ディーラーヘルプを考える 黒川想介 (60)

2019年5月15日

思い込みを捨て顧客を知る
見込み客増やしてこそ一流

販売店の営業は、自分が担当している顧客であっても、普段会っていない設計技術にはなかなかアポイントが取れない。ましてやまだ口座すらない見込客の設計技術には、会えないと言った方がいい。

昨今、積極的に見込客開拓をする販売店営業は少なくなった。担当顧客であっても新たな設計技術の開拓を試みようとしなくなっている。理由はいくつかあるだろうが、その中でも一番の理由は、機器・部品営業のマーケットが草創期を脱して成長期を走っていた時のように、設計技術が関心や興味をもって手に取ってくれるような商品は次々と生まれてこないことである。

よく、ちまたで言われているように、設計技術者は必要があればネットから商品情報を取るので、商品紹介中心の販売店営業には時間を割いてくれないと言うのである。確かにその影響はあるだろうが、だからと言って情報提供者である営業はいらないというわけではない。必要を感じない商品の紹介を受けるほど、余裕のある時間が設計技術者にはないということだ。

 

実際、営業マンは売り上げが欲しいことは事実であるが、営業マンの原点の心には、いつも顧客や見込客にも喜んでもらいたいという気持ちがある。だから新商品が発売されれば顧客に知らせて喜んでもらうというのが成長期の営業であった。商品に関して技術的にも明るくなって、顧客の役に立ちたいというのが成熟期の営業であった。

その後、国内設備業界ではデフレ停滞期が長く続いた結果、大競争となり、メーカーは競合戦略を採用した。その結果、競合対比で優れた商品が多くなった。販売店営業は商品の優れた機能、特徴を学び、顧客に役立つ用途をPRすることが顧客に好かれると思って実践してきた。そしてそのやり方を見込客開拓に使ったが、空振りに終わることが多くなって、設計技術への開拓を試みようとはしなくなっているのだ。

しかし空振りに終わることが多くなったからといって、開拓の心を捨ててしまっては、営業行為の中でも最も重要な役割を捨ててしまうことになる。よく考えてみると、顧客に喜んでもらう、顧客の役に立ちたいという営業の気持ちは間違っていない。しかしその内容は一方的であり、この新商品は喜んでくれるはず、役に立つはずという希望的観測にすぎないのだ。成長期・成熟期はその観測が当たって顧客や見込客も喜んでくれた。しかし環境が違う昨今は喜ばず、役に立てていないのだ。

 

その失敗は販売店営業側にある。あまりにもメーカー寄りになり、顧客や見込客のことを忘れてしまっているのだ。顧客や見込客に喜んでもらうなら、まず第一に彼らが一体何に関心があるのかを必死になって探さなければならないはずだ。しかし何を持って行ったら喜んでもらえるのか、どうしたら役に立てるのかの一点張りの営業になっている。順序が逆なのである。

こんな間違いを起こすのは、設計技術は何をしているのか、おおよそ知っているつもりになっているからだ。実は何も知らないと言ってもいいほどである。

販売店営業が知っているのは、顧客が購入してくれている商品が何に使われているかくらいなものである。つまり、造っている製品の一部や製造工程のどの辺にどのように使われているかを打ち合わせの時に知るくらいのことである。メーカー寄りに立ち過ぎている販売店は、メーカーのことや商品に関することはよく知っているのに、マーケットや顧客のことがわからなさ過ぎる。もっとマーケットや顧客のことを知れば、見込客開拓の仕方が今の時代に合った方式で行える。

営業マンは見込客を開拓し顧客を増やし続けてこそ一流なのだ。