電磁開閉器特集

2014年2月26日

電磁開閉器(マグネットスイッチ)の市場が回復基調を続けている。工作機械、半導体製造装置などの生産が堅調な拡大を見せていることに加え、ソーラー(PV)発電をはじめとした新エネルギー発電への投資が、市場の伸びを支えている。ビルのリニューアル化の動きも追い風になっている。日本電機工業会(JEMA)の出荷統計では、2013年が前年比5・3%増と2年振りのプラスとなっている。機器・装置全体が小型化傾向を強める中で、電磁開閉器を設置するスペースも小さくすることが求められており、年々小型化が進んでいる。工場の海外移転も増えていることから、グローバル市場に対応した生産体制や規格対応などでの取り組みが進んでいる。

電気回路の開閉制御を行うために、電磁石で接点を開閉する電磁接触器(コンタクタ)と、電動機の過負荷保護を行うために熱を利用して動作する熱動型過負荷継電器(サーマルリレー)を組み合わせた電磁開閉器は、モーターなどを使用した機械、装置、設備には必須の機器として使用されている。

負荷のON/OFFや、過負荷電流が流れて機器の回路が焼損する事故を防止する大きな役割を果たしている。

工作機械、半導体・液晶製造装置、エレベーター、空調機器、配電盤など幅広い分野で、モーターの起動・停止、照明・ヒーターなどのON/OFFなどで使用されている。
グローバルでは2000億円市場

JEMAの出荷統計によると、12年は249億円と前年比6・3%減少したが、13年は同5・3%増の263億円と回復した。昨年夏以降は堅調に拡大基調で推移しており、今後も伸びが続くものと見られている。ピーク時に年間500億円前後を形成していた国内市場であるが、海外生産の拡大や単価の下落傾向から国内の生産額はピーク時の半分近くになっている。グローバルでは約2000億円の市場があるものと推定され、金額はさほど減少していない。台数ではむしろ増加していると見られ、電磁開閉器各社の生産数量は、ピーク時に並ぶか、それを超えているところもあり、依然重要な機器として位置付けられている。

12年の需要が拡大した要因としては、工作機械と半導体製造装置の需要回復、ビルや病院、学校などの新築・リニューアルの活発化、それにPV発電拡大などに伴うパワーコンディショナーの生産拡大が大きな要因として挙げられる。工作機械と半導体製造装置は昨年秋以降、急速に受注が増加しており、ピーク時の勢いに戻りつつある。エネルギーの効率利用という点からもビルや、インフラ施設のリニューアル化も著しく、空調やエレベーターなどと一体となって、電磁開閉器の需要拡大につながっている。

パワーコンディショナーでは電磁開閉器が使用されないものもあるが、新たな期待市場として、牽引役を果たしている。

PV発電では、メガソーラーなどで発電の業者の申請のみを行い、実際に着工していないところがかなりあることで、パワーコンディショナーやパネルの需要が停滞していた。しかし、着工しない業者には認可を取り消すという方針が出そうなことから、ここに来てパワーコンディショナーやパネルの受注が急増している。消費税増税前の駆け込み需要も加わり、電磁開閉器の需要拡大にも大きな追い風になりそうだ。

電磁開閉器は技術的に完成の域にあると言われながらも、依然開発・改良が進められている。最近のポイントは小型化、省エネ化、グローバル化対応、省配線化と配線作業性の向上、環境負荷の低減、長寿命化、安全対策などに重点が置かれている。
約15~30%の省電力化実現

中でも小型化への取り組みが意欲的に行われている。制御盤の小型・薄型化が進展する中で、10Aフレーム以下の小容量タイプでは、横幅36ミリを実現して、収納スペースの削減と、駆動電力の低減を図っている。小型化・低消費電力化は、環境配慮と素材の節約にもつながる。電力消費量の削減では、電磁石の改良も行っており、電磁石容量で約15~30%の省電力化を実現している。

省配線化と配線作業性の向上では、端子の配線ねじを外さなくても配線できるようにしたり、バネを使って仮止めが容易にできるようにしたりと知恵を絞っている。この端子構造は、日本と海外では異なっていることから、使われる地域の実情に応じて選択できるように、棒、先開き、丸型、スプリング、ファストンなど多彩に用意している。作業性の良さでは欧州タイプの圧着端子を使わないで、棒線、より線がそのまま使用できる接続方式が有利と言われているが、日本では電力や官公庁向けで、圧着端子の使用を求めているところが多く、納入先ごとに仕様を変えているのが実情だ。

省配線化の一環として、電磁開閉器の主回路の高さを統一することで、専用ブスバーによる一次側渡り配線ができるようになっている。これにより、配線数が大幅に減らせ、配線作業時間短縮と誤配線の防止につながる。さらに、可逆型電磁接触器に、電気的インターロック用配線を内蔵したタイプも開発されており、インターロック配線が不要になるほか、スペースもほとんど同じで済むため、内蔵スペースを有効に生かせる。

安全対策では、端子部に不用意に接触しないように感電防止構造を採用した製品が一般化、不用意な接触によって誤作動したり、異物が本体に侵入したりしないように保護カバーを標準で装備している。使用地域ごとの品種の増加なども防止でき、在庫の増加も防げる。

さらに、制御回路と主回路の誤配線を防ぐために、それぞれの端子色を変えることで分かりやすくしたり、主回路と補助回路の端子配線の干渉防止と作業性向上へ端子配列を工夫した設計も行われている。電磁開閉器の接点溶着が発生した場合でも、安全開離機構(ミラーコンタクト)として、補助接点が確実に作動する機能も内蔵しており、事故の防止を図っている。
長寿命化もさらに進む

長寿命化もこのところ格段に進んでおり、電気的開閉耐久性は200万回、機械的開閉耐久性は2000万回を標準仕様にしている製品が多い。ほとんどの用途ではこのような開閉を行うことは少ないものの、ホイストクレーンやガソリンスタンドの給油機などは開閉頻度が比較的多い。開閉が少ないことで長く使用できることになるが、JEMAでは事故を防ぐために、適切な時期に電磁開閉器の点検と更新を推奨している。

電磁開閉器の故障例としては、溶着による焼損、短絡、ゴムや樹脂部品の経年劣化による破損、硫化銀生成による接点導通不良などが挙げられる。

JEMAでは、このほど「電磁開閉器更新ガイダンス」と題したパンフレットを初めて作成し、電磁開閉器による重大な事故発生防止の啓蒙を行っている。

特に使用開始から10年が経過したり、製品規定の開閉寿命を経過した電磁開閉器の更新を促すほか、10年以下でも(1)電磁開閉器が異常に熱くなっている(2)電磁開閉器から異臭や異音がする(3)電磁開閉器の外観が変色している(4)電磁開閉器の周辺に塵埃が堆積している(5)サーマルリレーのテストボタンで、トリップ・リセット動作ができない場合がある、などの事象があればメーカーなどに相談することを求めている。

電磁開閉器を交換することで、事故の未然防止につながるだけでなく、事故発生時の復旧、原因追究や対策などの労力やコストを抑えることもできる。

電磁開閉器は、機器に内蔵して使用されることから、実際に使用される国に対応した規格の取得が求められる。JIS・JEMやIEC、VDE・DIN、BS・ENなどをはじめ、UL、CSA、CE、TUV、GB・CCCなどが代表的な規格として取得や準拠している製品が多い。

市場のグローバル化が著しいだけに、この傾向は国際標準化の一環としてとらえられているが、規格によっては設計変更が必要なことから、販売地域に限定した設計にすることで、コスト低減を図ろうとする動きもある。

電気回路には、配線用遮断器、電磁接触器、サーマルリレーが使われ、短絡事故からの電線保護、電動機の過負荷保護などを行っているが、これの省スペース化と省配線化を実現できるモータスタータの動向が日本でも注目されている。配線用遮断器、電磁接触器、サーマルリレーの代わりに、モータブレーカと直流低消費電力型の電磁接触器を採用することによって取り付け面積を、従来の3分の1まで削減することができる。

モータブレーカと電磁接触器を専用パーツで一体化しているために、従来の配線用遮断器と電磁接触器を電線1本1本で配線する作業も不要になり、配線時間は従来の半分に削減することが可能になるなど、トータルコストダウンに効果を発揮する。欧米を中心にこの方式が普及しているが、日本では配線方式や電圧の違いなどからあまり普及していない。しかし市場のグローバル化で日本から海外市場に向けて輸出する機械が増加する中で、今後対応が求められることが予想され、市場への浸透が注目される。
各社、新たな付加価値を追求

電磁開閉器各社は成熟した製品の中でも新たな付加価値を追求して、販売競争を有利にしようと取り組んでいる。コストダウンでは、ロボットなどの自動化機器を駆使して、生産効率を上げる動きが定着してきた。また、2次元バーコードなどを使って、製品のトレーサビリティ管理を行うことで、製品トラブル時の対応がスムーズに行える取り組みも出てきている。

東京オリンピックの開催などに伴う投資の活発化は、電磁開閉器を取り巻く環境に大きな波及効果が及ぶことが期待され、今後も拡大基調が見込まれる。久しぶりに先行きへの期待が持てる時が来たと言えそうだ。