令和の販売員心得 黒川想介 (9)

2019年10月30日

販売員も主役張る努力が必要
『名刺で5分』の会話スキルを

制御商品の販売員は販促ツールを携行している。特に新規見込み客開拓をする時は、念入りにツールを選ぶ。機器や部品はかなり多くの種類があり、サンプル、カタログ等の資料や動作モデルなど多様である。

製品、製造業の成長拡大期はさまざまな制御商品が誕生し、マーケットも広がったため、販促ツールは多くの顧客をつくってきた。市場の現場では生産力や品質向上に熱くチャレンジしていたから、販売員が持ち込む販促ツールに見入った。だからこの時期には、初めて会う見込み客に対しても販促ツールは主役であった。

現在の販売員はいつも販促ツールを携行しているが、積極的活用はしていない。理由はいろいろあるだろうが、①案件や用件の打ち合わせ訪問が多く、ツールを使うのを忘れる ②新規見込み客であっても用件ありきで会うため、あえてツールは使わない ③ツールは各種あって多いが、すごみのある販促ツールは少なく、現場の人が見慣れたシリーズ品である ④あまり話題がない時に、顧客との会話のネタに使う ⑤何人かの見込み客にツールの説明をしてみたが、反応が悪かったので積極的に使っていない等の理由で、販促ツールは数日使って後はどこかに置き放しになる。

 

しかし、販売店の売り上げが中・長期的に右肩上がりを維持するためには、新規マーケットを模索し新規見込み客を増やさなくてはならない。そのためには、顧客が飛びついてくれる販促ツールがないからと言って、従来の顧客の課題解決に力を入れればいいと割り切るわけにはいかない。

そこで勇気を振り絞って見込み客開拓をしようと思い立つ。一体どんな販促ツールであれば見込み客は興味を示してくれるのかと悩み考える。日常会っている顧客ならそれほど悩まないが、初めて会う見込み客には何を紹介したらいいのかわからないから悩む。

なぜこんなに悩むのか、その理由は販促ツールを主役だと思っているからだ。

 

成長拡大期なら確かに主役として君臨していた。しかし現在では主役として使える販促ツールは極めて少ない。大方の販促物が主役になり得たのは成長拡大期であり、現在のような成熟低成長期は、販売員が主役を張らなくてはならない。

脇役が主役を引き立たせる演劇界とは違って、販売員が脇役である商材をうまく引き立たせるのが本筋なのだ。販売員が主役を張るから営業はおもしろい。成長拡大期で販促ツールに主役を奪われたままであるから、今でも販売員は販促ツールを見込み客のお気に入りの主役だと思っている。だから面識の浅い設計者や新規見込み客が気に入る販促ツール探しに悩む。それなら一発奮起し、主役を試行錯誤で張ってみればいいのだ。

演劇の世界でも主役になる人は素質もさることながら血のにじむ稽古をしてきた人である。営業も同じであり、演劇界のように厳しい稽古は必要なのだ。最初から「墓」という商材には言及できず、自分が主役となって苦労を重ねたウィリー・ゲールのように、販促物に頼り切らず自分が主役になって多くの実績を積むことだ。

 

それには数多くの名刺交換をすることになるが、前回までに述べてきたように名刺を観察し、名刺から浮かぶ話題を見つけ『名刺で5分』の会話を必ずすることだ。5分とは無理なく自然に話し込むという意味である。これを数多くやっていれば、いろいろな現場の感覚が共有できるし、相手が返答する中に話題を見つける余裕が生まれて会話がつながっていく。

幸運なら販促物に絡んだ話題を見つけることもできる。『名刺で5分』で培われた態度や会話は、次回も会ってもらえる雰囲気を作り出す。それが主役を張るということである。