今年も「ものづくり白書」が公開された。毎年よくまとまっていると感心するが、一方で、いつもガッカリ感と虚しさに襲われる。その理由は明らかだ。内容がいつも現状報告、分析にとどまり、国がものづくり産業に対して掲げる定量的な目標とそれに対する言及や振り返りがなく、「これから日本の製造業をこうしていく」というメッセージが読み取れない。当事者意識が感じられず、モヤモヤするのだ。
ほぼ100%の製造業の企業が、中長期的な目標を立て、さらに年度や四半期、月の目標を明確にし、その達成に向けて動いている。売上や利益といった経営目標はもちろんだが、製造や営業、総務など各業務部門も数値目標や目指すべきゴールを定めて日々の業務を行っている。そして月末や期末になると、達成具合をまとめて振り返る。目標を達成していれば、それは良いサイクルが回っている証拠であり、目標を下回るようであれば、何かを変えて好転させなければならない。目標を立て、その進捗を管理し、達成に向けて試行錯誤するというのは、製造業ではごく当然のことであり、誰もがそれに取り組んでいる。じゃあ、国や行政はどうかと言えば、ものづくり白書からはそれは見えてこない。
とは言え、毎年白書の作成を国に義務付けている大元の法律である「ものづくり基盤技術振興基本法」には、国が負う責務は「ものづくり基盤技術の振興に関する総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する」としか書かれておらず、国に定量的な目標設定やその実行の責任はない。しかし日本のものづくり産業の土台が揺らぎ、未来が危うくなる今、果たしてこのままでいいのか?民間企業は自ら経営努力で頑張るとは言え、それにも限界がある。今こそお互いが当事者となり、足並みを揃えて成長戦略を進められるよう仕組みを見直すべきではなかろうか。