上昇基調の配線接続機器市場 太陽光や風力など新エネルギー分野の需要に期待 小型・薄型化と配線作業性の向上、安全性の確保、接続信頼性を追求 好調な海外市場が牽引コスト増と納期対応で課題

端子台、コネクター、配線資材などの配線接続機器は、幅広い需要の裾野に支えられて上昇基調を示している。特に、このところの急速な受注増は、配線接続機器メーカーの生産能力を超えており、納期面で苦慮するところが増えている。この動きと並行して素材価格上昇の動きも見られることで、配線接続機器各社はコスト対応にも追われている。端子台、コネクター、ケーブルアクセサリーなどの国内市場規模は、2007年で6000億円前後を形成していたが、08年秋の金融危機を契機に急速に減少、08年は5500億円前後、09年は4000億円前後と推定される。09年前半は前年同期比40~50%減少していたが、後半は急速に回復し、減少幅が25~30%前後に戻りつつある。現在の国内市場規模は、端子台が300億円前後、コネクターが3700億円前後、ケーブルアクセサリーが70億円前後と見られる。製品的には、小型・薄型化を基本に、配線作業の容易性、安全性の確保、接続信頼性の向上などが取り組まれている。加えて、環境に配慮した素材の採用やリサイクルなどが課題として挙げられている。市場のグローバル化で中国、韓国、台湾などのメーカーとの競合も見られる一方で、太陽光や風力などの新エネルギー分野の需要増に期待が高まっており、今後の動向が注目される。
端子台の市場は08年の金融危機以降、設備投資抑制の影響を大きく受けていたが、昨年5、6月を底に反転しており、月ベースでは前年同月を上回るような状況も出てきている。それを支えているのが、ソーラーや風力などの新エネルギー発電関連や、省エネ・環境への配慮からくる鉄道車両、エレベーターなどの需要増でPLCやインバーター、サーボモーター向けが拡大している。

さらに、電力送配電の効率化を狙いとしたスマートグリッドでの需要にも期待が高まっている。

この半面、自動車関連はハイブリッド車関連の一部を除いて低迷しているほか、工作機械、ロボットなども低迷している。昨年低迷した半導体・液晶製造装置分野もようやく持ち直して上昇に転じていることから、今後の期待が高まっている。

こうした需要低迷もあり、端子台各社は生産水準を大幅に縮小していたところが多かったが、昨年の夏頃からは低水準の生産能力の中で、これを上回る受注増加によって納期対応に苦慮しているメーカーが増えている。加えて、値下がりしていた素材価格も需給バランスの関係もあり、上昇基調を見せており、端子台各社はコスト増と納期遅れのダブルパンチになっている。

端子台は台湾、韓国などに加え、最近は中国メーカーも増えてきている。ローコストを前面に市場への浸透を図っているが、日本市場はコストに加え、信頼性、品質などの要求も厳しいことから、苦戦を強いられている。最近は中国を中心に日系企業の現地生産が進んでいるが、ここでの浸透をどこまでできるかが大きなポイントと言えそうだ。

日本の端子台メーカーで中国などの海外生産を行っているところはまだ少なく、現地調達となると、中国のローカルメーカーか、欧州メーカーなどが選択候補となってくる。しかし、中国ローカルメーカーの端子台の品質、信頼性に不安を持つ日系企業も多く、使用する製品によって使い分けする状況も出ているようだ。

一方、日本市場では欧州の端子台メーカーが徐々にシェアを高めている。使用する機器が輸出用となることから、欧州式の端子台の優位性が大きな力となっている。輸出用と国内用と分けて設計・生産をするという煩わしさを避けるため、輸出用の端子台に統一した機器を国内市場に投入するメーカーも増えつつあることで、一層シェアを高めている。

日本の端子台メーカーも、こうした動きに呼応した欧州式端子台の開発を進めていることから、この動きはさらに加速しそうだ。

製品傾向としては、プリント基板タイプが端子台市場の主流となっている。プリント基板対応タイプは、インテリジェント化、薄型化、省スペース化、狭ピッチ化が進んでおり、今後さらに伸長が見込まれる。

配線作業の省力化につながる圧着端子とバネを一体化したタイプは、各社独自のノウハウで製品展開を図り定着している。バネ式端子台は、長期間の振動にも強いため(振動によるねじの緩みがない)、公共の輸送・交通設備にも採用されるなど、その使い勝手の良さが認められつつある。

一方、欧州式の圧着端子を使わないタイプが急速に浸透している。作業性の良さと安全性が大きなポイントだ。配線用の工具なしでも脱着できる端子台も出てきており、一層作業性が良くなってきている。

最近は日本メーカーも圧着端子を使用しないタイプを品ぞろえに加えるところが増えており、完全に主流になりつつある。

端子台に配線接続以外に機能を付加することで、省配線化、機能性やスペースメリットの向上を狙った製品も出ている。端子台とコネクターを一体化した端子台コネクター、LEDを内蔵して通電状態を表示できる端子台、配線色に合わせて端子台色を部分々々で色を変えるカラー端子台、サージアブソーバー素子、リレー、スイッチ、断路器、ヒューズなどを搭載したハイブリッド端子台などが代表的な製品として挙げられる。

こうした複合端子台の一種として、リレーバリア、ランプバリアなどをコネクター接続にした防爆構造タイプの製品も伸長している。

現場でのアース工事が不要で、非本質安全端子側の配線は電源2本とコネクターだけのため、配線工数の大幅削減につながる。国内の防爆規格やNK規格、さらに欧州のATEX、米国のFM、カナダのCSAといった海外規格にも対応している。

端子台は配線作業の中継基地といえるが、その役割を活かして配線数の削減と配線作業の省力化を図るために省配線化が取り組まれている。

省配線化は、盤と盤、盤と機器、機器と機器の間をつなぐ上で作業やメンテナンスの工数削減に繋がる。同時に膨大な配線の誤配線を防止する面でも大きな効果が生まれる。機器間や設備内の省配線を図る省配線機器・システムや伝送ターミナルなどは、端子台の応用製品として一定の市場を形成している。

端子台需要の大きな分野の一つであるPLC市場で、既設のPLCに接続されたケーブルを繋ぎ替えることなく、新設のPLCに置き換えることが可能なPLC変換アダプタや、PLC対応の中継コネクター式端子台も注目されている。PLC変換アダプタ使用で、工数が約5分の1に低減できるというのが特徴となっている。

そのほか、スタッド端子台、断路端子台なども、スペース性、メンテナンス性などを特徴に評価を得ている。

端子台は市場のグローバル化が進む中で、国内外のメーカーがそれぞれの製品特徴を活かした製品とデリバリー体制で展開を行っているが、今後はアライアンスによる棲み分けも予想される。

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