【FAトップインタビュー】エニイワイヤ 省配線を現場の人手不足解消のきっかけに 省配線&診える化システム「AnyWireASLINK」代表取締役社長 伊丹 伸司 氏

いくつもの要素が複雑に絡み合う製造業の人手不足問題。それを一発で解消できる術などあるはずもなく、経営、現場の両方から一つずつ問題を潰していくしかない。機械や装置組み立ての際、最も時間がかかる作業は配線作業と言われ、人手不足を解消するには装置内配線の見直しは必須とされる。

エニイワイヤは、独自の省配線システム「AnyWireASLINK」を使った配線作業の効率化と人手不足対策の提案を強化しており、代表取締役社長の伊丹 伸司 氏に同社の取り組みについて話を聞いた。

在庫調整で厳しかった2024年度

――2024年度の振り返りをお願いします

一年を通じて流通在庫の削減に取り組んだ非常に厳しい一年でした。特に半導体業界のうち、生成AI関連は活況でしたが、それ以外の分野の回復が想定よりも遅れたという印象です。当社に限らず、多くのメーカーに共通する感覚ではないでしょうか。我々のお客様にも、半導体関連の設備投資が停滞し、業績回復が遅れているところもあります。FA業界全体を見ても、受注残からの供給回復で在庫が積み上がり、その調整が長引き、苦戦を強いられました。

受注自体は昨年よりは上向いており、今期は前期ほど悲観的には見ていません。ただ、全面的に市場が回復しているというよりは、生成AI関連の半導体や一部の業界が突出して伸びているという限定的な盛り上がりだと感じています。一時期の勢いがあったEVバッテリー関連も少し落ち着き、まだら模様の回復といったところと見ています。

省配線システムの価値を再定義し、現代の課題に応える

――御社の強みである「省配線システム」はいかがでしたか?

当社の「AnyWireASLINK(エニイワイヤアズリンク)」は、従来の省配線システムの優位性や特徴を継承しながら、さらなる小型化と設置の柔軟性、センサケーブルの断線検知、ON/OFFだけでなく実測値が見えるセンシング、上位からの一括設定なども備え、省配線とセンサの診える化を両立する画期的なシステムとなっています。

2024年度は、FA市場全体の厳しさの影響は受けましたが、それでも自動車の組み立て工程におけるポカよけ(ヒューマンエラー防止)関連の製品が堅調に推移しました。このポカよけシステムも省配線システムの技術をもとに作られており、設置自由度や配線作業のしやすさ、変更や改造への柔軟性などが特徴となっています。

一般的に省配線システムというと、単に「配線を減らす製品」として捉えられ、省工数や省資源、省スペースになるものと見られがちですが、当社ではもう一歩踏み込んだ提案をしています。省配線システムの本質的な価値は、お客様の抱える課題を解決することにあり、いまお客様のなかで最大の課題となるのが「人手不足」です。前期に堅調だったのも、省配線システムによってお客様の人手不足対策をサポートするという当社の提案が的確に伝わった結果だと考えています。

――省配線システムはどう人手不足対策になるのでしょう

省配線システムを使うことにより、当然のことながら配線が減り、現場での配線作業工数を劇的に削減できます。これは直接的な人手不足対策、省配線システムの効果です。

それに加え、当社の省配線システムを使うと自由な分岐配線ができ、設計の柔軟性が高まり、工数も大幅に削減できます。装置の改造や増設が容易になり、設計者の負担が軽減し、開発リードタイムの短縮にも繋がります。

また装置の運用や保全・メンテナンスについても、センサケーブルの断線検知機能によって装置停止の際の原因究明に費やす時間を大幅に削減したり、センシングレベルの監視機能で光軸ズレや汚れなどによるセンシングレベルの低下を監視し、センサがONしなくなる前に調整や清掃などの予防的措置をとることができます。

最近は、経験の浅い方や海外からの労働者の方が現場を支えるケースも増え、熟練のエンジニアおよび作業者が不足しています、お客様からはそうした方々でも簡単かつ確実に作業ができるような仕組みづくりが求められており、省配線システムはそれに効果的な製品となっています。現場の負担を減らし、誰もが質の高い作業をできるようにすることで、お客様の経営課題の解決に貢献できると考えています。

新たな市場の開拓へ オンリーワンメーカーとしての挑戦

――今後の事業展開について

省配線システムの国内唯一の専業メーカーとして、その知見を深化させ、お客様の課題解決に貢献していきます。その上で、二つの方向性で挑戦を続けていきたいと考えています。

一つは、FAで培ったノウハウを、FA以外の新しい市場への展開です。例えばデータセンターは有望な市場だと考えています。データセンターではサーバーラックの増設や変更が頻繁に行われますが、当社の省配線システムを使えば、そうした工事を簡単かつ迅速に行えます。今後はデータセンターの構築・運用を行うシステムインテグレータへのアプローチを強化していきます。

もう一つは、様々な企業との協業を模索していくことです。振動試験装置メーカーのIMVと協業し、FA向けに振動センサによる予知保全ソリューションを開発しました。こうしたオープンな連携を通じて、我々の技術が活かせる新たな可能性を切り拓いていきたいと考えています。

――2025年度の見通しについて

2025年は、FA業界が本格的な回復軌道に乗るための重要な助走期間になると見ています。この期間に改めて自社の強みを見つめ直し、お客様にその価値をしっかりと伝えていく活動を強化していきます。

そこに向けて当社を取り巻く環境の変化と創業当初の志をもとに、企業理念を見直し、経営理念を新たに制定しました。

企業理念は「独自の技術とサービスをもとに、自由な発想で創造力向上を図り、風通しの良い職場を通じて社会に貢献する。」とし、経営理念は「当社は、従業員と会社の成長を通じて、お客様に魅力あふれる製品・サービスを提供し、ゆたかな社会を実現する。」としました、この理念の浸透を図り、従業員一人ひとりのエンゲージメントを高めることが重要だと考えています。会社の成長は従業員の成長と共にあります。魅力ある会社を作り、従業員全員でお客様の課題に向き合う。その先に、社会貢献という当社の目標があります。

また当社の製品を知らないお客様は、まだたくさん存在します。「もっと早く知りたかった」というお声もいただきます。チラシやWEB、SNSなども活用しながら、当社の省配線システムがお客様のビジネス、ひいては社会全体に貢献できるということを、一人でも多くの方に知っていただいたい。その地道な活動を粘り強く続けていきます。FAの枠を超え、あらゆる「ものづくり」と「社会インフラ」を支える存在として、これからも挑戦していきます。

https://www.anywire.jp

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