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令和の販売員心得 黒川想介 (139)エンドユーザーの事情汲み 新しい売り込み方法発見を

FA販売店営業の売り上げは、大別すると、①通称「セットメーカー」といわれる電気機器機械設備を作っているメーカーと、②それらの設備を使って製品と言うものづくりをする、通称「エンドユーザー」に分けられる。
①セットメーカーと②エンドユーザーは業態が違う顧客や見込み客であるから、売り込みの際は仕方は違うはずである。①セットメーカーの場合は、機械の設備を売っていくらの世界なので、設備を構成する部品や機器の価格、品質、納期への意識は強い。②エンドユーザーの場合は、ミスを防いで、いかに生産性を上げるかという活動している現場である。したがって、部品や機器のコストもさることながら、それ以上に使い勝手や合理性を追求する。
本来は、それらの点を十分に理解してアプローチしなければならないが、FA販売員は、区別して売り込みをかけてはいない。それにはいくつかの理由がある。
1つ目は、制御機器部品の国内需要の成長は低いものの優良なマーケットであり、多くのメーカーが参入し、大競争になっていること。2つ目は、販売員の売り上げ額を見ると、構成比は圧倒的に①セットメーカーの売り上げ比率が高いこと。3つ目は、営業活動は本来、販売員が主役を張らなければならないが、FA営業の場合、販売員が商品を主役にしてしまうこと。
このような理由によって、FA営業は①セットメーカーと②エンドユーザーの業態を区別せず、顧客であれ、見込み顧客であれ、セットメーカー向きの売り込み方になってしまう。
セットメーカーは価格にうるさいので販売員は特に価格メリットを強調して売り込みを仕掛ける癖がつく。新しい商品を扱うようになったFA販売員に対し「調子はどうか」と声をかけると、「頑張ってますが、他メーカーのものより高いから売れなくて苦労しています」と返ってくる。その商品がエンドユーザー寄りの商品であっても同じ嘆きの声が返ってくる。
確かに、営業にとって価格は重要なファクターである。価格に関してイトーヨーカドーの創業者は「お客様が買いたい値段で提供することが商いの基本」だと言っている。この意味は、お客様の言いなりになって値段を安くしなさいと言っているわけではなく、「商品の価格はお客様が決めるもの」と言う意味である。だから「精一杯頑張っても必ず相見積もりで負ける」とか「高いから買ってくれない」と言う商品は、客筋や客層を間違えて売り込んでいる。売り方を変えれば買ってくれる客筋や客層は違ってくる。
①セットメーカーへの振り込みにしても、価格だけで決まる事は無い。電気機器機械を作るメーカーにはその売り先にお客様がいる。そのお客様の要望を満足するため、セットメーカーは価格、品質に気を遣い、納期に振り回されている。だからその電気機器機械に組み込まれる制御製品に対しても、価格の他に品質、納期がシビアになる。したがって、①セットメーカーの業態にある見込み客に対しては、価格は重要だが、品質と納期も工夫してアピールする売り方が良い。
この①セットメーカーへの売り方が、いつの間にかFA営業の標準になっている。まだ制御機器部品がほぼの製造現場で使われていなかった頃には、工場の設備のどの箇所にどの制御商品を使えば省力化になると言うアプリケーション販売が有力な売り方だった。現在もその名残りとして、FAメーカーが新商品を発売する際には、想定されるアプリケーションが示される。しかしそれは現状のメーカー目線で記載される例が多く、顧客には目新しさや参考になる例は少なく、そのため有効な売り込みツールにはなっていない これらは注力客や大口客の要請で作られた商品であり、②エンドユーザーの業態のニーズやシーズを発掘して作ってはいないから、もっと②エンドユーザの潜在的な事情を組み上げる営業活動に比重を移す必要がある。その活動の先には、FA販売店営業の新しい売り込み営業が見えてくるはずである。