ビッグデータ市場が発達した中長期の将来像は、「Data Driven Economy(データ駆動型経済)」と呼ばれている。米国でいえわれている「Data is the new oil(データは新しい石油)」という表現も有名だが、石油のように重要な資源として経済を牽引し、ナレッジや付加価値が創出されるのである。自動車が搭載する車載システムは瞬時にデータを分析し自動運転やソーシャル機能を提供する。企業のマーケティングはオンラインデータや顧客データを活用し、効率化、高度化が進む。スマートグリッドによってエネルギーは最適化され、省エネが進む。社会インフラは安全に維持運営される。医療機関は電子カルテや検査データなどを統合し、予防医療や最適な治療に適用する。これらは実現可能な未来であり、データ駆動型経済といえる。

純粋にITの側面から見ても、コンピュータの使い方も大きく変化を遂げている。今はシステム主導であり、データはデータベース、処理システム、プログラミング、ハードウエアから制限を受けている。技術革新によってあらゆる障壁がなくなり、劇的に自動化が進むと、データ、つまりナレッジそのものを中心としてITが活用されるようになるだろう。

OECD(経済協力開発機構)が2013年に発表した「Exploring Data-Driven Innovation as a New Source of Growth」では、データ駆動型経済はあらゆる分野に影響を与え、新しい産業を創出し、競争力を高めるアドバンテージを生み出すとして、以下の表のように表現している。

例えば、データ駆動型マーケティングなどはイメージしやすいだろう。広告分野では、オンラインでクリックストリームデータが多量に収集され、データ量は拡大の一途をたどっている。このデータを活用し、個人の属性、嗜好、ニーズ等を把握し、過去に何を購入したかだけではなく、将来何が欲しいかを予測することもできる。

今はまだ購買履歴からのレコメンデーションやバナー広告が主体となっているが、パーソナライズの技術が高度化し、配送手段としてドローン(無人飛行機)が利用できるようになると、購買行為そのものが大きく変容するだろう。消費者は購買行為をせずとも、小売り側が消費者の特性に合わせて、必要性が高まった時に自動で商品を配送するようなビジネスが実現しているかもしれない。データの意味が人間を挟むことなく次のアクションを駆動させていくデータ駆動型の世界観は、ビッグデータやIoTの先に広がるものだ。今後もバズワードが現れては消えていくだろうが、世界はまだまだ大きく変革してゆくのだと考えておくことが重要であろう。

『2015 IoT時代の製造業ITソリューション -インダストリ4.0など次世代ものづくりとITベンダの戦略-』(矢野経済研究所 180,000円)より一部転載

■矢野経済研究所 主任研究員 忌部佳史
2004年矢野経済研究所入社。情報通信関連の市場調査、コンサルテーション、マーケティング戦略立案支援などを担当。現在は、製造業システムなどを含むエンタープライズIT全般およびビッグデータ、IoT、AIなどの先進テクノロジーの動向調査・研究を行っている。経済産業省登録 中小企業診断士

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