IoTを活用してテレマティクス2.0を目指したアショック・レイランド(前編)〜SAPジャパンの超リアルタイムビジネスが変える常識(16)

〜新たなビジネス価値生み出す〜

◆車両販売数を増やすイネーブラー

インドの大手商用車メーカーのアショック・レイランドは、IoTを活用してどんな新しい価値を届けることができるでしょうか?

テレマティクス領域はIoTのテーマの中でも非常にホットです。そして、アショック社が目指したテレマティクス2.0は単なる位置情報の提供に閉じず、新たなビジネス価値を生み出すための先進的な取り組みです。本ブログでは、この事例の概要およびポイントについてお伝えします。
なお、この事例はSAP HANA Innovation Award 2015のビジネスアプリケーションのアナリティクス部門において、金賞を獲得しました。
■毎日7000万人以上の乗客を支えるアショック・レイランド
アショック・レイランドはインドでタタ・モーターズに次いで第2位のシェアを持つ商用車メーカーです。2015年は30%以上の売り上げ成長を達成し、ビジネスを大きく拡大しています。インド国内向け車両は60万台を超える一方、輸出も8万台を超え、30カ国以上に展開しています。特にバス製造業としては世界第4位の売り上げを誇り、7000万人以上の乗客が毎日アショック社のバスを使っています。
■劣悪なインドの交通環境
彼らの主戦場であるインドでは、人口増加に対して道路ルールやインフラ整備が十分に追いついていません。インドの道路事情をみたことがありますか? 絶えずクラクションが鳴り、車が逆走し、横断歩道のない場所で歩行者が横断するなど日本では考えられないような現象がしばしば起こっています。交通事故による死亡者数は世界トップで、平均して4分に一度交通事故で亡くなっているそうです。また、道路の渋滞による経済的損害は60兆円に上るといわれています。
そんな中で、インドのIT化も急激に進んでおり、ITによる情報配信システムなどを通して、都市部の交通渋滞の緩和や安全性向上が期待されています。インドのテレマティクス市場は今後5年間で平均30%以上成長すると予測されています。そのため、新しい技術を何にどう適用していくかが非常に重要なテーマとなります。
■アショック社によるテレマティクス2.0

では、アショック社はテレマティクスをどう考えているのでしょうか? アショックは車両メーカーであり、テレマティクスサービスそのもので利益を生み出すというより、車両の販売数を増やすためのイネーブラーとして位置付けています。 標準的なテレマティクスサービスは、すでにたくさんのテレマティクスサービスプロバイダーによって提供されています。位置情報の提供やジオフェンシング(地図上にバーチャルなフェンスを設置し、その中に特定の車両が出入りした時にシステムからメッセージを送るなどの処理を自動的に行う仕組み)、レポーティングなど。それゆえ、アショック社がそれらのサービスをなぞるのではなく、センサデータや業務データ(ERPやCRM、文書管理システムなど)と組み合わせたより高度な分析を通して、付加価値の高いサービスを付加しようと考えました。
このコンセプトをテレマティクス2.0と呼んでいます。標準的なテレマティクスサービスでは通信ネットワークのレイテンシーなどが重要ですが、テレマティクス2.0ではそこからどのようなビジネス的な価値を引き出すか?に重きを置きます。

※本稿は公開情報をもとに筆者が構成したものであり、アショック社のレビューを受けたものではありません。
(五十嵐 剛)

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