷やユーザー産業の生産拠点の海外移転により低調に推移してきたが、2003年後半頃からは製造業全般の設備投資増、自動車産業の国内生産増及び海外生産拠点への部品等の供給増に伴い、素形材製品産業の出荷も好調に転じている。しかしながら、鋼材、ニッケル、コークスを始めとする原材料価格が高騰しているとともに、ユーザーからの厳しいコストダウン要請もあり、出荷増が収益には結びつかず、引き続き厳しい経営環境に置かれている企業もある。

2、我が国産業の強みと弱み

(1)強み

我が国の金型産業には高度な熟練技能を有する多数の人材が活躍しており、製品の表面品質を左右する磨きの技能、メンテナンスの容易さや耐久性の高い金型とするための設計技術などの技術力、短納期への対応、品質等で強みを有している。また、高品質な鋼材が調達できることや高度な熱処理技術が存在していることなども我が国の金型の競争力の一因となっており、このような製造業に関する総合力の高さが強みと言える。

競争力を有する具体的な事例としては、自動車ボディプレス用などの大型・高精度金型、半導体リードフレーム用などの超精密金型、自動車用インストルメントパネル用などの複雑形状金型、同一製品を一度に多数個製造することができる高精度金型などである。

我が国の素形材製品産業は、設計・加工工程の合理化、生産性・歩留まり向上、技術の高度化などを実現し、品質が高い素形材製品を短納期で実現することを可能とし、高い競争力を確保している。素形材産業の競争力の高さは我が国の自動車産業、電機産業、産業機械産業などの競争力を支えており、躍進するアジア諸国においても素形材産業の育成に力を入れているところである。また、アジア諸国等に進出した日系自動車企業等から要請を受け、現地に進出して素形材の供給を行うことや日本から素形材を輸出供給するなど、進出企業からも我が国素形材産業の競争力に期待が寄せられているところである。

(2)弱み

我が国の金型企業の大半が中小企業であるため、経営資源が不十分な企業も多いことに加えて、下請け性が強い。そのため、契約書や発注書がないまま受注するケースもあり、川下企業との系列関係が薄れ、グローバル調達が進展する中においては、問題が発生した際のリスクが高まる可能性がある。また、取引慣行において、海外では金型受注時に鋼材調達や設計費用のために前払い(金型費の3分の1~2分の1)があるものの、我が国では検収後の後払いが中心となっており、特に中小金型企業の資金繰りを圧迫しているとの指摘がある。

日用雑貨品用などの単純で高精度を求められない金型、開発要素の少ない金型などの分野において、韓国、台湾、中国などの金型企業に比べ、コスト面で不利な状況にある。また、資金力のある海外企業は積極的な設備投資を行っている点についても留意しておく必要がある。

素形材製品企業については、ほとんどが中小企業であり下請け受注の取引きが多いことから、経営基盤が弱い。例えば、ユーザー企業から不合理と考えられる価格設定を強いられたとしてもこれまでの下請け的慣習から受け入れてしまうことも多く、受注が収益に結びつかない、または赤字となる場合もある。また鋳造の木型やダイカストの金型などについて、何十年も保管をしているケースもあり、年々増え続ける保管コストにより円滑な事業運営が阻害されている状況もある。

そのような状況が発生している要因としては、これまでの取引慣行が影響している面もあるが、素形材産業界が契約書の締結などについて十分に対応できていないこともあり、素形材産業の経営基盤の向上が必要である。また、汎用品などの付加価値の低い製品分野においては、中国を始めとする東アジアの素形材製品企業に比べ、コスト面で不利な状況にある。

3、我が国産業の展望と課題

(1)今後の競争力強化に向けた対応

我が国の金型・素形材製品産業が、今後とも競争力強化を図っていくためには、これまでに蓄積されている技能・技術を更に研究開発などにより発展させ、独自技術の確立や強化を図っていくことが必要である。また、企業内外ネットワークやCAD/CAM/CAEなどIT活用による設計・加工工程の合理化、技能・技術の伝承、また川上・川下産業や同業・異業種企業の連携によって、1社のみでは対応できないビジネスなどに展開することなども重要である。

金型・素形材企業の多くは中小下請け企業だが、これらの課題に受動的に対応するのではなく、経営理念・戦略を主体的に示しつつ、挑戦していくことが必要である。06年5月に策定された素形材ビジョンを受けて、素形材関係17団体は業界別ビジョンを策定した。また、取引きについても06年11月に素形材産業取引きガイドライン策定委員会により報告書が策定された。素形材企業は、これらを活用しつつ、産業構造変革の現実を直視し、自社の適正利潤確保のため、ひいては、我が国産業競争力強化のため、戦略的経営を行うことが望まれる。

(2)東アジア等海外戦略

00年以降、東アジアを中心として自動車メーカーと直接取引きのある部品メーカーの進出が活発化しているが、そのサプライヤーである素形材産業の海外進出はあまり進んでいない。また、最近の経済連携協定等の動き、現地企業の育成等により今後、当該地域での競争がより一層激化していくことが想定される。このような状況の中、海外展開を積極的に支援することにより、ものづくりの基盤を支える素形材産業の収益力強化を図ることが重要である。

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