令和の販売員心得 黒川想介 (12)

2019年12月4日

初回アプローチこそ丁寧に 感謝と尊敬の念を持って…

いつの時代も顧客を増やす新規開拓という営業活動は、販売員の重要な任務である。昭和時代には、飛び込み訪問が新規開拓の主流であった。工場と見れば入って行って、成功したり断られたりを繰り返した。

現在の環境では飛び込み訪問のできる時代ではない。かつての飛び込み訪問に近いやり方は、自社が扱う商材を使いそうな企業に電話をかけて、アポイントを取るやり方である。このやり方も成功率は低い。販売店でも新規の見込み客を取り込んでいきたいが、新規開拓月間とか一人何件とかの目標を掲げて、積極的な作戦を展開する販売店はなくなった。それでも各販売店の顧客は少しずつ増えたり変わったりしている。

現在、新規の設計技術に会える機会はいくつかある。①販売店のホームページにアクセスしてくる人 ②取り扱いメーカーや顧客からの紹介 ③展示会やセミナーの客 ④親しい顧客に他部門の人を紹介してもらった時 ⑤特別な商材を扱い、その商材で簡単にアポが取れる場合、などがある。

 

新規の技術者には会い難い時代である。どんな形でもいいから、一度会えた技術者と一度きりで疎遠になるのはもったいない。しかし実際は、相手から何回かの相談を持ちかけられなければ一回で疎遠になることが多い。

一回目の訪問で会社案内や該当する商品の話で終始する。その時、見込み客は気を利かせて質問をしてくれる。販売員は熱心に説明する。しかし見込み客は紹介を受けたからとりあえず会ったのだし、ちょっと聞いてみたかったからウェブサイトにアクセスしたのだ。つまり最初から本気で相手してくれているわけではない。そのことを理解しているなら、初回訪問は説明することより相手を観察しなければならないのに、説明に気が入り自分はどのように見られたのかなど知らずに終了してしまう。

それでも機器部品業界の販売員は好運である。意外と二回目も会ってもらえる場合がある。理由は二つほどある。

 

一つ目は、初回はいろいろな理由で販売員に会ったのだが、会いたくて会ったのではないため、販売員の人となりをよく観察しなかったという場合。二つ目は、この業界の技術は日進月歩である。見込み客が知らないことや何か面白い商品を販売員は知っているかもしれないと、勝手に思ってくれる場合である。だから二回目の訪問が実際に相手に値踏みされる。

経験の浅い販売員に、もしも二回目のアポが取れたら何をしに行くのかと聞いてみた。ほとんどの販売員は、見込み客が興味のありそうな販促物を持って行き、情報を取ってくると答える。情報とは一体何なのかあいまいな話ではあるが、それは置いといて、その販促物にあまり反応を示さなかったらどうするのかと聞くと、次回は気に入りそうな販促物を持って訪問すると答える。

平成時代には、商品やサービスのやり取りで顧客との関係を築いてきたから、新規見込み客にも商品やサービス一辺倒で勝負をかけるしかない。

 

技術者が二回も会うチャンスをくれるのは、確かに販売員の持ち込む商品に期待する割合は大きい。しかし、商品だけが技術者を引き付けるのではない。この販売員にもう一度くらい会ってもいいと技術者に思わせるのは販売員自身の器量なのだ。だから初回のアプローチを雑にしてはいけない。雑というのは自分本位でアプローチすることである。この商品には興味があるはずと決め付けてPRするようなことなのだ。

二回もチャンスをくれる相手なのだから感謝の念を持って会うことだし、販売員にはない技術を持っている人なのだから尊敬の念を持って会うことだ。そうすれば、表現の仕方や態度が次回会ってもらえる雰囲気をつくる。