【配線接続機器特集】「つなぐ」を支える注目分野 工数削減へ開発進む

端子台やコネクタ・ソケット、ケーブルアクセサリなどの配線接続機器は、ⅠoTなどの言葉で代表される「つなげる・つながる」部分を支える部品として注目が集まっている。工場、ビル、インフラ設備をはじめとした配線接続機器の関連市場は、分野によるばらつきはあるものの全般的には堅調な拡大基調を維持している。製品は小型・薄型に加え、配線作業性、接続信頼性などを重視した開発が進んでいる。製造業の国内回帰や人手不足への対応といった面からも市場拡大が期待できそうだ。

■ハイテクからローテクまで幅広く

国内の配線接続機器の市場は4600億円前後とみられる。コネクタが約4000億円、端子台・ソケットが500億円、ケーブルアクセサリ類が100億円ぐらいになっている。コネクタを中心に海外生産が増加しているが、最近まで円安基調であったこともあり国内生産も安定している。

同時に、海外メーカーの国内市場での販売活動が年々強まっており、シェアも高まりつつある。

端子台の国内市場は、自動車を中心とした製造業をはじめ、電力関連、新エネルギー関連、ビル設備などの投資が継続して、需要を盛り上げている。

製造業では、スマホ、タブレットなどの情報通信関連の好調を背景に半導体・液晶製造装置関連が堅調な拡大を継続している。

日本半導体製造装置協会(SEAJ)による半導体・液晶製造装置の販売高は、2016年度が前年度比9.8%増と2桁近い伸びを見込んでいる。中国、韓国での多結晶シリコンや有機ELなどの生産に向けた投資が増加していることで、リーマン・ショック以降では最高の販売になる。

ロボットも、海外では人件費の高騰や高精度なものづくり需要に対応して市場が大きく拡大。国内でも人手不足や安定した品質の確保、さらには介護やサービス用など、製造業、非製造業の両面から採用が増えている。日本ロボット工業会(JARA)では16年度の生産を過去最高になるという見通しを立てており、継続した需要が続く。

このところ停滞気味の工作機械は、中国市場や資源開発向け機械・装置の低迷から前年割れが続いているが、月ベースでは1000億円台を維持している。自動車、航空機、スマホなどの主要需要分野は比較的安定して推移しており、今後は上昇基調に転じることが期待されている。

新エネルギー関連も端子台需要を牽引している。PV(太陽光発電)システムは一時ほどの勢いはなくなりつつあるものの、未着工のメガPVが相当数残っていることからまだ継続需要が見込め、堅調な家庭用PVと合わせて期待できる。風力発電、EV(電気自動車)やPEV(プラグイン電気自動車)向けのバッテリなどを含めて、関連需要は依然見込める。

こうした再生可能エネルギーは、商用電気として使用するには、DC(直流)とAC(交流)を変換することが必要で、DC600Vなどといった高圧への対応が求められる。DCに対応した端子台は、高圧への耐性が必要となってくるが、DC1000V、DC1500Vに対応する端子台も開発されており、新たな需要を生み出している。

さらに、停止していた原子力発電の再稼働が始まりつつある。原発再稼働による端子台などへの波及効果は大きく、今後、電力関連の投資拡大が端子台市場の底上げにつながるものとみられる。

最近の端子台は小型・省スペース化に加え、配線工数の削減とDCの高耐圧化などがトレンドとして挙げられる。IoT化の進む中で、機器や設備などをつなぐ機会は飛躍的に増えてくる。インダストリー4.0やインダストリアル・インターネット・コンソーシアムなどに代表される新しいものづくりの実現において、配線接続機器の果たす役割も飛躍的に増えてくる。省スペース・省工数・確実な接続信頼性といったニーズも必然的に高くなり、製品開発力が求められてくる。

■新しい波「ハイブリッド端子台」

端子台の接続方法は、日本で主流となっているねじ式、欧米で主流となっている圧着端子を使用しないスプリング式(ねじレス式)、圧接式などがある。

日本はねじを使った丸圧着端子台(丸端)が長年使用され、定着している。特に高圧・大電流用途や振動の多い用途ではねじ式の使用が多い。接続信頼性が高いことが大きな理由だ。しかし、ねじ式は配線作業の手間がスプリング式に比べ多くかかるのが難点となっている。ねじの緩みを直す増し締め作業も必要になることが多い。このため、ねじとばねを組み合わせて、仮止め作業が容易にできるようにしたり、ねじの脱落を防ぐ構造にするなど工夫が加えられている。

スプリング式は配線作業の容易さと、作業スピードの速さでねじ式に比べ格段に優れている。日本配電制御システム工業会(JSIA)は、ねじ式とスプリング式の作業性などについて実機によって検証を行ったが、スプリング式はねじ式に比べ最大で工数が半減する効果が生まれるという結果も出ている。

日本で定着している丸圧着端子台(丸端)の文化に一石を投じたのが、1台の端子台で丸/Y形端子とスプリング端子を共用できる「ハイブリッド端子台」である。

端子台の片方が丸/Y形端子台、もう片方がスプリング式となっており、配電盤に設置する内線はスプリング式、外線は現場の電気工事によく使用して慣れている丸/Y形端子台として使えるため、それぞれにとって都合がよいといえる。

端子台の材質も、日本の端子台同様になじみのあるポリカーボネートを採用して、耐衝撃性、耐久性、安定性を確保している。

最近は市場のグローバル化もあり、スプリング式に代表される欧州式端子台の採用・使用分野が自動車、工作機械、半導体製造装置、食品機械、船舶、信号、電力など、広がってきている。従来、国内向けと輸出向けで端子台を使い分けることが多かったが、国際標準化の流れもあり欧州式端子台に一本化する傾向が強まっている。生産コストの削減や在庫管理上からも有効といえる。

ただ、国内市場では丸/Y形端子は全体の約70%で使用されているといわれ、依然大きな影響力を有している。前述の「ハイブリッド端子台」もそうした声に応える形で開発されたもので、この文化を変えられるかが注目される。

欧州式端子台は、これまで小電流タイプの通信用途での採用が多かったが、最近は1500V/300Aクラスの高圧・高電流の動力・電源用途に対応した、電線径150平方ミリという太線でもドライバーを使ってワンタッチで裸の電線接続が可能な端子台も販売されている。こうした用途は従来、ねじの緩みを心配することもあり、ねじ式の使用がほとんどだった。

特に大電流の接続が多い電力会社は丸圧着端子台(丸端)の採用が多かったが、信頼性の実証に加え、トータルコスト面も優位性が高いとしてスプリング式の採用を始めており、市場に変化が出始めている。

端子台のさらなる軽量化とコスト低減を図るため、端子部にアルミ合金を採用したアルミ端子台も注目されている。端子部を従来の銅合金からアルミ合金にすることで、端子部の重量を10%から30%軽量化できる。

コストも、アルミの原材料価格は銅よりも安く安定している。性能面でも熱伝導性と放熱性に優れ、腐食しにくいアルミ電線の配線にも適しており、さまざまな産業分野で使用できる。

端子台は、使いやすさの向上と高電流なDC市場の拡大で新たな時代を迎えようとしている。機器の安全と信頼性確保に向けた取り組みがさらに続きそうだ。

端子台メーカーの多くが会員となっている日本電気制御機器工業会(NECA)ではこのほど「電気安全ガイドブック」をまとめた。このガイドブックはPVなどの増加で、DC電流に対する安全な使用方法をまとめたもの。DC機器のメンテナンスや火災発生時の消火活動など、従来とは異なった安全対応が求められることになる。

■Ethernet普及 期待高まる車載市場

一方、コネクタは、自動車や鉄道車両、放送機器、電話などの通信機器、事務機器、家電、ゲーム機器など幅広い分野で使用されている。

中でも工作機械やロボットなどの産業機器、鉄道や放送など社会や業務用分野では、大電流で、しかも厳しい使用周囲環境にも耐える仕様が要求されている。こうした堅牢ニーズに対応したコネクタは、一般的に金属製のハウジングが多いが、これをポリアミド材で成形しながら頑丈なハウジングを実現した製品も登場している。金属製に比べ軽量で、コストパフォーマンスも高いことから、今後、採用が増えてくるものと思われる。

MIL規格に代表されるように、サイズ、耐環境性能などに関してデファクトな規格が浸透し、ユーザーにとっても選定しやすい環境が整ってきた。特に産業用コネクタについては、耐環境性能や配線接続性が重視される。さらに、フィールドレベル、コントローラレベルの産業用ネットワークでもEthernetベースの通信が普及してきており、対応するケーブルとあわせてコネクタも注目されている。

自動車向けのコネクタも大きな需要になっている。最近の自動車は、電子の塊ともいえるほど電子機器を搭載している。

Ethernetで今後、特に需要が増えることが期待されているのが画像関連で、バックモニターやドライブレコーダーなどが代表的。4K・8Kといったより鮮明な画像ニーズや、高速な通信を目指した開発が進んでいる。

機器や配線間をつなぐ配線接続機器は、「つなぐ」を役割に、ワイヤレス機器が普及してもインターフェースの部分では必須だけに、今後ますます需要が広がることが見込まれている。

端子台とコネクタの融合なども進むことでより使いやすい開発が期待されている。

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