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- 2012年7月11日
【FAトップインタビュー】三菱電機、満を持して市場投入の「リニアトラックシステム」シーケンサ、サーボと高い親和性で圧倒的な使いやすさ 導入ハードルの低さで普及を加速へ

ドライブシステム部ドライブシステム基本開発課主任 川瀬 達也氏
サーボモータ製造部サーボモータ応用技術第二課 中村 拓馬氏
コンベアに代わる新たな搬送システムとして「リニア搬送システム」が注目を集めるなか、三菱電機も強みであるサーボシステムの技術とノウハウをつぎ込んで「リニアトラックシステム」を開発し発売を開始した。
リニア搬送システムは、10年以上前から海外メーカーが製品化し、日本を含むグローバルに展開。現状、世界、日本市場ともに海外メーカーが先行している。
そうしたなか、三菱電機はメーカーとしては最後発で、よく言えば「満を持しての市場参入」となるが、リニアトラックシステムにどのような特長、メリットがあり、どのように他社と差別化して広めていこうとしているのか?三菱電機 ドライブシステム部 ドライブシステム基本開発課 主任 川瀬 達也 氏と、サーボモータ製造部 サーボモータ応用技術第二課 中村 拓馬 氏に聞いた
軸を増やすようにサーボと同じ感覚で使える
――リニアトラックシステムのユーザーからの評価はいかがですか?
特に高く評価いただいているのが、当社の汎用サーボアンプ「MELSERVO-J5シリーズ」と同じような感覚でプログラミングして使うことができ、導入ハードルが低い点です。
リニア搬送システムは海外メーカーが先行し、使ってみたい、興味があるというお客様は増えています。しかし実際にはなかなか広がっていないのが現実だと思います。その理由のひとつが、お客様がリニア搬送システムを使おうとすると、海外メーカーが提供する産業用PCと専用の開発環境でシステムを作る必要がある点です。お客様は今までとはシステム構成が変わり、且つまったく別の開発環境、ソフトウェアを1から学ばなければなりません。海外メーカーの場合、マニュアルは日本語化してあっても、開発環境は英語のままというものもよくあります。それにかかる手間とコスト、心理的なストレスが大きく、それがリニア搬送システム導入のハードルとなっていました。
それに対して当社のリニアトラックシステムは、PLCベースで制御を行うので、普段使っているシーケンサやエンジニアリングツールをそのまま使うことができ、言語も当然日本語です。
またシステム構成も、リニアトラックシステムの場合は、シーケンサのモーションユニットにリニアトラック制御用アドオンを追加し、そこにキャリアへの指令を作成する「リニアトラック制御ユニット」を接続し、その下にモジュールを連結したリニアトラックシステムを構築して接続しています。
これはシーケンサとサーボをつなぐ場合とまったく同じで、サーボの場合もシーケンサのモーションユニットとサーボアンプをつなぎ、その下にサーボモータを接続します。そのため、すでに当社のサーボモータを使っているお客様であれば、サーボモータの軸を1つ増やすような感覚でリニアトラックシステムを導入でき、他の軸との連携も容易に行えます。この「使い慣れた環境で、すぐに使える」という点が、特に既存ユーザーからとても喜ばれています。

組み付けも簡単にできるメカ設計 省配線と省エネも実現
――サーボと同じようにシステムが組めるというのは心理的不安がなくて良いですね
それ以外にも、ハードウェアとしても、誰でも正確で素早くモジュールを組み付けられるようメカ的な部分での使いやすさにも徹底的にこだわっています。
リニア搬送システムは組み付けにも正確性が要求され、これまでは専門のエンジニアでなければ精度良く組み立てるのが難しいという課題がありましたが、当社のリニアトラックシステムは、ボルト締結だけでレールの段差補正ができる「レールクランプ」や、隣接モジュールの位置決めができる「コネクションスタンド」といった独自機構により、お客様自身で簡単かつ高精度に組み付けられるよう設計してあります。
また配線についても省配線を実現しています。1モジュールに1つずつあるモータドライバへの電力供給は、制御盤内のシンプルコンバータ(主回路用電源)から1本の主回路電源ケーブルをわたり配線でつなぐことでモータドライバ最大4台までの電力供給に対応しています。16台のモジュールで構成したシステムの場合、4本の電源ケーブルで済みます。省配線にともなって制御盤内の電磁接触器と配線用遮断器の数も減らすことができ、制御盤内の機器点数が少なくなり、制御盤の小型化にもつながります。
また、わたり配線でつなぐことでモータドライバ間の電力のやりとりができるようになり、キャリアが減速して発生したエネルギーを回生して他の場所での加速に活用でき、エネルギー消費を減らして省エネ性能も向上しています。

キャリアの高剛性化で重量物搬送や加工にも対応 長寿命化も
――性能面での特長はいかがでしょう
リニアトラックシステムは、最大推力140N、可搬質量3kgのキャリア幅48mmと、最大推力300N、可搬質量10kgのキャリア幅98mmの2タイプのキャリアをラインナップしており、重量物の高速・高精度な搬送やキャリア上への機構搭載が可能となっています。ガイドレールと接するキャリアのホイールには高剛性な金属製を採用しているため、キャリアの上で部品の押し付けや加工作業を行うこともできます。これは磁力だけで浮上している非接触タイプや樹脂製ローラーを採用している他社製品にはない大きなメリットです。金属製なので樹脂製に比べて長寿命なのも特長です。
また、搬送時の振動を抑える「緩和曲線レール」や、サーボで培った「制振制御技術」を応用することで、液体などを揺らさずに高速で搬送することもできます。こうしたきめ細かな制御技術も、当社の強みだと考えています。
サーボと組み合わせて新たな付加価値のある装置や設備の開発を
――どのような業界や用途をターゲットとしていますか
やはり一番力を入れて提案していくところというと、今まさに当社のサーボを使っていただいているお客様になります。サーボモータを使っていて、開発環境も変わらない。今のままの慣れた環境で、サーボモータだけでなく、さらにリニアトラックシステムも使えますよといった形で提案をし、色々なところで使ってもらえればと思っています。電気・電子部品の組み立て、食品や薬品のパッケージング、二次電池の製造ラインなど、高速かつ高精度な搬送が求められるあらゆる業界がメインターゲットとなります。特に品種切り替えが多い生産ラインやタクトタイムの短縮が至上命題となっているお客様には、大きなメリットを提供できると思っています。
また、これまで他社製サーボを使っていたお客様から、サーボとリニア搬送システムを組み合わせたシステムを作りたいということで、このリニアトラックシステムをきっかけに当社のサーボシステムを検討してくれるといったお客様も増えています。リニアトラックシステムが「ドアオープナー」的な役割を果たすケースが出てきています。こうした点でも当社にとってリニアトラックシステムは新しい可能性を切り拓く製品だと感じています。
――今後について
リニア搬送システムは、注目度は高い一方、まだ完成品ではなく、コモディティ化もしていません。当社もはじめは国内市場でのリニア搬送システムの設置や導入への最初のハードルを下げるという形で開発しましたが、お客様からはすでに多くの要望をいただいており、そこに向けてアップデートしてより良い製品へと仕上げていきたいと思っています。
それでも使いやすさや導入のしやすさの高さから国内での実績も増えてきており、安心して使ってもらえる製品となっています。リニア搬送システムを使ってみたいと思っていたけれど、なかなか手が出せなかったという人にこそトライしていただきたい。当社の代理店でも、製品説明会をした時に高評価をいただき、取り組んでいる代理店が増えています。導入サポートを手厚くできる体制も整ってきているので、ぜひチャレンジして欲しいと思っています。
https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/topics/2025/05_linear/index.html
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