令和の販売員心得 黒川想介 (111)電気技術色濃い現在の現場 増える省力化レベルの需要

唐突であったがFAの販売員に「自動化と省力化の違いは何だろうか」と質問してみた。「人の作業の介在なしに作動するのが自動化であるし、省力化も人を省くのではあるから言葉は違っても同じ意味で使われると思う」という回答であった。間違っているわけではないが厳密に言えば少し違う。自動化とは回答通りであるが省力化は人を省いてしまうのではなく、人の力を省くと訳すれば人の作業を効率化すると解釈できる。仮に一分間で5ヶを組み立てる作業があるとして、作業者が手を速くして6ヶ組み立てることではない。一分間に6ヶ組み立てる工夫をすることである。それには組立作業の時に作業者が組み立て易くする治具や簡易設備を考えたり、あるいは作業のミスを無くして歩留りをよくするために作業確認のデジタル化を計って作業効率を上げるようなことである。人の作業効率によって結果的にはトータルの人数を減らすことができる。つまり人を機械に置きかえてしまうと事と人が治具や簡易装置を使う事やデジタル化によって、作業効率を上げる事との違いである。

結果的には人が減るのは同じということになる。FA販売員は自動化、省力化を主なマーケットにしているがその需要と向き合う時に機械設備をどのように制御しているのか、機械設備のどの部分に制御の機器や部品が使われるのかというように機械設備ありきから入る。つまりFA需要は機械設備の自動制御から派生するものと思って営業活動をしているのがFA販売員である。製造現場でオートメーションがスタートした頃の自動制御は現在のFA販売員が思っている自動化の感覚ではなく、省力化の感覚であった。

当時の製造現場は人が機械を操作して製造をしていた。

FA販売員はその現場に自動機を売りに行くわけではない。制御機器部品を売りに行くのだ。だからまず機械の動きやそれを操作したり、動き回っている人の動作を観察して疑問点、興味がある点の質問から会話が始まる。生産コストや効率に触れると製造現場の管理者は「それをどうやってやればいいか」などど販売員に向けて軽い質問をしてくる。現在の販売員だったら、それができる商品を探そうとするだろう。

しかし当時は技術的にわからなくても身振り手振りでここで止める治具のような物があればいいのでは等と応酬した。FA草創期には工場に機械類を設計する機械課があったので管理者が納得すると自前で独自の設備を製作した。機械メーカーが作るような自動機は作れなかったが作業効率を上げるための補助設備は作った。このような設備にFA機器部品が使われたからFA販売員の省力化需要開拓は重要な活動だった。生産ラインが自動機で構成されるようになると機械課と電気課は統合されて生産技術課が作られた。

したがって当初の生産技術は機械技術の色も濃く残っていたが現在の製造現場には高度で複雑な電気制御を搭載した自動機がズラリと並んでいる。これらの自動機の停止個所や手直しする個所は電気制御に関することが多い。それに生産技術の主なる業務が自動機や自動ラインの改造、改善やリニューアルであって、制御機器やシステムの変更が多い。したがって現状の生産技術は電気技術色が濃くなっている。今後一段と生産効率が求められ、IT技術が徐々に入り込みIOT絡みの案件はふえるだろうが中小工場の製造現場にはまだまだ人の作業個所は残っている。人が作業する個所を一気に自動機械やロボットにする需要だけでなく、省力化レベルの需要の方がむしろ多いくらいなのだ。

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