ディーラーヘルプを考える 黒川想介 (49)

大切なコミュニケーション力
有効な教育や指導の開発が必要

販売店は顧客次第で大きくもなれるし、沈みもする。販売店は当初から顧客が多数あったわけではない。販売店にも創業期があった。

創業期の営業は、とにかく顧客をつくるのに腐心した。一軒一軒と顧客ができる度に喜びを感じた。そのような時代の営業は、顧客満足営業や課題解決営業に力を入れるという考えはなく、ひたすら顧客開拓営業に邁進した。

現在、創業40年、50年といわれている部品・機器の販売店の創業時代は荒々しい時代であって、顧客開拓はもっぱら飛び込み訪問が有力な手段であった。現在ではアポイントなしの訪問が嫌われるため、新規の顧客開拓にはほとんど効果のない手段である。

 

現在の新規訪問は、紹介を通して行う場合や、自社のホームページにアクセスしてくる見込み客がほとんどである。業界の成長期にやっていたアポイントなしの飛び込み訪問と、現在のアポイントありの新規訪問では、同じ売り込み営業であっても違いがある。両方とも販売店にとって、最も大事な顧客開拓の営業行為であるが、それぞれの特色がある。

その一つ目は、かつてやっていた飛び込み訪問の場合は、まず何よりも自分の顧客になってほしいという思いが強かった。現在のアポイントありの訪問では会うことになった理由が商品であるため、商品をあわよくば売りたいという気持ちが強い。

二つ目は、飛び込み訪問では商品は紹介するが、それ以上にこの見込み客のことを探ろうという気持ちの方が強かった。現在のアポイントありの訪問では商品のアプリケーションや商品に関する技術的知識で見込み客の課題を解決しようとする力に力点を置く。

 

両方とも一長一短はあるにしても、顧客をつくる力量は前者の方が勝っている。一回、二回ではその差はわからないが新規訪問の回数が多くなればその差は歴然と見えてくる。だからといって、今の営業に飛び込み訪問を奨励するわけではない。むしろ、やるべきではない。

現在のアポイントありの訪問でもアポイントの内容に執着せず、アポイントの内容は当て馬的な事と見て、むしろ敵は本能寺に有りという思いで、顧客になってほしいという気持ちを強くし、相手を探ろうという気持ちを優先させればいい。そうして見込み客の訪問件数を増やせば、商品からわずかに離れた話題が豊富になってくる。まさに飛び込み訪問時代の営業マンは話題が豊富であった。

だから事務的会話だけでなく仕事に関係あるコミュニケーションがうまかった。営業のうまさは、商品の説明のうまさではなくコミュニケーションのうまさである。

 

現在の販売店の営業は、設計技術や製造技術を顧客にしていると思うから、販売する商品の技術的な面に力を入れる。それが技術者に好かれるスキルと思ってしまう。その事は間違いではない。しかしその事だけが技術者の歓心の対象になるわけではない。

ある用件で問い合わせを受けて訪問したり、ある人からの紹介で新規の客先を訪問すれば、現状ではどうしても用件内容の打ち合わせに終始する。だからその用件が完結して、再び訪問しようとしても、相手の歓心を買うネタに苦労する。このような営業を続けていれば新規の技術者に会えても、二度、三度と会ってもらえないから、自分の顧客にできないのだ。

販売店は顧客次第で大きくなるという論に反対する人はいるだろう。そうであるなら営業のコミュニケーション力を上げる教育なり、指導なりにもっと力を入れた方がいい。それもメール環境で育った営業にも有効なコミュニケーション教育や指導の開発が必要である。ディーラーヘルプの場で実践訓練してはどうかと思う。

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