ディーラーヘルプを 考える(11)黒川想介

「支援する」概念超える チームとして理解すべき

古来、強いと言われた軍団はたゆまぬ訓練で鍛え上げられた軍律の厳しい強靭な軍団であった。しかし厳しい訓練だけでは勝利する強い軍団にはならない。ドイツ帝国の母体となったのはヨーロッパの小さな王国プロイセンであった。プロイセンの2代目国王は身長の高い兵を訓練で鍛え上げ、ポツダムの巨人軍という筋骨たくましい兵団をつくった。17、18世紀のヨーロッパは新教と旧教の対立による宗教戦争もようやく終わってホッと息をついたのもつかの間、今度は王位を巡る争いに端を発し次々と王位継承戦争が起こった。

ヨーロッパのどこかで戦争が起こっていた世紀に、プロイセンの2代目国王は2度の戦争に参戦したが、自分が鍛え上げたポツダムの巨人軍を戦闘には使わず温存した。ポツダムの巨人軍が強かったかどうかは不明のまま3代目の時代になった。3代目は軍事的天才のフリードリッヒ大王である。フリードリッヒ大王はヨーロッパ中を巻き込んだ7年戦争でオーストリア帝国、仏、露、さらに当時の強国スウェーデンを敵に回して戦った。主要な戦闘が16回もあり、その半分は負けであった。しかし最終的には勝利を飾って念願のシュレージェン地方を獲得した。フリードリッヒ大王の勝利は彼の軍事的天才性によるものであるが、何度も実戦を重ねていくうちに軍が強くなっていったことにも起因する。勝利する軍団には訓練の他に卓越した作戦や度重なる実戦が必要なのである。

現代の営業戦線ではメーカーと販売店で構成する組織体がある。この組織体はディーラーヘルプという概念で形づくられている。ディーラーヘルプでつくられた組織体はチャネル型メーカーの中核を成している。したがって市場に攻め入り売り上げを伸ばしてゆくにはこの組織体を機能させなければならない。それにはまず、違う企業文化を持つメーカーと販売店の信頼関係が必要になる。その上で販売戦力を育んでいけば互いの成長につながっていく。昨今の競争の激しい業界では、この販売戦力強化が重要な課題となっている。しかし販売戦力向上と、販売員の戦力向上を混同してはならない。

戦力というものは①戦略・戦術②作戦の遂行力③各個人の技量の3項目に分解される。ディーラーヘルプ組織体、略してDH組織体が戦力化されるには、単に個々の販売員の技量を向上させるだけではダメなのである。DH組織体はチームであるから、目標に向かって行動する時にはうまく機能する。DH組織体が目標に向かって実戦を重ねていけば互いの信頼関係は深まっていくし、販売戦力は強くなる。だからディーラーヘルプというのはメーカー側が販売店を支援するという概念を超えて、メーカーと販売店が共同で組織する組織体という概念として理解すべきなのだ。組織が動く時には戦略がいる。戦略には目標がある。

DH組織体はメーカー戦略があって動き出す。メーカーは市場に関して広い視野と強い思いを持っているからだ。戦略を実行するにあたって、強い思いと明確な期間と数値化された目標が必要である。内容によって短期もあれば中・長期もある。新商品を定着させたいなら短期型とか知名度を上げるなら長期型などのようなことである。メーカーの強い思いがあって、それに基づいて数値化された目標を期間内に達成させたいとなれば当然、両者で行う戦術や作戦遂行が重要となろう。しかしDH組織体としてのディーラーヘルプの理解がなければ、メーカーの戦略実行は商品の売り方勉強や各種ツールの提供、それにイベントなどへの協力依頼となってしまう。だからディーラーヘルプを一つのチームとして捉えてこそ、戦術・作戦遂行などの動きが出てくる。

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