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【サーボモータ市況2009】V字回復見せるサーボモータ市場 中国を中心としたアジア市場向けが牽引

サーボモータ市場・製品動向 概況

サーボモーター市場は主要ユーザーである自動車・工作機械分野、半導体・液晶分野などの動きが完全に回復しておらず国内市場はまだまだ厳しい状況だが、中国を中心としたアジア市場を中心に海外市場が急速に回復、市場を牽引している。

08年の市場規模は、経済産業省の機械統計では1739億円(前期比4・8%減)、日本電機工業会の生産実績では08年度1416億円(同24・8%減)、09年度は825億円(同41・7%減)という厳しい見通しを出している。

製品の傾向は、高速・高機能化、小型・軽量化、操作性向上、セーフティ、ネットワーク化などへの対応が進んでいる。同時に高効率による省エネ化や環境対応が進んでおり、ユーザーへの最適ソリューション提供に向けた開発が進んでいる。

用途では、工業産業用途のほか、最近では社会インフラ関連、乗り物シミュレータ、外食産業、介護ベッドなど身近な分野に採用が拡大している。最近では、応答周波数2KHz、20ビット分解エンコーダという高速・高分解能タイプも登場、位置決め整定時間の大幅短縮を含め、高精度な位置決めや微細加工を実現している。

操作の向上・簡単性では、セット時間短縮やオートチューニング機能の組み合わせで、調整の手間と時間が大幅に短縮できている。低剛性も進んでおり、取り出しロボットや多関節ロボットなどで重要視されている。環境面では、アクチュエータの電動化でクリーンな使用環境を確保している。さらに小型化を図るため、周辺機器を一体化したオールインワンタイプも現れている。

半導体・液晶製造装置、工作機械向けの需要が大幅伸長

「省エネ」をキーワードにニーズが広がり、より使いやすい部品や機械・設備を生み出している。半導体・液晶などのFPD製造装置や電子部品実装装置などは小型化志向が強いことから、リニアサーボモータの採用が増えつつある。回転型サーボモータとボールねじとの組み合わせに比べると推力が大きく、短ストローク移動で加減速の繰り返しなど強みを発揮できる。サーボモータの取り付けスペースに制約があり、小型で速い動きが求められている機械などに最適だ。小型という点だけでなく、FPD製造などでは、パネルの大型化に対応して、ボールねじが長くなってたわむことが心配されているが、リニアサーボモータは、直接動いて移動するために大型になっても問題なく使える。

ますます進展する小型・高速化省エネ・高効率化も重要視

また最近では、「オールインワン・サーボモータ」とうたって、ドライバ、エンコーダ、モーションコントローラ、シーケンサ、ネットワークまでを、1台に内蔵した製品も販売されている。配線作業が不要で、省スペース化にも繋がり、トータルコストダウンにも貢献できる。そのほか、搬送機械、繊維機械などでは、1台のマシンに使用するモータ数が多く、特にサーボアンプの小型化や各軸のゲインチューニング工数の短縮が求められている。このため、回路基板をワンボード化するなど、高密度実装と最適放熱設計での超小型サーボアンプも登場している。

機械・装置と、サーボドライブを繋ぐインタフェイスも重要性を増してきている。機械・装置のコントローラとサーボドライブ間ではアナログ信号やパルス信号が標準的に使用されているが、昨今はサーボドライバーの高性能化・高機能化で、機械・装置のコントローラで制御していた機能もサーボドライバーで行うことが可能になりつつある。

これによって、従来のアナログ信号やパルス信号による指令では、精度や性能の向上が難しいとして、各種の新たな通信方式が開発され採用されつつある。

伝送速度が、最大で100Mbpsと高速であることから、各種データも同時に送受信が可能で、機械・装置のコントローラ制御だけでなく、ネットワークとして生産ライン全体に適用しようとしている。

ネットワークは、国、地域、ユーザーによって異なることから、どんなネットワークでも対応できるようにサーボモータ各社は、オプションの充実を図っている。

さらに、モーションのセーフティ化や防爆対応品の開発も進んでいる。セーフティでは、EN954 Safety Stop―0を標準装備したサーボモータも発売されているが、機能安全規格IEC61800―5―2(可変速ドライブシステムの機能安全)への対応品も今後増えてきそうだ。防爆ではATEXの新防爆基準に対応して、小型・軽量でコンパクト化したACサーボモータが標準で発売されている。そのほか、厳しい環境下でも使用できるよう保護構造IP65などを標準採用したものやIP67対応品も増えつつある。

サーボモータ市場は、今までの主力需要先がV字回復を見せる中で、完全復活に向かいつつあるが、コスト競争がますます激化しており、中国メーカーなども低価格を武器に力をつけてきている。さらなる拡大を図るためには、省エネなどを切り口にした新たな市場創出と、従来の枠にとらわれない発想の新製品開発が求められそうだ。