太陽光発電に潜むリスクとマネジメント

2014年3月26日

太陽光発電システムの不具合に起因すると考えられる焼損事故や火災事故が欧米で発生していることをご存じでしょうか。そのため米国では安全規格が制定されました。死亡事故が起きているからです。事故の相当数の遠因が「アークフォルト」という空間をアークで通電してしまう現象(図参照)で、その温度は数1000℃に達し、これにより火災や焼損事故が起こると考えられています。

日本でも同様の事故が起きていると考えられますが、アークフォルトに関する認知度が低いため、ショートや漏電、地絡と混同して処理されている可能性があります。

20年以上の保証寿命を謳う太陽光発電システムですが、アークフォルトはその保証期間内であっても起こる恐れのある重大な現象です。

米国では、この事故に対し安全規格(UL)を制定・施行したことにより一般ユーザーにその危険性が知れ渡りました。日本の多くの家屋は米国と同じ木造です。太陽光発電の普及では先進である米国の安全規格とその運用方法を学ぶことは、我が国の太陽光発電のリスク・マネジメントにとって非常に参考になります。

欧州では、再生可能エネルギーの雑誌などでアークフォルトの事故が報告されるようになり、ドイツの科学博物館ではアークフォルトのデモ機により現象の可視化と公開に努めています。このように欧米では太陽光発電のメリットだけでなく、背後にあるリスクも公表するようになりました。

太陽光発電システム(パネルやパワーコンディショナーなど一連の系統)でいったん火災が起きると消火活動は困難を極めます。つまり、パネルは火災の最中でも昼間の太陽光で発電を続け、夜間であってもその炎の光により発電する可能性があるため、消防士が容易に放水できないのです。水を家屋にかけると、水柱(消防ホースからの放水)を通して感電する恐れがあり、最悪の場合、死に至るからです。

アークフォルトの主な発端は接触不良にあると考えられます。この接触不良によるジュール熱で雰囲気温度が上がり、やがて熱電子による通電に変態します。これがアークフォルトの正体です。一般の交流電源では起こりにくい、直流高電圧特有の現象です。特に電路の経年変化や接合部の不良(パネル内部の不良はんだ、配線コネクタの緩い嵌合、ネジの緩みなど)、あるいは電気工事の品質不良などが複合的に重なって起こる可能性があります。

また、日本の高温多湿の気候や台風による風水害、地震(軽微であっても)による接合部の劣化、あるいは、鳥の糞や巣、ネズミやタヌキ、ハクビシンなどの動物が齧(かじ)ることで発生するケーブルの傷みも経年変化を早めアークフォルトの発生の温床を作ります。

アークフォルトは漏電と同じように経年変化で起こり得る直流電気回路の不具合です。アークフォルトに備えて、アークフォルト遮断器により、火が出る前に素早くパネル回路を遮断し、アークを消滅(消弧)させることがリスク・マネジメントとして求められています。

20年の間に1000万円の売電ができたとしても、21年後に火災で家屋を失うことになれば、元も子もなくなってしまいます。
(筆者=株式会社イーティーエィ
コンポーネンツ・江角敏史代表取締役社長)