日本企業が利益を出すために-山田太郎の製造業生き残りのためのスペックマネジメント術(7)

4月に「日本版インダストリー4.0の教科書」を出版して以降、ありがたいことに毎週のように日本の製造業の未来について講演してほしいとのお声がけを頂いている。セミナーでの質問やその後の問い合わせなどで「今後、日本企業はどうやって利益を出していくべきなのか」について詳しく説明してほしいという意見が多かった。今回はこの点について触れてみたいと思う。

そのスペックというモノの付加価値をどうやって生み出しているかというと、当たり前だが、材料と人材と設備をつぎ込んで作るのだ。材料、人材、設備が三位一体となってスペックを作り込んで、製品を売り、キャッシュを回収し、再び投資に向けるという流れだ。

材料(資材、部品)を購入するにはキャッシュ(資金)がいる。これが直接変動費である。人材に払う給与と、設備投資にもキャッシュが必要だ。これが間接変動費だ。このスペックを製品化するために注ぎ込んだキャッシュより売り上げとして回収したキャッシュが多ければ、それが利益、儲けとなる。どこで儲けるかとなると、他社との競争の中で、開発計画で勝負するか、製造のスピードで勝負するか、製品の機能スペックで勝負するかにかかってくる。

ここまで書けば、冒頭の質問に対する第一の答えもおのずと見えてくる。以前の連載でも別角度で書いたが、従来からの期間損益的な考え方である「利益=売り上げ-コスト(連続生産)」ではなく、プロジェクト型の「利益=回収-投資(プロジェクト生産)」の観点で、ものごとを見ていかなければならないことがご理解いただけるだろう。

概念的にこの考え方を導入している企業は増えてきた。この概念は、ある製品に対する利益に焦点を当てているが、利益を生み出すという意味で、もう一歩進んで考えるべきポイントがある。それは、投資に対する評価の視点だ。日本企業でここまでできている企業はほとんど無い。

例えば、ある高額設備を導入したとする。ほとんどの企業では一度設備を買ってしまえば、毎年の減価償却費をどう製品に配賦するかしか考えていない。もちろん、現場のマネジメントでは、そうせざるを得ないのだが、果たしてそれが正しいのか一度考えてみる必要がある。

具体的には購入当時に想定していたその設備の稼働条件が実際に達成されているかの視点だ。極端な例をいえば、10年で償却する設備を5年後から全く使わず工場の隅に置いてあったとする。そうすると各製品の「回収-投資」はプラスになるが、事業としての損益はなぜかマイナスになるということが起こりうる。

当然、各工場の現場では設備の稼働率管理をしているが、この量産段階における管理だけでは限界がある。商品企画、製品設計に設備の稼働率の前提が大きく依存するからだ。この商品企画、製品設計と設備に対する評価をひも付け、PDCAを回すことで、これら固定費に対するマネジメントを定常的に行うことができるようになる。

既に、変動費の引き下げについては、調達改革などを通じてある程度成果が出ている。それと比べるとこの固定費の引き下げについては、まだ甘いといわざるを得ない。欧米の製造業では製品バリエーションをむやみに広げることが少ないため、この投資に関する評価は結果的に進んでいる。

なぜ、この固定費に対する投資の評価が今後日本の製造業が利益を出し続けるために重要なポイントとなるのだろうか。それは、経営の不確実性が増す中、損益分岐点比率を引き下げ、経営の自由度を高めるためにはこの固定費率をどう引き下げていくかがキモとなるからだ。そしてもちろん、この固定費に対する投資が最適化されれば利益率が格段に向上することも明らかだろう。

■山田太郎(やまだ・たろう)参議院議員
慶大経済卒、早大院博士課程単位取得。外資系コンサルティング会社を経て製造業専門のコンサルティング会社を創業、3年半で東証マザーズに上場。東工大特任教授、早大客員准教授、東大非常勤講師、清華大講師など歴任。これまでの経験を生かしステーツマン(政治家)として活躍中。

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