堅調続く操作用スイッチ あらゆる産業で高い需要維持

操作用スイッチの市場が堅調に推移している。全産業にわたって需要が安定しており、先行きへの不安感は少ない。日本電気制御機器工業会(NECA)の2015年度(15年4月~16年3月)出荷見通しは410億円(前年度比2.5%増)としているが、上期は201億円(同0.9%増)と微増となっている。製造業だけでなく、非製造業、公共投資など各分野で満遍なく伸ばしている。製品傾向も小型・薄型化に加え、省配線化や省工数化、DC機器用高電流対応、デザインなどが重視される傾向は依然継続しており、当面この状況が継続するものと見られる。

機器・装置のインターフェイスを担う操作用スイッチの出荷額は、NECAが産業用や業務民生機器用を中心にまとめており、14年度の出荷額は、前年度比4.8%増の401億円となっている。国内外とも堅調に拡大した。

15年度上期の出荷額は、前年同期比100.9%の約201億円。第1四半期は同105.7%の103億円となったが、第2四半期が同96.4%の98億円と前年同期を下回っている。操作用スイッチの統計は、NECA以外でも、電子情報技術産業協会(JEITA)が、家電など民生機器用や車載用などの統計をまとめている。これらの生産を加えると操作用スイッチとしての市場はさらに大きくなる。

操作用スイッチ市場を取り巻く環境は全般的に好調に推移している。製造業は、自動車、半導体、工作機械、電子部品実装装置、ロボット、3品(食品、薬品、化粧品)関連機械などが安定した需要を維持している。前年同期に比べると月によっては落ち込んでいる部分もあるが、全体としてプラス基調となっている。

円安基調が続いていることもあり、海外にシフトしていた生産を国内へと戻す動きも出始めており、新設やリニューアルに向けた設備投資の動きも活発化している。

非製造業の動きも目立つ。老朽化や省エネ化を目指した社会インフラ整備に向けたリニューアル需要だ。20年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた鉄道、道路、上下水道、各種施設の新設やリニューアルの投資が継続して行われており、集中的な投資が見込まれている。

ビルや工場も省エネや効率化に向けた設備更新を継続して行っており、これに加え、東北地区の震災からの復興に向けた投資が進められていることから、受配電機器を中心に旺盛な需要を見せている。ソーラーや風力といった自然エネルギーを利用した発電は、ソーラー発電に対して先行き需要への不安感が見られるものの、家庭用のソーラー発電は住宅メーカーのセット販売効果もあり、以前から好調な需要を維持して、操作用スイッチ市場の底上げに貢献している。

操作用スイッチのこれからの市場として期待をされているのが、農業関連と医療関連だ。農業関連では、農業へのIT技術活用に向けて、コンピュータ、センサをはじめ、バイオやバブル(泡)技術といった新しいハイテク技術の投入も研究が進められており、今後の成長産業として注目を集めている。医療も高齢化社会の進展や健康への関心の高まりなどもあり、医療機器周辺は次世代の有望産業としての期待が高まっている。介護・福祉機器などとも合わさった形で、操作用スイッチの需要増が見込まれる。

操作用スイッチは、押しボタン、照光式押しボタン、セレクタ、カム、トグル、ロッカー、フット、多方向、デジタル・DIP、シートキーボード、タクティルのほか、イネーブルやセーフティなど安全関連で、多種多様なスイッチが使用用途によって使い分けされている。

こうした中で、製品全般に小型・薄型・短胴化傾向はほぼ一巡し、現在は安全性、信頼性、保護構造、デザイン性などをポイントに開発が進んでいる。

中でもデザインと保護構造の進展は著しい。機能を果たせば良いとされていた操作用スイッチであるが、最近は搭載機器とのマッチングを重視する傾向が強まってきている。

スイッチ筐体(きょうたい)をメタル調の素材にしたり、本体の色合いを一般的に黒が多い中で、赤や橙(だいだい)といった目立つスイッチも増えている。こうしたデザインはスイッチの機能を果たせば良いという従来の考えから、スイッチも目立たせることで、機器全体のイメージが上がるという設計コンセプトが大きく影響している。目立つスイッチのためにはデザイン性も重視され、機械・装置が稼働していない時のデザイン、稼働している時のデザインといったように、使用している周囲環境に配慮した製品も発売されている。

■性能に加えデザイン性も重視
押しボタンスイッチでは、操作部分の高さを抑えた薄型・フラットタイプが浸透している。薄いことによるデザイン性の良さだけでなく、凸凹の少ない操作パネル面は、食品機械や半導体製造装置においてゴミや埃(ほこり)の付着を防ぐとともに、パネル面の突起部分を抑えることで誤操作などの危険性を低くする目的もある。

スイッチを押す力で発電する電気を活用した自己発電式と、ワイヤレスでスイッチ間の送受信ができるスイッチを組み合わせた製品も注目されている。電源のないところでも使え、スイッチ間の配線作業も不要なことから、操作用スイッチの新しいスタイルとして今後の普及が期待されている。

表示灯とスイッチが一体化した照光式スイッチは、スペース性の良さから操作用スイッチの中で最も使用されているが、ここで使用されるLEDの高輝度化も著しい。LEDは高輝度、長寿命、低消費電力が大きな特徴であるが、特に低消費電力は大きな魅力で、装置全体でスイッチを多数使用する場合、メリットが大きい。高輝度LEDの開発で視認性が向上し、また、少ないLEDチップ数でも輝度を確保できることに伴い、スイッチの薄型化や小型化をさらに進める効果につながっている。光源はLEDだけでなく、液晶や有機ELなども使用されている。

タクティルスイッチは、プリント基板に直付けし、シートキーボードスイッチやパネルスイッチなどと組み合わせて使用することが多く、特に携帯電話の多機能化に伴い、需要が拡大している。低背化、インチピッチを採用した端子が特徴で、丸洗い可能な密閉構造や照光タイプなどもあり、確実な操作感が得られる。

DIPスイッチやデジタルスイッチは、プリント基板上にCPUを搭載したボードコンピュータや、情報・通信機器などで数多く使用されている。特にDIPスイッチは、一般的に一度設定するとその後はあまり操作しないことから、接触信頼性の確保が求められる。ナイフエッジ構造などにより、フラックスなどの浸入による接触不良の解消を図るとともに、プリント基板実装後の洗浄もシールテープなしで可能である。

ロッカースイッチは、電源のオン・オフなどによく使われる最も一般的なスイッチ。比較的、大電流の入り・切りを行うため、操作時の突入電流による接点やハウジング対策が重要となっている。機器の小型化が進む中で、シーソースイッチの小型化も進んでいる。同時に、屋外や環境の悪いところでの使用に対応して、防じん・防水対策を施した製品も増えている。

ソーラー発電や充電スタンドなどではDC(直流)機器が使用されることが多いことから、DCの高電流対応品の開発も進んでいる。シーソースイッチでDC400Vや600V、さらには1000Vといった高圧なDC機器のスイッチ開閉が必要となる。大きなアークの発生など接点への負荷が大きくスイッチの構造に高度な技術が求められることから、材質や回路設計など、各社が工夫を凝らし開発に取り組んでいる。
トグルスイッチは、IP67相当の保護構造を実現しており、水のかかる用途でも高い信頼性で使用できる。

操作レバーを全面照光式にした製品もあり、暗い場所でもオン・オフが操作レバーの位置で確認できる。一部のトグルスイッチやスライドスイッチでは、スナップアクション方式を採用。クイックな動作で出力の安定を図り、接触信頼性を高めると同時に長寿命化を実現。

多方向スイッチは、1本のレバーで多くの開閉が可能で、細かな操作を行う用途に最適である。無接点化やワイヤレス化の取り組みも進んでいる。

カムスイッチは、多くの回路とノッチが得られるため、複雑な開閉などに対応できる。用途によって操作開閉頻度に大きな差があるため、接触信頼性の確保が最優先で求められている。

フットスイッチは防浸・防水性能が向上しており、水中での使用や医療分野、食品分野でも安心して使用できる。安全操作の面でも、同時にBluetoothなどを使用したワイヤレスタイプは、配線がないことで、医療現場などたくさんの機器が使用されている中で、ケーブルがあることによるトラブルを防ぐことができる。
操作用スイッチは、基本的にメカニカル動作であることなどから確実な操作性が確保できるとして高い信頼性を得ている。為替の円安基調での推移もあり、輸出競争力も高まっている。

今後、デザイン力の向上、配線作業の省力化、保護特性の向上、無接点化などに向けた製品開発が進むことが予想されている。電気の使用されているところには必ずスイッチが必要なだけに、今後も安定した市場を形成していくのは確実である。

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