依然好調持続の配線接続機器市場 工作機械、自動車関連で堅調な需要 配線作業の省力化、安全性の向上が進展 期待される再生可能エネルギー分野震災復興向け投資の動きも注目

端子台、コネクタ、配線資材などの配線接続機器市場は、依然好調さを持続している。東日本大震災によるマイナス影響も一時的でほぼ正常な状態に戻りつつある。一方で原材料の高騰が続いており、一部では製品値上げが実施されている。好調を持続してきた半導体・液晶製造装置関連に一服感が見られるものの、工作機械、自動車関連は堅調な動きとなっており、先行きへの期待が高い。円高基調の継続で企業収益への影響が心配されるが、今後震災復興需要が出てくることが見込まれており、需要の下支えにつながるものと見られる。製品傾向は、小型・薄型化、配線作業の容易化や安全性の向上、接続信頼性の向上などが進んでいる。
配線接続機器市場は、リーマンショック以降、急速に需要が回復した。NECA(日本電気制御機器工業会)の制御専用機器の出荷統計では、10年度は前年度比22・4%増の1254億円となり、大幅に増加した。輸出が10・6%の伸びにとどまったが、国内向けは28・6%増と高い伸びを示し、国内需要の根強さを示した。

3月の東日本大震災で、コネクタ工場で大きな被害が出たが、予想以上に早く回復し、ほぼ正常な状態に戻っている。需要も震災前後と変わらず堅調に推移している。

経済産業省の機械統計では、コネクタの生産は、09年(1~12月)は、前期比24・7%減の3791億円だったが、10年は同26・0%増の4775億円と急速に回復している。11年は震災の影響がどう出るかであるが、その後の順調な回復具合から、さほど大きな影響はないものと見られる。

こうした統計などから推定すると、端子台が約450億円、ケーブルアクセサリー・配線ダクト類が約70億円と推定され、合計で約5300億円という大きな市場を形成している。

配線接続機器を取り巻く市場環境は、半導体・液晶製造装置分野、電子部品分野が堅調に推移していたが、ここに来て半導体・液晶製造装置関係が失速気味になっている。需要を支えて来たテレビ、パソコンの伸びが鈍り、ゲームや携帯電話もスマートフォンに一時の勢いがなくなりつつある。しかし、一方で自動車関連に活気が戻りつつある。グローバルでの需要が増加していることで、生産は急ピッチに回復し、海外だけでなく国内でも生産工場のリニューアル投資の動きが活発化している。これと連携して工作機械も相変わらず好調で、日本工作機械工業会は11年の受注予測を200億円上方修正して1兆3000億円という数字を発表している。工作機械は、自動車に加え、建設、航空関連、資源開発関連向けでの需要が拡大しており、しばらくはこの勢いが続きそうだ。

また、震災により福島の原子力発電所事故が起こったことで、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーが改めて注目を集めており、制御機器業界でもこうした新しい需要の拡大に向け、関連製品が次々に発売されている。

さらに、再生可能エネルギーが増加する背景を受け、電力送配電の効率化を狙ったスマートグリッドが本格化する動きを受け、新市場の創造が現実化している。電力や重電分野は、ここ数年確実な市場の動きを示している。

一方、原材料の動向は、銅や樹脂製品が一昨年後半からジワジワと値上がり、今年に入ってエンジニアプラスチックを中心に10%前後の値上げが実施され、制御機器業界でも震災前は製品値上げが一部で見られた。震災以降は、復旧・復興への取り組みが優先され、製品価格は据え置きとなっていたが、依然として原材料の高止まり状態は続いており、今後、製品値上げの動きが活発化する含みを持っている。

さらに、急激な円高傾向が企業収益を圧迫している。

端子台市場で大きな割合を占める民生機器分野では、プリント基板タイプが多く採用されている。プリント基板対応タイプは、インテリジェント化、薄型化、省スペース化、狭ピッチ化が進んでおり、さらなる伸長が見込まれる。

配線作業の省力化につながる圧着端子とバネを一体化したタイプは、各社独自のノウハウで製品展開を図り定着している。バネ式端子台は、長期間の振動にも強いため(振動によるねじの緩みがない)、公共の輸送・交通設備にも採用されている。また、欧州式の圧着端子を使わないタイプも浸透している。作業性の良さと安全性などが大きなポイントといえる。国内メーカーでも、このタイプを品ぞろえしており主流になっている。

リレーバリア、ランプバリアなどのコネクタ接続タイプでは、小型・軽量化が進み、収納ボックスの小型化、コストダウンが図られているほか、防爆構造タイプの製品も伸長している。

現場でのアース工事が不要で、非本質安全端子側の配線は電源2本とコネクタだけのため、配線工数の大幅削減につながる。国内の防爆規格やNK規格、さらに欧州のATEX、米国のFM、カナダのCSAといった海外規格にも対応している。
付加価値向上へ複合機
能搭載の動きも活発化

端子台メーカー各社では、付加価値の高い端子台の新製品を次々に開発、市場に投入している。特に、省配線化ニーズに応え、コネクタ化や複合化(ハイブリッド)などの工夫を行っている。

省配線化は、盤と盤、盤と機器、機器と機器の間をつなぐ上で作業やメンテナンスの工数削減に繋がることからニーズが高い。応用製品として、機器間や設備内の省配線を図る省配線機器・システムや伝送ターミナルなどは、接続以外の付加価値があり、新しい市場を形成している。

さらに、配線作業の容易化・省力化の観点からスタッド形端子台の需要が急増している。スタッド形端子台は、配線作業が容易で作業の省力化が図られるとともに、配線効率が高いのが特徴である。加えて、挟み込みなどの接続不良を未然に防止できる効果もあり、ネットワークのオープン化が進む中で、こうした省配線機器のウエイトが年々高まっている。

新製品では、安全確保と作業の効率化を同時に提案したものとして、圧着端子と端子ねじを正常な位置関係に規制する、配線脱落防止機能を備えた端子台が、工事現場などでの配線脱落事故を未然に防ぐものとして注目されている。さらに、IEC規格に準拠し1000V定格の高耐圧仕様と、感電事故を未然に防止する安全構造を備えた高耐圧端子台も発売されている。

そのほか、ハイブリッド端子台として、電子部品などを搭載し付加価値を高めたものも多い。サージアブソーバー素子、リレー、スイッチ、断路器、ヒューズ、LEDなどを搭載したものが一般的で、リレー搭載タイプなどは端子台メーカー以外にリレーメーカーの一部でも扱っている。

また、実配線削減でスペース効率の向上を図るため、リレーやサーキットプロテクタ、ヒューズ、スイッチを中継端子台に搭載し1ユニット化を図ったタイプや、中継端子台が不要な機能搭載型リレーターミナルも登場している。メンテナンス性では、電流容量の区分や回路のグループ分けなどに端子台のカラー化で対応するケースが増えている。

工数削減の観点では、PLCに対応するものとして、既設のPLCに接続されたケーブルを繋ぎ替えることなく、新設のPLCに置き換えることが可能なPLC変換アダプタや、PLC対応の中継コネクタ式端子台も伸長している。PLC変換アダプタは、工数が約5分の1に低減できるというのが特徴となっている。

端子間ピッチ8ミリというスペース効率の向上を図った断路端子台も各種のプラントで採用されている。前述のLED搭載タイプなども、メンテナンスを容易にするといえる。加えて、過酷な使用条件に対応するため、端子台の材質に耐油・耐薬品性の高いものを採用した製品が伸長している。

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