混沌時代の販売情報力黒川想介 開発技術者へのアプローチ

販売員は、顧客が提示する案件という形の商談テーマをかき集めたり、競合商品を見つけて商談テーマ化する営業活動を主力としているが、今や古い体質になりつつあると言っても過言ではない。成熟社会を実現している日本が、経済的にも政治的にも構造を変えていかなければ前に進めなくなっているように、制御コンボや電気部品の営業も同様のことが言えるのである。

営業の周囲にある諸々のことが変わってきているのは分かっても、徐々に変わっているため根本的に変わっているものに意外と気づかないものである。徐々に変わってきていることに対処して、営業は組織を変えて、売り方の強化を図って来た。徐々の変化にはこのように対症療法で解決するのが一般的である。ここで言う営業の構造改革とは、諸事情の根本的な変わり方を明確に捉えて営業関係者の意識を変えることを言う。

現状の販売員が行う主力の営業活動は前述したように、顧客が提示する案件を解決すること、競合商品を見つけテーマ化して追いかけること、戦略商品をアピールして関心を持った客先に売り込むことなどである。

どれをとっても十数年前の業界の成長後期から行ってきたやり方だ。周囲の状況に有効な活動であるには違いない。周囲の状況が以前とは変わってきているので対処として、持ち歩くツールは変わっている。商品も複合かつ高機能化しているので、商品技術の知識を詰め込んで顧客満足を得ようとしている。ウェブサイトの活用や顧客データ活用など現代ならではの対処の仕方も行っている。これらは、従来の顧客、従来の市場にはやや有効であっても、新たな成長戦略に乗った見込み客にはほとんど効かないのだ。十数年前の成長後期と現代のような成熟社会の変化を根本的に捕捉すれば分かることだ。

前回述べたように、根本的に変わっているのは社会的環境だ。販売員は元来、営業を行う時にまず相手との人間関係を意識し、良好になるように持ち込んでから商売をするのだが、相手の開発技術者は一般的に言って、人との関わり合いが苦手である。

開発技術者にとって販売員が持ち込む商品情報は、仕事上役に立つ情報の源泉となっていた。喜んで販売員を迎え受け入れていたわけではなかったが、何かおもしろい商品情報が聞けるかもしれないと思っていたから割と気軽に会ってくれた。

現代はどうだろうか。情報化時代に入って、情報通信技術が著しい発展を見せた結果、開発技術者が必要と思う商品情報や役に立つと思っている情報はネットの向こう側から取れてしまう。これまでのように販売員を情報の源泉と感じなくなった開発技術者は、元来、人との関わり合いが苦手であるという意識に戻っている。

そのような根本的なことを深く理解していないと、会ってくれないのは商品が悪いんだと思って、何か目新しい商品はないかと探す。しかし、成熟期の社会では、そんな目新しい商品が次々と出てくるものではない。それなら何か新しいアプリケーションはないかと探すが、販売員が売っている商品のアプリケーションは技術者たちに必要のないものばかりが多い。このような対症療法ではらちが明かない。

手前味噌の商品紹介から離れたら、見込み客となる開発技術者に一体どのようなアプローチをしていけばいいのか、販売員は自分の問題なのだから考えなければならない。付き合いのある開発技術者に率直に聞いてみるのも一つの方法だ。
(次回は8月21日掲載)

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