富士経済、EMS(エネルギーマネジメントシステム)関連の国内市場調査 脱炭素経営の浸透で成長市場に 市場規模は2035年度には今から2倍超の2兆6887億円に

富士経済は、製造業を中心とした脱炭素対策の推進や、DX化に伴う需要急増に対応する半導体関連工場の新設・増強によって市場拡大が期待されるEMS(エネルギーマネジメントシステム)の関連市場を調査し、EMS・関連システム、サービス、ハードウェア市場は2035年度には2023年度比2.1倍の2兆6887億円に達すると予測している。

EMS関連の国内市場は、脱炭素やDXのメガトレンドの中、製造業を中心に脱炭素対策への注力度が高まっている。サプライチェーンにおけるCO2の総排出量(SCOPE3)把握ニーズが高まったことで、エネルギーの見える化を実施する企業が大企業だけでなくサプライチェーンに関わる中小規模の企業へと広がっている。
また、再エネの自家消費に関連した太陽光発電システム関連設備や蓄電システムのニーズも高く、DX化関連では、半導体関連製造拠点やデータセンターの新設・増設が活発であり、それに伴う設備投資の影響で主に関連ハードウェア市場に好影響をもたらしている。
今後には見える化を経てエネルギー削減のフェーズへ移行し、運用改善や省エネ、再エネ利用に関するシステムやサービスの市場が拡大。人手不足で設備管理の省力化ニーズも年々高まっており、自動化や省力化関連の市場も伸びていくと予測し、2035年度には2兆6887億円に達すると予測している。

クラウド化で普及加速が見込まれるBEMS

BEMS(Building EMS)のうち、BASは主に延床面積が数万平方メートル規模以上の大規模施設でビル管理ツールとして利用され、サブシステムとしてBEMSの機能を持つ。
首都圏を中心とした再開発プロジェクトで需要は堅調であり、2023年度は前年度までの受注残への対応が進んでいるが、システムベンダーの人手不足により、引き合いに対応仕切れないケースもみられる。今後は更新案件も増え、2020年代後半まで需要は旺盛。将来的には人口減やオフィス需要の減少により採用が減る懸念があるが、人手不足による建物管理の省力化ニーズが高まり、多拠点統合管理用途や導入コストに対する抵抗感が大きい中小規模施設で、クラウドベースのシステムが普及し市場をけん引していくと予想される。
エネルギー監視特化型システムは、近年は小売電気事業者における付加サービスとしての設置増加が市場をけん引してきたが、2023年度は燃料価格高騰にともない小売電気事業者の展開は消極的。その一方で製造業での省エネ・脱炭素の取り組みとして、電気料金高騰に伴うエネルギーコスト削減対策や、二酸化炭素排出量把握に向けたエネルギー使用状況の可視化に取り組むケースがみられ、市場は微増。世界的な脱炭素化の加速により、中小規模事業者における省エネニーズの高まりが期待される。
特定の地域・街区における住宅や業務・産業施設のエネルギー使用状況などを統合的に管理するためのシステムのCEMS(Community EMS)は、近年はエリア全体の脱炭素化やエネルギー需給最適化の実現と、地域の高付加価値化で注目度が高まっている。エリア再開発や、製造業をはじめとした事業者による遊休地を活用案件、環境省の「脱炭素先行地域」事業に関連した地域エネルギーマネジメントなどが増えている。
家庭内のエネルギーの見える化や設備機器の制御などを行うためのシステムのHEMS(Home EMS)は、太陽光発電システムの発電量や蓄電システムの蓄電容量の見える化などを目的に導入され、新築戸建住宅のZEH比率の上昇により市場が拡大している。一方で、住宅価格高騰によりHEMSが導入されにくいことや、低価格なHEMSの普及により市場は2030年度以降マイナスに転じると予想される。

可視化を支える「見える化ツール」

また、主に業務・産業施設で採用されるエネルギーの使用状況を可視化するための電力計測機器やデータ収集機器を対象とする見える化ツールは、大規模事業所のエネルギー管理システムの構築用途で採用されてきたが、近年はカーボンニュートラルへの取り組みの一環で、サプライチェーンにおける環境負荷の把握の必要性が高まり、大手企業と取引する中小規模の事業者でも製造時のエネルギー利用状況の把握が求められ、見える化ツールの導入が増加している。
今後、脱炭素経営の定着により、現状はエネルギー見える化を実施していない中小規模の事業者まで採用が広がっていくと予想される。また労働力不足に伴ってエネルギー管理や設備管理の省力化システムのニーズが高まり、市場を後押しすることも期待される。

同調査ではEMSとその関連システム8市場(EMS5市場、関連システム3市場)、関連サービス4市場、関連ハードウェア16市場の最新動向をまとめ、将来を展望している。

https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=24014

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