FA・制御・電子部品 流通の傾向 半導体製造関連、車載が好調 前年度並みで推移 工作機械も今後上昇へ

 

FA・制御・電子部品の流通を取り巻く環境は、8、9月以降に前年同期を上回る状況で推移したことで、春先からの停滞を少し補い、現状は前年同期比若干のマイナスとなっているところが多い。ただ、為替の円高傾向からの目減り分の影響を受けている要素もあり、実質的には前年度並みか、若干上回っているとも言える。スマホや車載関連の好調で、半導体需要が旺盛であることから、半導体製造装置、有機ELなどの製造装置の需要が拡大している。先行きが懸念されていた中国市場も工作機械などの需要が動きはじめており、日本の工作機械の出荷も上昇に転じるものと期待が高まっている。人手不足、人件費の上昇、高精度なものづくりニーズなどで、国内外での自動化投資意欲も高いだけに、これらの需要をいかに獲得していくかが、今後の成長を大きく左右することになりそうだ。

インフラ投資も奏功

FA・制御・電子部品の流通商社の業績は、各社まだら模様ながら、総じて横ばいか、若干マイナスで推移している。ただ、前年に比べ5%前後売り上げを伸ばしているところや、為替の影響での目減りと冷静に受け止めるところもある。
日本電気制御機器工業会(NECA)の上期(4-9月)の出荷額は前年同期比2.4%減となっているが、国内はほぼ横ばいで、第2四半期は同1.8%のプラスになっている。日本電機工業会(JEMA)の産業用汎用電気機器の上期出荷額は同4.3%減となっているが、第2四半期はほぼ前年並みで、8月以降は上昇基調となっている。
現在好調を維持しているのは、半導体製造装置や有機EL製造関連で、前工程を中心に出荷が増えている。車載関連のカメラや自動運転に関係した引き合いが大きく伸長し、画像用半導体やコネクタ、センサーの需要増につながっている。4K・8Kといった画像の高精細化もデータ量の増加を生み出し、半導体の使用個数増につながっている。
自動車関連の需要は、今までは製造設備としての市場をターゲットしている傾向が強かったが、車の電子化は車載という新たな市場を生み出し、FA・制御・電子部品にプラス効果を生み出している。車載市場は、テレビなどの民生機器市場に比べ、部品などに求められる仕様が厳しく、コスト対応力も求められると言われている。ただ、部品仕様の厳しさはFA市場も同様だけに、共通している部分もあり、限られた有力市場としてアプローチするところも多い。

製造業の国内回帰に期待 エンジニアリング強化へ

【ロボット導入・活用SE養成に力】

ここ1年半ほど停滞していた工作機械市場もようやく底を打ちつつある。約20年前に導入した工作機械などの製造設備も老朽化が進み、2014〜15年度の設備投資減税による買い替え投資の反動に加え、大きな需要先である中国の在庫整理が終わったことが大きい。中国が半導体、ロボットなどの産業を自国内の基幹産業として育成していこうという国家政策が、今後の中国市場を改めて大きな需要先としての期待を集めている。インダストリー4.0やIoTによる新しいものづくりへの取り組みは、工作機械などのインテリジェントマシンとしての投資拡大を期待する声となろうとしている。
同時に、製造業の国内回帰が一部で見られ始めていることも、期待材料の一つといえる。海外新興国の人件費上昇で、地産地消を主目的とした生産以外は海外生産のメリットが薄れてきたことだ。為替を加味し国内で自動化生産して輸出しても採算が十分取れる要素が生まれてきている。国内も人手不足であることから、ロボットなどの自動機の導入で省人・省力化を図った大がかりではないコンパクトな生産機械投資も目立っている。海外でもロボットの導入が増えているが、これは人手不足というよりは人件費上昇対策と品質の安定を主目的にしている。
国内外でのロボット導入機運の盛り上がりは、ロボット生産が必然的に増加することになり、これに伴う部品需要の拡大が見込めることになるが、加えてFA商社が期待しているのは、ロボットを含めて生産システムのトータル提案に加わることである。ロボットの導入・活用にはこれを熟知したSE(システムエンジニア)が求められる。SEはロボットメーカーのなかでも不足しており、商社としても仕入れ先ロボットメーカーのSE力を借りる一方、自社でSEの養成にも力を入れている。
FA・制御・電子部品などの商社はロボットに限らず、エンジニアリングの強化を課題に挙げ取り組んでいる。その背景には、製造業の国内回帰と言われながら、国内回帰の工場はマザー工場的な高度な生産が多く、数量的にもさほど多くないことから、部品販売だけでは従来のような売り上げを確保しづらくなっている。当然のことながら、高度な自動化が求められる傾向が強く、ソリューション提案的な役割を商社に求める顧客も増えてきている。

ネット販売と共存模索

そして、もう一つはインターネットを活用した販売が増えつつあることだ。パソコンで誰でもが簡単に購買できる状況が生まれつつあるなかで、商社としてこの流れとの折り合いが求められている。幸い、FA・制御・電子部品などは工場などの産業用途が多いことから、価格だけでは購買しづらい要素を含んでいる。品質保証、ビフォア・アフターのサービス、ソフトウェアなど、商社がアドバイスやサポートする必要がある所も非常に多い。
一方、インターネットの普及は商社にとってプラスの効果もある。商社は昔ほど、取引先の設計・開発者との話ができづらい状況がでてきている。秘密保持やセキュリティ管理など厳しくなっているためだ。しかし、インターネットはこうした壁を容易に超えた形で顧客ニーズを聴くことも可能にする。地域を越えた商談も可能で、営業拠点が無くても販売活動に利用できる。
海外では日本製品の認知度がまだまだ低いと言われ、知られていないために、みすみす販売機会を逃していることも多い。商社とメーカーが一体となった市場への深耕で、販売機会の増大の大きなツールとしての活用が見込める。今後、インターネット販売との共存をどうやって進めていくかが大きな課題と言えそうだ。
国内では製造業以外での市場への期待も高まっている。東京オリンピック・パラリンピック関連の投資はまだ本格的とは言えないが、東京では都心再開発に向けた建設ラッシュが継続しており、受配電盤メーカーは多忙を極め、処理能力を超えた分が東北・北海道や、中部・関西に流れているといわれている。当面この需要が継続すると見られ、ポストオリンピックの需要動向に関心が集まっている。
国内市場の成熟化で各商社は、営業拠点の拡充に動いている。海外は中国以外を視野に入れ始める一方、国内は関東地区がターゲットになっている。同業者を買収する動きも目立ち始めた。
インダストリー4.0やIoTなど、新しいものづくりを目指した潮流の中で、エンジニアリング力の強化を進めながらも、いま商社に求められている存在価値は何かを考え、原点回帰する動きもある。いずれにしても、大きな潮流の中での施策の重要性がますます増している。

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