令和の販売員心得 黒川想介 (8)

2019年10月2日

最初の訪問はアピールでなく
2回目に繋がる雰囲気づくり

販売員が、見込み客への訪問にこぎつけて名刺交換をした後、どのような会話の流れになるかを販売員に聞いてみると、ほとんどが自社の案内から入ると答えている。次に多いのが、今、売り出しの戦略商品や新商品が人気なので紹介しに参りましたというように商品紹介から入るという事だった。

かつて言われていた名言がある。「営業はまず自分を売って、次に会社を売って、最後に商品を売れ」というのである。自分を売るというのは良いことずくめをアピールするのではない。自分の人柄が信頼に足るものということが相手に伝わるように言葉と態度で示すことである。そしてその上で自分は何をしたい人だということを伝えることが自分を売るということなのだ。

制御機器や部品の販売員はこのように自分を売るということを飛び越して、いきなり会社案内や商品紹介に入っている。人が人に伝えるのは難しいことである。事務的な説明なら伝わりやすいのだが、人の気持ちはそう簡単ではない。会社案内や商品紹介からいきなり入れば、確かに伝わりやすい。そして結論も速い。今は興味がない、今は他の会社で十分間に合っているから結構だという答えが返ってくる。

 

しかし販売員はやっと見込み客との面談ができたのであって、本心は何か取引してもらいたいという気持ちはあるはずだ。伝わりやすい部分だけ伝わると、今は興味がない、間に合っているということになってしまい、退散するしかなくなる。販売員の気持ちは伝わらない。だからといって次々と商品を羅列してみても意味がない。

何か取引してもらいたいために今日は参上してますと言葉に出しても、そんな面倒くさいことは間に合ってますという返事がオブラートに包まれて戻ってくる。

そこでまず、自分を売ってということが重要になってくる。

 

自分を売る最初の機会は名刺交換の場ということをこれまで述べてきた。名刺に表記されている法人格・人格を話題にして名刺で5分ぐらい会話をすれば、①お互いの不安感がやや薄れる ②見込み客は自分のことに言及されるので悪い気がしない。つまり人は誰でも認められたいという感情を刺激されて心地良くなる ③緊張感がやや解けて周りが見える程の余裕が生まれる ④5分と言えば結構長いから見込み客から着席を勧められるので、見込み客の会社や部門の話題にまで発展する可能性もある。その5分間で見込み客にも余裕が生まれて、販売員を見る目に変化が表れる。

それまで見込み客は、この営業は何を持ってきてくれたのかという期待感やいつもの販売員のように売り込まれるのかなという不安感、あるいは紹介者を通しているので話は聞くが早く終わってくれないかという気持ちで臨んでいたはずだが、それらの思いは薄れていく。

つまり、いつも販売員に持つ先入観はなくなって、リラックスした気持ちで販売員を受け入れるようになる。せっかく見込み客はそういう気持ちになったのであるから、見込み客の期待を裏切るような商品を焦って紹介を始めては元のもくあみである。

 

見込み客を一回の訪問で顧客化できる販売員はいない。何度かの回数を重ねて初めて顧客になる。したがって、一回目の訪問は二回目の訪問を許してくれる雰囲気をつくることを心掛けなければならない。つまり第一回目の訪問の目的は、会社や商材をアピールすることではなく、二回目の訪問の約束が取れるように自分を売る事なのだ。と言うことは、持って行く販促物は空手で訪問しにくいための手土産代わりなのだ。手土産を自慢げにとうとうと説明する人はいないだろう。よほど良い手土産なら話は別だが。