ディーラーヘルプを考える 黒川想介 (30)

2018年2月14日

真の「顧客第一営業」を 時代に合わせ販売会議

判断に迷ったら顧客の所へ戻れとか、商品の付加価値は顧客が決めるものだ、などと言われて、顧客がいかに大事かという考えは今や常識である。

かつて需要の勢いが供給を上回っていた時には、顧客より生産力に焦点が当たっていた。生産力が需要に追いつくと、品質をつくり込む製造技術に焦点が当たった。やがて品質の良いモノができるようになると、販売力に焦点が当たるようになった。

販売は、品質良し・価格安価・機能充実を売り込んだ。やがて、競争を制する元は顧客側にあることがわかった。各社は顧客に焦点を当てることになり、現在はその過程にある。一般消費市場の消費者は、いらないモノは買わない、好かないモノは買わないという厳しい目でモノを見るから、メーカーは心底怖い顧客が真に求めているモノを調査し研究してモノをつくっている。

このようなマーケティングは消費市場で早くから始まっていた。1990年代後半になって、産業市場の部品、機器営業でも顧客満足営業が喧伝され出した。しかし、この業界で本当に顧客満足を第一にしている営業になっているのだろうか。

日本には建前と本音という風土がある。建前は表向きの主義、方針であり、実際の本音とはどこか別のものという意味である。物事に対して欧米のようにYes、Noを明確にすることよりも、何かあいまいさを残しておきたいとすることを好むのが日本流なのだ。

日本の社会は工業国として一直線に進んできた。その過程で技術は大いに進歩した。技術は前の技術をベースにして新しい技術が開発される。その新しい技術を使って新しい製品が生まれる。新しい製品は以前の製品に比べ良くなっているし、価格もリーズナブルになっているため、新しい製品は良いモノだということが定着した。

工業化社会の終盤、情報化時代の入り口で大競争時代に入った。営業は自分たちの商品は良くて安いというアピールで激しく競い合った。営業をしやすくするうたい文句のために、機能追加のシリーズ品が次々と発売された。営業はこぞって「新商品はかくかくしかじかで良い商品だ」と言って売り込んだ。

以来、現在まで同じ流れである。現在は情報化社会の中にあり、製品優先から顧客満足を第一に掲げた顧客を優先する営業を展開していることになっている。

顧客第一営業とは、顧客の言う通りにすることだけでもなく、新しい商品だから薦めるものでもなく、顧客に合った商品を薦めることなのだ。すなわち顧客のつくる製品や製造に対して、付加価値につながる部品や機器を提案することである。だから工業化時代からやっているような商品中心で、新しくて機能がついて安い商品は良いという売り込みは、顧客満足営業にはほど遠いということになる。

製品中心から顧客中心の時代になっても、市場の最前線にいるのは営業である。特に産業市場では、メーカー営業と販売店営業の混成部隊が最前線にいる。混成部隊の作戦会議である販売会議の内容は、売上状況、業界状況、新商品や戦略商品拡販依頼、商談テーマ状況、競合状況などである。工業化時代と同じで、白兵戦をもって競合に勝つ内容になっている。やはり顧客満足第一は、建前になってしまうのはやむを得ないのが現状なのだ。

情報化時代と長い間言われてきていたが、多くの製造現場は改善やリニューアルや自動化を続けてきた。しかし昨今、AI、IoT、ICT、無線化、トレサビリティなどに取り組む姿勢が鮮明になり出している。こうした市場の動きの中で顧客や現場はどのように変わるのか、なぜそのような動きがあるのかなどキャッチできなければ後手を踏む。最前線にいる混成部隊の作戦会議ならぬ販売会議は、本音で顧客第一になるテーマを追加すべきであるのだ。