スマートグリットの国際標準化(上) 経済産業省 日本の強みを中心に戦略展開7つの事業分野を特定し、検討

経済産業省は、2009年8月に「次世代エネルギーシステムに係る国際標準化に関する研究会」を発足させ、スマートグリッドの国際標準化に関する検討を行ってきた。研究会では、スマートグリッドの将来の市場を見定めつつ、わが国産業界の強みと弱みを踏まえてどの分野においていかなる国際標準化を進めていくべきかを明らかにしながら、関連する施策等も含めて検討した結果、26の重要アイテムを特定すると共に、国際標準化への取り組みを含めた国際標準化ロードマップとして取りまとめた。
スマートグリッドは、次世代エネルギーシステムとして、最新のIT技術を活用して電力供給、需要にかかわる課題に対応する次世代電力系統の概念である。一般に再生可能エネルギー等の分散型電源の大規模導入に向けて、従来からの大規模電源と送配電網との一体運用に加え、高速通信ネットワーク技術等を活用し、分散型電源、蓄電池や需要側の情報を統合・活用して、高効率、高品質、高信頼度の電力供給システムの実現を目指すもの。
1.国際標準化の意義

標準化とは、競争領域と協調領域の分水嶺の線引きを行うルール作りで、グローバルマーケットでは、特にルール作りのイニシアティブを取った者が有利になる。

また、「標準を制する者が市場を制する」と言われるように、標準化に失敗すれば、優れた技術であっても市場で選択されないこともある。他方で、標準化を行う時期や競争領域と協調領域の線引きの見極めを誤れば、技術を固定化しその後の技術開発を妨げる。あるいは標準化に成功しても、逆に市場で選択されないなどの弊害も起こりうる。

民間企業は、タイミングや市場フェーズごとに異なるこの分水嶺を見極めつつ、優位なポジションを獲得・維持できるよう、それぞれの事業戦略の観点から積極的にこのツールを活用することが期待される。

また、自らに有利な分水嶺を設けるために、他国に先駆けて提案するなど、議論の主導権を握ることが重要である。

国際標準化というツールを活用する場合、国際標準化におけるプレイヤーや市場の動向の全体を見極め、自らの強みや弱みを分析した上で、国際標準化のメリット・デメリットを考慮しつつ、戦略を立てることが必要になる。積極的に国際標準化提案をするという「攻め」の対応だけでなく、付加価値(差別化要素)がある分野や、逆に弱みになる部分、技術が発展途上の分野などは、あえて国際標準化しないという「守り」の戦略もあり得る。この場合も、他国から日本にとって望ましくない形で国際標準化提案がなされることがあり得るため無視はできない。個別の製品や技術単位でなく、統合されたシステムとして海外進出するためには、システムの全体像を念頭に置きつつ、標準化という一つのツールを有効に活用し、ビジネスのコアの部分を維持し続けることが重要である。そのため、想定される事業シーンを基に将来の社会の姿(グランドデザイン)を作成し、グランドデザインの達成に必要な課題として要素技術や関連技術等を分解しつつ、日本が優位にあるものを中心に戦略的な研究開発、国際標準化、差別化の手段としての認証スキームの活用、実証事業、海外市場への展開をバックキャストして検討していくことが重要である。
2.基本的方針

研究会では基本方針として、米国商務省/NIST(国立標準技術研究所)のユースケースをベースに、特に海外のスマートグリッド関連市場を念頭に置き、将来の社会の絵姿、ビジネスモデルを想定し、マクロ的な視点を持ちつつ、具体的に個別のアイテムについてミクロまで一貫した検討を行った。

この中でNISTのユースケースをベースとして、構成要素である7つの事業分野を特定し、検討対象を明確化するために分野別にイメージ図を作成している。

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