不連続線線に異状なし 黒川想介 (8)

鳥が空を飛び、魚が水中を泳ぐことを生業としているように、人は物をつくることを生業としている。鳥や魚は自然界の流れのままに生活をするが、人は物づくりが生業であるから、自然界に抗って生活をする。だから人が構成する世の中の変化は速い。一日一日と変化しているが、変化の渦中にいると変化を感じない。時の経過を振り返って見ると、世の中が変わっていることに気づく。

技術の発達は時代の変化を加速させる。工業化技術に情報化技術が加わった90年代後半から世の中の変化が速く感じられるようになった。世界有数の経済大国になってから、部品やコンポ機器営業はいつも顧客から追いかけられるような忙しさの渦中で過ごしてきている。そのため、顧客は日に日に変化しているという感じを受けないまま一年が過ぎてしまう。しかし10年前20年前の顧客はどうだったかと振り返ってみると、つくっている物も違ってきている。見慣れているような製造現場の工程や設備も十数年前と比べると、やはり変わっていることに気づく。また顧客の売上げ額ランキングの現在と10年前を比べてみると上位の入れ替わりに気づくし、上位の顧客の業種が変わっていることにも気づく。営業の戦略が変更されてなくても、大きく様変わりしていることに驚くのである。

90年代に入ると何となく情報化社会というものを感じられるようになって、21世紀に入るとあっという間に情報技術が世間を変えてきた。物づくりをしている製造業は、昔も今も工業技術の粋を集めた機械や装置を使って物づくりをしているので、世間で言うところの情報化の波を肌で感ずることはまだ少ない。しかし物づくりの現場にも、富の蓄積の度合に応じて情報機器や情報技術が浸透してきているのは確かである。

ここに工場の規模こそ大きいが電気部品やコンポ機器営業にとってあまり注力していない顧客がある。プロセスの監視制御を主としている大型装置を稼働させている装置産業形態のメーカーである。このメーカーは急に変わることはないが、グローバル世界の変化や国内事情に応じて戦略的投資による変化を起こす。この業態のメーカーとは、原料加工の工程をもっている金属製品、化学製品のメーカーや三品産業と言われる食品、薬品、化粧品などのメーカーだ。

比較的大型の装置・設備を稼働させているため、エネルギーの消費は巨大である。それを制御するのに大きな電力を使う。エネルギーに使う化石燃料の外国依存度が高い日本は国際トラブルや国際決裁手段である為替変動の影響を受けやすく、苦労の多い産業である。

機械装置メーカーや産業機器メーカーのつくった設備を使って原料加工を主とした物づくりをしているので、設備に使われている部品や機器商品を直接的にたくさん買うことはない。そのために、部品や機器商品を売る営業マンにとってはなじみの薄いメーカーとなっている。しかし、今後はこの業態のメーカーに対して真摯に取り組む必要がある。なぜなら積極的な設備投資をする理由があるからだ。化学製品は、電子機器や自動車などの部品や中間材として輸出の花形産業の地位を築いた。したがって増設や環境に対する設備投資には積極的であり、また大量の電気を使うので電力料金の高い日本では省エネ投資はマストである。排熱利用技術をつくりあげた鉄鋼・金属もますます省エネに向かう。加工食品は国家戦略で輸出は増加する。薬品は健康産業として伸びる。これらの産業の設備には情報技術の浸透が活発になる。なじみを薄くしていると、次の新しい需要は見えてこない。
(次回は11月12日付掲載)

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