ディーラーヘルプを考える 黒川想介 (53)

幅広い情報や違った視点
技術者とコミュニケーションこそ王道

ICT技術とFA技術をつなぐインターフェース層のことがクローズアップされたのは2015年、ドイツ発第四次産業革命と仰々しく宣伝された頃からである。今後のものづくりはドイツの提唱したインダストリー4.0のシステムになってしまうのではないか。日本は後れを取ってしまったのではと、業界はざわめいていた。

中小の製造現場では、ともかくIoTに着手しなければという方針にとまどいながら、データを取ってみよう、IoTには無線技術も有りだから無線でつなごうなどと言って、従来の改善活動から、やや目をそらした仕事をしている現場が散見された。2015年に急に湧き上がったこの現象は一種の流行に近いものであった。

ものづくりの製造業は多種多様であるが、日本人特有と思われる横並びを良しとする感覚がやはり存在する。だから皆が飛びつく流行現象が製造業にも起きたのだ。しかし、さすがは製造業と思われるのは、流行が去ってもちゃんと残すものは残していくことだ。かつて人件費が高騰しだした頃、自動化が始まった頃だった。自動化しないと大変だ。自動化しないと競争に負ける。無人工場が試験的に造られた、などとざわついていた。

 

そのざわめきが去ると、何でも自動化ではなく、生産量・減価償却・人件費などを考えて自動化を進める方向に修正してきた。この間に自動制御技術が発展して、その技術が省力による人件費の削減だけでなく、生産効率・品質安定に欠かせない技術として発展してきた。

また、記憶に新しい3Dプリンター技術が登場してきた時にも、これからのモノ造りは金型がいらなくなってしまう、製造が根本的に変わると言ってざわめいた。このざわめきは意外と早く収まっている。それでも3Dプリンターを使いこなし生産性の上がる市場は着実に残っているし、将来、3Dプリンター技術が格段に向上し、コストや生産性が良くなってくればそれにつれて使用分野は拡大する。

日本人気質は流行するものに弱いが、流行が去って落ち着きを取り戻せば、製造の現場は予算と技術と市場性をよく見ながらこつこつと地に足をつけて生産性の向上、品質安定を進めてきた。

 

流行に乗ってざわめいていた期間がもったいないと思うかもしれないがそうではない。その時のざわめきの期間で何かしらの技術や異なった視点を学んできたのである。日本の技術者の世界は実利的というよりかはきれいにまとめることや目新しいことをやるのに力を入れる傾向がある。だから時々異なった視点で仕事を見ることは大切なことなのだ。

モノを造る製造業を顧客にしている販売店は商人である。商人はモノを造ってない。商人は基本的に商品を仲介して利益を上げることを生業としている。儒教はモノを造らず他人のモノで利する商人をさげすんだ。その儒教を徳川家康は政治の中枢に置き、士農工商という身分のランクづけを行った。そのようなナンセンスの亡霊がいるわけでもないだろうが販売店の営業マンは無意識にモノ創りの工場で働く技術者を上に置いているように見える。モノ造りに憧れを抱くことすらあるように見える。仮にそうであるなら技術者に敬意を払い、商人としての自覚を持って接することだ。商人としての自覚とは技術者にはなじみ難い幅の広い多くの情報に接していることである。広い視野に立てるから違った視点を持てることだ。

現在、販売店が掲げているソリューション営業は、扱い商品を中心に技術的知識を向上させていくことが顧客満足になっている。しかし商人としてのソリューション営業は、幅広い情報や違った視点で技術者とコミュニケーションするのが王道なのだ。

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